2.夕立の雨粒回す洗濯機
小さい頃から、気持ち悪いと感じる物事が二つある。
一つはザラザラした布を爪で引っ掻いた時の感触だ。何故か分からないが鳥肌が立ってしまう。この症状は私だけなのでは?と気づいたのはつい最近の事だった。
もう一つは雨の匂いだ。生臭いような、土とかカビのような匂い、所謂ぺトリコールとやらだろう。私はその香りがカタツムリのものだと思い込むほど嫌いだった。
その日、空は白かった。私は家で1人留守番をしていたが、見えるのは田舎の風景だけだ。宅配便が迷って私の家にたどり着けない事がたまにある程には田舎だった。
今日任せられた仕事は一つだけ。夕方頃になったら洗濯物を取り込むこと。
私は昼寝をした。蝉の声に気づかなかった。そして意識を取り戻した頃には、カーテンコールみたいに騒がしい雨が降っていた。
急いで外に出た私は、灰色の空の下、洗濯物を取り込んだ。薄い緑色のアロハシャツだとか、学校の制服だとか、さくらんぼの柄シャツだとか、ぐちゃぐちゃになった靴下や下着が、一つ一つカゴの中に入る度に混ざって、だらしなくカラフルだった。
そいつらを洗濯機に詰め込んで、洗濯の時間を5分、その後の脱水と乾燥の時間はできるだけ長く設定して洗濯機を回した。その行いが正しいかを私は知らなかった。
大粒の雨をいっぱいに吸って飽和した色の塊は、嫌と言うほど柔軟剤の良い香りがした。
8月52日 露野茉乃 @ronomano
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