第54話 別れ
全てが終わった。
それはすぐに分かることだった。だって、ダンジョンごとなくなったのだから。
そこになにがあったのかも分からなくなるほどにね。
「まるでなにもなかったかのようだな……」
同じことを思っていたみたいでライオスがそう言った。
「これで終わったってことだろ」
「なんだか夢をみていたみたいな感覚ですわ」
ヴォルフとニコが言った。
ニコの言ったことには共感できる。
私も夢のようだと思っていたから。
戦うという経験をしてこなかった私が進んでいけたのはみんながいたおかげだ。
「さて、みんなはこれからどうするの?」
私についてきてくれたけれど、みんなにだって他にすることがあるはず。だから、縛るわけにはいかない。
「俺はまた旅をしようと思っている。もっと強くなりたいのだ」
ライオスは拳を握って真っ直ぐ前を見据えている。もう決めたのだろう。
「わ、
ニコはライオスに向かって慌てながら言った。ライオスは驚いた顔をしたが、すぐにいつもの顔に戻った。
「それはかまわないが良いのか?」
「は、はい!一緒に参りたいのです」
ニコの顔は赤くなっていった。
勇気を出したのだ。
つまり、これから一緒には行けない。そんな二人には……
「二人で楽しく、安全に過ごしてね。私とは別のところに行くと思うけど、会ったらまた話してね」
言葉だけを残しておく。
二人は笑って、「もちろん」と答えてくれた。これ以上顔を見ておくと泣きそうだったので別れた。こういう時はあっさりがいい。
「ヴォルフはどうするの?」
「あー別にすることもねけし、お前またなんかしそうだしな。確か動物達の相談所作りてえみたいなこと言ってたろ」
そういえばそんなことを考えていた。
その前にダンジョンに入ったからそんな暇がなかったのだったなあ。
「そうだねえ……作ろうかな」
やらなければいけない気がする。
ウイに役目があったとして、私の役割はなんだろうか。仮に何かが起きたとしても対処できるように。そうでなくとも、悩みを一人で抱えているのは良くないからね。
「そうか、じゃあオレもついてくぜ」
ヴォルフは言った。
「まだついてきてくれるの?」
「おう。まだおもしれえことありそうだしな」
ここまで進んできたがヴォルフの行動は相変わらず面白いことに執着している。
それがどの方向にいくか分からなくて少し怖い。けれどついてきてくれるというのなら心強い。
「よしっ、じゃあまだまだいっちゃおー!」
私は腕を上げ次にすることへの意気込みとワクワクを表した。
動物と話せるようになったのでもふもふを堪能させていただきます! 紫吹 橙 @HLnAu
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