第2話
「すっごーい! こんなにきれいな景色初めて見たよ! 緑も多いし、海も見えるし、いいところだね!」
ボクは生まれて初めて見る、雪のない景色への感動に浸っていた。ここは玲央が連れてきてくれた広い公園。
「そうですか、ならよかったです」
「玲央はよくここに来るの?」
「まぁ、割と近い距離にある場所ですし、景色はいいですからね」
こんなところが近いなんて、うらやましすぎる。
「ちょっと周り見てもいい?」
「どぞ。じゃあ俺はここで本読んでるんで」
「いやいや、玲央も行くよ!」
ボクは感動と興奮により、テンションはマックスだった。
「いや、いいですよ」
そう言う玲央を、ボクは引きずるように連れて、いろんなところを見て回った。
そして夕日も傾き始めたころ。
「はー疲れた! ほんと、素敵な場所に連れてきてくれてありがとね。楽しかった~」
「いえ。ここくらいしか、俺は知らないので」
「じゃあさじゃあさ、明日は遊園地に行きたいんだけど!」
玲央は明らかにいやそうな顔をした。
「俺、絶叫系ダメなんすよ。行けないです」
「あ、そっか……。じゃあ! 水族館は?」
ここなら絶叫系はないもんねー。
「それならいいですけど、なんでそこまでして俺と行きたいんですか?」
「え。楽しいからかな。玲央おもしろいし」
今日だってボクが聞いたこととかには全部しっかり答えてくれるし、何よりしゃべってて楽しい。
「それ以外に理由なんかないよ」
「そうですか。楽しいなら、良かったです」
「うん、じゃあまた明日もあそぼーね!」
この時、ボクは全然気づいてなんかなかった。一度仲良くなったとき、そこを離れるのが、どんなにもつらいことか。
次の日、ボクたちは水族館に行った。その次の日は、玲央が嫌がっていたけど、最後にはいいよって言ってくれた遊園地……。ボクが自分の国に戻るまでの一週間、本当に遊び尽くした。遊園地に水族館、おいしいグルメや映画、それにかわいい服も買ったし、玲央からおもしろい話もたくさん聞いた。
「それじゃあ玲央、また明日!」
「明日はどこに行きたいですか」
この一週間で、玲央はボクに結構心を開いてくれたと思う。自分から話しかけてくれることも増えた。
「そうだね、明日がちょうど来て一週間か。最初に玲央が連れて行ってくれたあそこ。また行きたいな」
「はい」
玲央はたまに笑ってくれる。それを見ると、ボクはうれしくなる。
「それじゃあ来栖さん、また明日」
玲央はそう言って、帰っていった。
「うん、またね!」
明日が、玲央といられる最後の日。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます