第8話 閑話 中





-最上side-



 将司は俺がここで目を覚ますまでにあったことを話してくれた。

 俺は諸々の話を聞き、ひとしきりパニックになった後、現在はなんとか落ち着きを取り戻していた。


 「そういったファンタジー作品を目にすることはあったが、まさか俺が当事者になるなんてな...」

 「ほんとね、たまんないよね」

 「・・・え?」

 「あ、いや、ほんとびっくりだよね!」

 「そ、そうだな」


 急に意味もわからず異世界に連れてこられた割には将司がいつもより生き生きしてる気がするが、まあ気のせいだろう。


 「確か、召喚された俺たちには特別な能力とやらがあるんだったよな? それってどうやったらわかるんだ?」

 「ああ、僕たちは意識を失ってる間に鑑定されてたみたいだけど、久我君のところに行ったらしてもらえるんじゃない?」

 「なるほど、じゃあ行ってくるわ」


 俺はそう言って今もクラスメイト達から怒声を浴びている久我のもとに向かい、鑑定をしてもらった。その時に聞いた話だが、召喚に時間がかかればかかるほど、その個体の個体値は高いらしい。個体値が高いほど身体の組み替えに時間がかかるんだと。

 だから鑑定してもらいに行ったとき、遅れて召喚されてきた俺に対して久我が興奮した様子で近寄ってきたのか。あれには正直ドン引きだったわ。

 あ、個体値ってのはまあ簡単に言うと、その個体の能力をわかりやすく数値化したもので、その数値が高いほど個体として優れているらしい。要は、個体値が高いほど強いってわけだ。

 

 そして今鑑定してもらった俺のステータスが...




==============================


名前:最上 愛音    個体値:45200

種族:人族

言霊:自尊

称号:異世界人 

技能:ユニークスキル -唯我独尊-

           -有頂天-

   ノーマルスキル -身体強化-

           -開示-


==============================



 おおぉ、なんかこういうのを見たらワクワクするな。

 ユニークスキルってことは、俺だけのスキルってことかな?

 こりゃ名前見ただけじゃどんなことができるのか全くわからんな。

 まぁそれは後で調べてみるとして、

 

 個体値は... 45200か...。

 召喚に時間がかかるほど個体値は高いって言ってたけど、俺って強いのか?

 召喚に1番時間がかかったのは俺のはずだが...。


 「将司、自分のステータスを他人に見せることってできるのか?」

 「えっと、『開示』ってスキル貰ったよね? そのスキルを使えば多分できるはずだよ」

 「まじ! じゃあ将司のステータス見せてくんね?」

 「え?なんで? 嫌なんだけど...」

 「いいからいいから! 共有しておいた方が後々やりやすいかもじゃん!」

 「・・・はあ、わかったよ...」


将司と最上は幼い頃からの親友だが、昔から将司は最上に逆らえないのである。



 将司はしぶしぶだったが、ステータスを見せてくれた。



==============================


名前:鈴木 将司  個体値:34700

種族:人族

言霊:憧憬

称号:異世界人 

技能:ユニークスキル -八方美人-

   ノーマルスキル -身体強化-

           -思考加速-

           -開示-


==============================



 「なるほどなるほど... おけ!サンキューな!」

 「じゃあ、愛音のステータスも見せてよ」

 「あー、そうしたいのは山々なんだけど、おれ『開示』ってスキル貰えなかったんだよね」

 「え?そうなの?」

 「ああ、悪いなおれだけ見せてもらう感じになって」

 「いいよ、そういうことなら仕方ないね」

 「また他に方法が見つかったら見せるから!」

 「おっけー」


 普通に考えて、こういうステータスってのは他人に見せない方が良いだろう。すまんな、将司。

 

 それにしても、将司の個体値は、34700か...。

 そう言えばさっき将司が「僕が召喚されたときには愛音以外は全員いたよ」って言ってたよな...?

 ってことは他の奴らは将司よりも個体値は低いってことだよな?

 じゃあこの中で1番個体値が高いのは俺ってことか...。





 


 ああ、







 将司にステータスを見せてもらった後は、その他のクラスメイト達が集まっている場所に行き、いまの状況について話し合っていた。

 未だに久我に対して怒声を浴びせてる奴らはいるが、大半は落ち着きを取り戻していた。

 

 そんなとき、怒声を浴びている久我の不機嫌そうでもあり楽しそうでもある声が聞こえてきた。


 

 「まあまあ落ち着け落ち着け。あんな平和でつまらない国で奴隷のように働いて毎日同じことの繰り返しなんて人生より、この戦いにあふれた弱肉強食の世界で気に入らない奴は力でねじ伏せる、余計なことを考える必要はなく力こそがすべてを解決する、そんな人生の方がよっぽど面白いと思わないか?それに、お前らだって異世界に行ってみたいって思ったこと一度はあるだろ?そりゃあんな生き苦しい国にいたんじゃ異世界に魅力を感じるのも無理はないさ。皆さん憧れの異世界に連れてきたやったんだ、そんなギャーギャー責められるいわれはないね。むしろ感謝してほしいくらいだ」



 いや、こいつ完全に俺たちの反応をみて楽しんでるよな...

 そりゃあこんな状況じゃクラスメイト達がブチギレるのも無理はないな。

 確かに、おれもこの世界に来て少しワクワクしている部分があるのも事実だけど、普通急に知らない世界に連れてこられてその犯人が実はクラスメイトでした、なんて言われたらそりゃ意味わからんし、キレたくもなるだろう。

 案の定、ギャーギャー言ってる奴らの声が更にうるさくなった。耳がキンキンする。

 さっきまでと同じようにクラスメイト達からの怒声を浴びて楽しそうにしている久我だったが、とある人物に気がつき表情を一変させて、目に見えないほどのスピードでその人物に近付き声をかけた。俺たちは誰もその人物に気がついていなく、正直早すぎて久我がどこに行ったのか誰にも認識できていなかった。

 しかし、その時の久我の言葉がやけにおれの耳に残ることとなり、久我とその横で呆然としているを認識することができた。

 





「あれ?って召喚されてきたの?」

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