第3話

「おっはよー! 玲央、今日も相変わらずかっこいいねぇ」

「おはようございます。それはいいので、暑いから早くいきましょう」

「はーい」

 今日は玲央が最初に連れて行ってくれた公園に行く。公園とはいっても、あそこはただの公園ではない。

「そんなに何回も来て、飽きないんですか」

「うん、飽きないよ? 景色きれいだしね。雪がない景色が見れるのは今日までじゃん? しっかり目に焼き付けておかないと」

「そうですか……」

 今日はもしかして暑いから、玲央は元気がないのかな?

 その日も結局、玲央に案内してもらって、きれいな景色を目に、心に刻んだ。そして、夕日も傾いてきたころ。

「ほんとうに、帰るんですか」

「え?」

「俺、この一週間ほんとに楽しかったです。学校に行ってない分、人としゃべる機会なんかめったにないし。だからっ」

 そこで玲央は顔を上げた。

「だからまだ、ここにいてほしい……っ!」

 玲央は自分の手を祈るように組み、こちらをまっすぐ見ていた。

「ごめん、それはできない。玲央、ごめん」

 時間というのは残酷だ。

「っ……。そうですよね、すみません、困らせて」

 時に絆をも引き離す。

「でも、」

こんなに玲央がボクと一緒にいたいって思ってるとは、気づかなかったな。

「でも、また来年、絶対ここに来るよ。その時にまた、」

 最初から別れが来るなんてわかってた。それでいて、こんなに楽しく過ごしてしまった。思い出を作ってしまった。

「その時にまた、たくさん遊んでよ、玲央」

 玲央、本当にごめん。それから、

「ありがとう、玲央。またね」

「はい。絶対来てくださいね。俺、待ってますから」

 ほんとうに、ありがとう。楽しかったよ。

 こうして、ボクらは、それぞれの家に帰っていった。


 俺は待っている人がいる。もう、その季節になった。俺はよく行く景色がきれいな公園に向かう。待ち合わせしたわけじゃない。でもなんとなく、わかる気がした。

「来栖さん」

 ほら、やっぱりいた。

「玲央久しぶり! 元気? 相変わらずかっこいいねぇ」

「お久しぶりです。それで、今日はどこに行くんですか?」

「今日はね、この公園見たい! 案内してくれる?」

「わかりました。行きましょう」

 ずっと、この時間が、続けばいいのに。

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夏、君を待つ なべねこ @nabeneco0827

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