ぎっこん、ばっこん

@tumarun

第1話 ぎっこん、ばっこん

僕に妹ができた。

お母さんは、いつも産まれたばかりの妹にかかりきり、つまんないや。 

妹の顔はベッドに横になっているのを見るくらい。

でもね、円らな瞳でじっと見つめてくるんだよ。引き込まれそうになってしまう。

そうすると、ニコって笑ってくるんだ。僕も笑ってた。

ぷにぷにな、ほっぺが気になって人差し指を伸ばして触ろうとしたら、

小さい5本の指で握ってきだんだよ。

そして、また笑ってくるんだ。僕も笑い返してあげる。可愛い、可愛いいな。

これが妹。見るだけじゃない。妹を感じることができた。

そのうちに、首もすわったから抱いて遊んでやってと言われた。

どうすりゃ良いんだ。 

こうしてやって

僕は、座って妹を抱き寄せる。

柔らっけえ。グニャグニャ。

抱いたまま、前後に動かしてあげる。


ぎっこんばっこん

やまがのじいさんきをきるおとは

ずいっこちよーん ずいっこちょーん ずいっこちょーん


途中から妹がキャッキャッと笑いだす。僕も笑ってる。

最後に抱き寄せたら、僕の胸の前で動いてもがいて、それがこそばゆいんだよ。


もう一度、今度は膝の間に妹を下ろし、そして抱き上げる。


ぎっこんばっこん

やまがのじさんきをきるおとは

ずいっこちよーん ずいっこちょーん ずいっこちょーん


最後に膝の間に寝かしてあげる。

妹は、よほど嬉しいのか、小さい両手、両足をバタバタさせて喜んでいる。

無防備にお腹をさらし、無邪気に動いている妹。

僕は思わず、妹を抱き上げる。愛し過ぎるんだよ。

立ち上がる甘いミルクの香り、耳をくすぐる笑い声。微かに感じる胸の鼓動。


これが妹。

全身で感じた。

僕がお兄ちゃんなんだよー

僕はお兄ちゃんなんだってことを自覚した。

妹は、まだ笑っている。

わかったかなあ。




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