第4話
遠くで角笛が唸りを上げている。ここだ。ここから戦闘が始まる。誰も彼らの思考をわからない。理解しようともしない為である。
「驕りか」
「火種だ」
世界は混沌の渦の中だ。彼等が何を行うべきか。それは明白であった。
「世界の全ての文化をここに記そう」
そう言って仰々しい装丁の馬鹿馬鹿しいほどに重そうな書物に圧電式万年筆を走らせた。
「我等がやらねば」
「命に代えてでも」
圧電式万年筆は人の口から出た呪いをエネルギーとする。呪いを唱えるには膨大な時間が必要だった。この世から消えた文化や技術は、他の惑星には存在し得ない波動と影響力を持ち合わせていた。ここに、全てを記す。彼等の生命エネルギーを伴って、書物は情報網、“アミガサタケ”の流通ラインに通された。書物は彼等の脳内とリンクしており、リアルタイムカーネルを使用して常に更新が可能だった。程遠い旅路、空間や次元をも超越するこの書物を扱い切れれば、万人に不足無い未来が約束されるだろう。そうだ、ここからだ。
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