9.【黒き呪血のクレイモア】 MS3さん
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892320803
あらすじ(作品ページより引用)
剣を振れば並ぶ者なし。宿りし血は黒く毒となり、その身は半不死であった。かつて人間であり騎士であった男は救いを求め、魂を喰らう白霧の森へと足を運ぶ。自分という化け物を、殺すために。
だがそこでおぞましい怪物に遭遇し、死を受け入れようとしていたところ――――どこからともなく現れた白肌の魔女に男は助けられる。
数千年以上も前に存在を消された魔女、そして男は魔女狩りの末裔。だがリーシュと名乗る天才魔女は、男にスクートという名前を与え、己の従者とした。
黒と白、騎士と魔女。堅物と自由奔放、半不死と薄命。どのような運命のいたずらか、出自も性格も――――何もかもが真逆のふたりは、互いに救いを求めあう。
これは化け物としてではなく、人間として生きるため「救い」を追い求める物語である。
☆☆☆
第九弾です。
MS3さん、ご参加ありがとうございます。
がっつりネタバレ含みますのでご注意ください。
帰って来たぜ!重い系!!という感じで、割とどっしりがっしりした話のご参加が多いようです。
色んな感性があるんだなと思いながら読んでおります。
今回は32話までの感想です。
“読みやすさと重さの配分をかなり練って書いています、よろしければご賞味ください。”(コメントより)
ということです。
ご賞味なんだなーと思いながら読み始めたんですが、コメントへの返信にも『ご賞味』と使われていたので、この表現がお好きなんですね。
全くもって深い意味はないです 笑
内容に入ります。
“練って書いてます”とあるように、すごく丁寧な文章です。
難しい言葉を使わずに、重さが出ているというのが一点。
もう一点が、『静と動で重さが変わらない』という印象です。
この表現が珍しいです。
重い……というか個人的には『粘い』って言う方が好きなんで粘いを使いますが、粘っこい書き方の話ってたくさん見かけます。
特に書き出し。
見掛けるんですが、この粘り気って、静止画の描写には使われるんだけど、動き出すと軽くなるというケースが多いです。
特に戦闘シーンとかアクション的な要素になるとどうしてもテンポを作るためでしょうが、表現が軽くなります。
当たり前の話で、粘いと動きにくいですよね。
動こうと思ったら、軽くないと動けません。だから動き出すと軽くなります。
この濃淡が魅力だよっていう仕組みというか見込みはあるんでしょうが、私は結構ここで詰まるんですね。
激しく動いた後って、必ず休みますよね。
つまり、動の後に静が来るんです。
そうすると、粘い所から始まって、少しずつ軽くなったなーと思うと、またぐっと重くなる。
ブレーキがかかるというか、同じタイミングで、私もぐって詰まるんです。
どういう感じかなと思ったら、冷蔵庫から納豆を取り出して欲しいんです。
で、かき混ぜ始めて下さい。
最初、箸が上手く動かないですね。
そこからよいしょってぐりぐり回し出すと、段々箸がスムーズになる。
それで、『さ、柔らかくなったし食べましょう』です。
これが『さ、食べ』で、急に最初の重さになったらどうなるか?なんです。
びっくりしません?笑
思わず箸を止めて、何が起こってるか確認します。
こういう感じです。
一山終わりました。
リスタートです。また粘り気が強くなります。
これは実生活でもよくありますよね。
今度はバター出しましょう。
バターを混ぜます。
最初固いんだけど、段々、柔らかくなります。
ここで、混ぜるの止めてもう一度冷蔵庫に戻します。
冷ましたら、また、硬いところから始まります。
ただし、この場合でも中に空気が入ってますから、最初程は硬くなりません。
なので、話の粘度が変わる、もしくは変えるってグラデーションの方がいいと思うんです。急に変わるところは、話の流れが変わった場所から、その方が読みやすいですね。
話が逸れました。
今作では、その粘度の変化がほとんど感じられないんです。
ずーっと一定です。
一定かどうか、数値的な測り方は知らないので客観的な説明は出来ませんが、体感として、粘度が変わらないと思いながら読みました。
たぶん、漢字とひらがなの比率とか、一文の文字数の平均とか、ナ行やマ行の使用率とか、そういうのを分析すると変化が出てくるんじゃないかと思います。
粘度が変わらない、これどういうことかな?と言うと、つまり、最初からある程度の柔らかさを持たせているんです。
タイトルとかあらすじとか、書き出しとかで、粘そうな雰囲気に見せておきながら、意外と中身は最初から軽めに作られてます。
極端な話をすると、氷柱の中からスタートすると、動けるように氷を解かすと水になります。
個体から液体ですから、相当に変わります。
動いてると熱が出るので、人によってはお湯まで行ったりするんですよね。
それが急に氷に戻る。
何があった?っていうぐらい急に冷静になるんです。
そんな話はいいとして、氷からスタートすると動けないな……だからちゃんとスライムから始めとこうっていうのが今作だと思います。
粘度はあるけど、自由に動ける硬さっていうのを最初から捕まえてます。
まあ色々書きましたが、これがそもそも書かれてる『読みやすさと重さの配分』っていう表現に凝縮されてるんでしょうね。
凄い技量だと思うんですが、同時に、やっぱりこの粘度の濃淡って言うのは、話の盛り上がりとか引き込みとかに大きな影響も与えてるんでしょうね。
ドラゴンと戦うシーンがあって――レビューにここは読んだ方がいいって書かれてました――、ドラゴンの表現が秀逸で、伏線と言うか、なんやかんや、ほう!!みたいな導線があって、こうぐーーっと盛り上がるかな!?と思ったんですが、個人的にはあっさりだったなと思いました。
滑走路に乗って、飛び立つかな!!と思ったら、少し浮いてまた着地したみたいな感じでした。
回想?ですし、本題はその後のことなんで、ストーリー的な盛り上がりとはまた違うというのもあるとは思いますが。
ただ、これは粘度が変わらないために、来るか!?って思った抵抗力が無かったのも一因だと考えてます。
この辺りの先読みと言うか期待感は個人的な読書経験による部分も大きいでしょう。
さて、『読みやすさと重さの配分』にこだわって書かれた今作。
咀嚼するも良し、舌の上で転がすも良し、思い切って丸のみしてみるのも良し、と入口の重厚さによらず、楽しみ方に自由度がある作品だと思います。
ぜひ一度、ご一読を。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892320803
改めまして、MS3さん、ありがとうございました。
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