10.【女神の殻と人形の王】沖ノキリさん

https://kakuyomu.jp/works/16817330659742951048


あらすじ(作品ページより引用)

人ならぬ力を持たされた少年は世界を恨んでいた。

ただひとり寄り添ってくれた、人ならぬ人は壊された。

彼は虚しい復讐の果てに、懐かしい声を聞く。


――戦いの果てに、やっと見つけた幸せに酔いしれるユストゥス。だが竜とともに現れた最愛の恋人は、やはり普通ではなく前途多難な恋となる。

彼の一途な愛はやがて、この壊れかけた世界の天秤を傾けるのだった。



☆☆☆



遂に第10弾です。

結構すごくないですか?笑

沖ノキリさん、ご参加ありがとうございます。

がっつりネタバレ含みますのでご注意ください。




今回は31話、第一章まで読みました。

序章で未来の話をして、第一章から過去の話で繋いでいくというスタイルです。


先ずは書き出しです。

序章から第一章の頭ぐらいまでそうだったんですが、『何かわかりにくいな』と思って読んでました。

別に文法がおかしいというような話ではなく、何を伝えたいのか、よく掴みきれないという感じでした。


これが一章の途中からスルッと読めるようになります。


この違いが何かというのを少し。

何を書こうとしてるか、でしょうね。

序章から第一章の頭の方は、ストーリー(物語)ではなくて、この物語の基本になる『概念』を伝えようとしてるんですね、多分。


テーマとか雰囲気とかです。


なので、表現が詩に近いような箇所や昔話のナレーション風な箇所があったりしていて、その分、伝わりにくい、というか、何がしたいのか分からん、となりました。


また造語というか用語も同時に出てきます。

世界観の設定と、その説明を持って来たいということなんでしょうが、ちょっとごちゃついているなとも思いました。


緊張感のある戦闘シーンで用語の説明が入るとやはり、視線がぶれます。

この辺りも整頓されると読み解きやすさ、読み進めやすさ、そう言うと俗っぽいですか?没入感にしましょうか。

没入感が得られるのではないでしょうか?


これが一章の途中から物語へと軌道が乗ります。

キャラクターが動いて、パタパタと事件を解決してという展開です。

だから、読みやすくなります。


さて、どうでしょうか?

書き方としてはすごくよく分かるんです。

初めに世界観とかテーマを持って来て、雰囲気を作りたい。

分かるんですが、読む側からすると『読みにくさ』というのがついて回るでしょう。


なぜかというと、読み手は、書き手の心境を知らないからです。

どういう人が、どういう意図で書いてるのか?というのを知らない状態で、入り口が概念だと、まず形が掴めません。


この感想を書きながら、書き出しって、『物語の輪郭を掴む場所なんだな』と感じました。


『書きたいこと』と『伝えたいこと』と『読み解けること』と、この3つのバランスが書き出しでは大事だな、と思います。

特にストーリー性のある話だとなおさらでしょうね。


さて、一章が少し進むと、スルスルと物語が進んで楽しいです。

『銀河英雄伝説』を思い出しました。

冷遇された王族の天才児が、才覚振り回してドゴーンと王へと成り上がるという展開です。もっと繊細ですよ。

楽しいです。


なのでなおさら、入り口の分かりにくさが解決すると、もっと先まで読みやすくなるんじゃないかな?と思います。


後、少し気になるのが場面の転換のシーンですね。

ところどころ、場所と時間がポンと飛んで、話が始まって、後からここはいつのどこですよって説明が入ります。

これも書き方としては分かるんです。

バツっと場面転換して、目を惹く。

ただ、やはり読む側としては迷子になりやすい表現だと思います。

場面というか、このエピソードはインパクトを強くしたい、っていうその箇所に適応して、話の流れで成立する場面にはこの技法ではなくてもいいのではと思います。

多用することで、作品の雰囲気を作るという側面もあるかもしれないですが。


次に登場キャラクターです。

主人公は最初の行動原理が『復讐』なのでどうしても話が重いというか、暗いというか、陰鬱というか、非生産的というか、な雰囲気になるんですが、それを上手く躱してるのが、主人公の側近になるエルマーというキャラです。

このエルマーがとてもいい役割を果たしてます。

いじられキャラですが、卑屈でもなく、愚鈍でもなく。

優秀なんだけど、ただ性格的にいじられているし、本人もそこに上手く迎合していています。

彼がいることで重くならずに、話が軽やかに進んでいます。

ギャグとかコメディーのキャラではなく、主人公の心を軽くしているキャラクターです。このキャラクター設定の塩梅がすごく上手いなと思いました。


いわゆる道化回しの役です。

権力者の側について、おどけることで、権力者が視野狭窄に陥らないようにする。

有名な役どころですけど、投稿サイトの作品できちんと書いてるケースは初めて見た気がします。

大体、ギャグキャラとか天然キャラになってるように思います。

彼の過去がどのようにストーリーに絡むのか、――或いは絡まないのかもしれませんが――、それも気になるところです。



さて、今作、【女神の殻と人形の王】。

読み進めてから見るとタイトルに雰囲気ありますね。

この辺りもどのうように回収、ないし説明、ないし納得させていくのかも楽しみではないでしょうか?

ぜひ一度ご一読を。

https://kakuyomu.jp/works/16817330659742951048


改めまして、沖ノキリさん、ありがとうございました。


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