第6話:売り言葉に買い言葉(+大切なお知らせ)

従業員の入るスピードより、辞めていく従業員のほうが多く、体調を崩して辞めていく従業員のほうが多いときたもんだ。


新しく受けてくる仕事と、辞めた人の分の仕事を今いる従業員で回す必要があり、タスクのみがドンドン積みあがる。

定時て上がれる従業員は社長ぐらいで、それ以外は終電ギリギリまで日々働いている。

100時間の残業を超えそうになると、勤怠システムがエラーを起こして入力不可のようになる。

何度言っても直そうとしないので意図的だろう。


周りの従業員も目が死んだ魚のようでただ手を動かしている生きる屍のようになってしまっている。

次第に作業量が落ちてのデフレスパイラルが起きてしまっている。


新しく受ける仕事量を減らして今ある仕事を片付けないと、近い将来破綻する…。


「はっはっは、やればできるじゃないか君。君の部下みんな血色いいし、まだまだ仕事振れそうだねー!よきよき」

バーコード頭にブルドッグのようなほほ、腹にはたっぷりのぜい肉を付けた。

社長のモブ山モブ男がいやらしい笑みを浮かべて、ノッシノッシと俺の席に近づいてくる。

俺の名前はだ。

「お言葉ですが、これ以上タスクを積まれても消化できません。新しい仕事を受けるのではなく今の仕事をまず片付けましょうよ!」

「はっ、なんだその物言いは、私のやり方が間違っているというのか?」

耳をほじり、見下すような視線をこちらに向ける。

「周りに目を向けてください。新たに参画してくれる従業員より、離脱者のほうが多い現状を、このままだと業務が回りません。」

「はんっ!みなし残業を払っているんだから、その分は働くのが筋ってものだろう。」

「残業時間が100時間を超えようものならば記録に残せないようになっているので、実態はそれよりひどいはずですよね?」

「なんだと…うちが残業代を支払わないブラックな会社だと言いたいのか!!いいか技術力を売りにできないIT土方の当社が提供できるのは何か。それは労働時間なんだよ!あと新しい仕事をストップと言ったな。止めてみろ…この会社は倒産してしまうんだぞ!」

顔を真っ赤に青筋を浮かべるモブは唾を飛ばしながら怒鳴り散らかす。


「それは安請負したからで、適正な料金で仕事を受ければこうはなら…」

「うるさい!口を開けば不満ばかり、嫌ならこの会社を辞めればいいだろ!お前一人がいなくなったって変わりはいくらでもいるんだからな!」

「あぁ…わかったよ!こんな会社辞めてやる!」

売り言葉に買い言葉、配信者として活動できていることで心に余裕もできて、カッとなってつい言ってしまった。

「言質を取ったぞ…自己都合による退職だ!泣きついたからって知らんからな。あー後はおいっ、お前こいつの仕事はお前がやれ!」「え、えぇ…お、俺ですか?」

「お前以外誰がいる!お前も辞めるか?あぁ?」

「…」

ノッシノッシ鼻息荒く去っていく社長。



「いやーカズパイセン。いつかは辞めると思ってましたが、シャチョーに啖呵切って辞めるって…ウケる」

「高尾か。いやー売り言葉に買い言葉、血が上ってしまった。そして別にウケはしないだろ」

同僚の高尾はじめ。俺の部下であり口調はあれだが、仕事は丁寧で俺の右腕にはもったいない存在だ。

「パイセンのチャンネル先日50万人突破しましたし、スパチャも結構飛んでたのでサラリーマンよりガッポガッポでしょ」

「…まあ否定はしないな」

ありがたいことに、初配信後に時間を作って行ったゲリラ雑談配信でも、初配信並みのスパチャをもらうことができた。

「でもパイセン仕事辞めるなら、この会社もヤバいっすね。自分も次を探そうかな?」

「ん?そうか?高尾なら十分にやっていけるだろ?」

「何言ってんすか。パイセンは自分を低く見積もりすぎっす。パイセンが受け持ったプロジェクトに参画したメンバは残業はあるけど土日休み、誰一人潰れずやってこれてたじゃないっすか。その分パイセンが激務なので手を挙げて喜べる状況ではなかったっすけど」「まあ、それは高尾も休みの日手伝ってくれたから成り立ってただけで、俺一人だったらこうはいかなかった。ありがとう」

「あはは、感謝するっすよ。じゃあついでにですが次の就職先でも斡旋してもらいましょうかね」

「斡旋ってMouTuberになる予定の俺には人脈なんてないぞ」

「あー…パイセンの元に永久就職でもいいんっすよ?」

上目遣いで俺のことを見る高尾。

「ふー、冗談は顔と言葉だけにしろ。で、どうしてほしいんだ?」

「パイセンのイケズー、1割ぐらい本気だったんっすけどね。まあいいです。パイセンは生配信がメインだと思うんですけど、その後の動画はしっかり編集して投稿したほうがウケがいいと思うんですよね。こう見えて映像学科でてるんで動画編集はバリバリできちゃうんで良かったらその方面で雇ってくれないかなーっと、ダンジョンに一緒に入るのは厳しいのでできるのはそれぐらいっすけど…どうっすかね?」

「なるほど…」

切り抜き配信などもあるが、せっかくなのでメインチャンネルにもしっかりとした動画を配信したいとは思っていた。

今は生配信をそのまま配信しているが、どうしても見せ場以外の尺もあって、修正したいが時間はないし外注も確認が面倒で出来てなかった。

高尾がやってくれるというのであれば、知った存在だし仕事ができるのは折り紙付きとてもありがたい申し出だ。

「わかった。給料は今の給料+1分単位の残業代でスタート、完全週休2日制でチャンネルの成長に合わせて昇給っていう条件でどうだ?まあ土日休みは保証できないがな。」

「いいっすね!特に残業代が1分単位ってのが、細かい条件は会社辞めてからお願いするっす!」

高尾は自分の机の引き出しから封筒を取り出し席を立つと走り出した。

「あっ、シャチョー!自分も会社辞めるっす。これ退職願っす。あとは退職代行に任せるっすね!」

あっけらかんに言って戻ってくる。流石の社長も口をあんぐりあけて反応できずにいた。

すでに退職願書いておいてたのかよ。用意周到すぎだろ。


「パイセン。会社辞めてきたっす!何時から働けばいいっすか?」

ニカッと笑顔で八重歯がチラリ、カラカラ笑いながら俺の背を叩く。

口調はあれだが優秀な俺の元右腕の部下、もとい動画編集者として今後手腕を発揮してくれるだろう。

高尾はじめ(女)が俺の従業員になったのであった。


―――


ここまで読んでいただきありがとうございました。


この物語は、最初に書いた物語の書き方を模索する中、リメイクする形で作り始めたものでした。


https://kakuyomu.jp/works/16817330663906789043


ただ初手で設定を変えてしまったことで、同姓同名なのに言動も設定も異なるという書き手も困惑する状態が続くようになってしまいました。

しかも似たような文章も所々登場したりと、このまま続けていくのは厳しいと判断しました。


筆が遅く、小説を書いてリメイクを書いてを続けていくのは厳しいと感じています。

1本を全力投入していきたいと思いますので、大変申し訳ないのですがこちらの物語はここで終わりとさせていただきます。


設定が異なりますが、もしよろしければ上記の作品を読んでいただければ幸いです。

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ブラック企業に勤めていた俺が、ひょうんなことから最強の酒飲み料理配信者になった morio @morio1101

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