第9話 閑話 後




-最上side-




 「あれ?飛山君って今召喚されてきたの?」



 飛山?ああ、そう言えばこの世界に来てから飛山を見ていなかったな。

 っていうか、今召喚されてきたって言ったか...?

 将司のやつ、おれ以外の奴は全員揃ってるって言ってなかったか?

 嘘をついていたのか?と思い、将司の方をチラッと見るとすっごい気まずそうな顔をしていた。

 こいつ、絶対忘れてたな。

 なんで同窓会で同じテーブルに座ってた奴を忘れるんだよ...。

 おれも人のこと言えねぇけどな。



 飛山の奴、今召喚されてきたってことはおれより個体値が高いのか?

 それは納得いかないな。

 なんせあいつは確か、スポーツで大学に進学したにも関わらず、練習についていけず間抜けにも逃げ帰ってきたような奴だ。それに加え、今は確かフリーターとか言ってたか。まったく情けない。

 対して俺は、高校を卒業して大手企業に就職し、入社一年目から必死に努力し、営業成績は全体トップだった。

 どちらが優れているかなど、誰が見ても明らかだろう。

 おれがあいつに劣っているなど認めるわけにはいかない。



 同窓会のときにおれがあいつに親切にしてやったのは、どうせ友達なんていないであろうあいつを可哀想に思ったからだ。

 おれってほんといい奴だからな。

 

 おっと、そんなことを考えている場合ではなかったか。

 早速飛山が鑑定するみたいだ。

 あのイケオジに鑑定してもらった時はみんなに公開されるけど、確か個体値は見れなかったんだよな。

 その後にもらう『開示』スキルを自分に使うことで初めて個体値を見ることができた。

 将司の時みたいに後で見せてもらうとしよう。


 お、飛山の頭上にステータスが浮かび上がってきた。

 どれどれ...


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名前:飛山 恭弥

種族:魔族

言霊:独

称号:異世界人 特異存在ユニーク

能力:天涯孤独てんがいこどく 如意自在にょいじざい


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 「なっ..!?」


 「魔族ってなに? 怖...」


 なんだ魔族って、そもそも人間でもないのかよ。

 おれも人並みにアニメや漫画を見ることはあったが、どの作品も大体は善と悪が存在し、基本的に善が悪を討つ。

 人間と魔族なんて、どちらが善でどちらが悪かなんてわかりきっている。

 人間が善に決まっている。

 てことは単純に考えれば人間の中でも優れた個体値のおれが魔族の飛山如きに劣っているわけがない。

 結局はおれの方が優れていたようだ。


 飛山のステータスは久我自身も想定外だったらしい。この場所に魔族を置いておくのはまずいらしく、なにやら生きて出られないような場所に飛ばされるらしい。イケオジの...確か名前をデュランといったか、なんて態度が一気に豹変し、虫ケラを見るような目で飛山を睨みつけている。

 

必死に足掻いて逃げようとしている飛山を「滑稽だな」なんて思いつつ眺めていると、最悪だ、飛山と目がばっちり合ってしまった。


 おれと目が合うと飛山は物凄い形相で助けを求めてきた。


 「最上!鈴木!助けてくれ!」


 なんでよりによって俺たちに助けを求める?もしや、同窓会で少し話したからって俺たちのことを友達だと思っているのか?

 ま、友達のいないあいつのことだ、仕方ないか。

 可哀想だと思って声をかけたが、友達になろうだなんて一ミリも思っていない。

 勘弁してくれ。俺たちを巻き込むな。

 隣の将司の反応を見るに、まあ大体おれと同じ考えなのだろう、気まずそうに目を逸らしていた。


 そういった俺たちの反応見て理解したのか、飛山は諦めたような、絶望したかのような顔をして俺たちから目を逸らした。

 思ったより理解が早いじゃないか、そこは評価しよう。


 そして、久我の「いやあ、ごめんね飛山君。魔族の君をここに置いているわけにはいかないんだ」という言葉と同時に飛山が白い光に包まれていった。

 あいつにおれの才能を見せつけることはできなかったが、まあどうでもいいか。

 あいつの分もこの世界おれの名前を轟かせていくとしよう。

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独楽者 ‐前代未聞の召喚魔‐ 杉崎 @sugisaki_

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