恥の多い夏、終わる〜誠司(♂)と久留美(♀)〜
花森遊梨(はなもりゆうり)
本文!
「「綺麗な花火……」」
気温的にはまだまだ夏。ところが暦は9月、天気は大雨、そんな異常気象真っ盛りの日のことである。
「俺たちの最後の夏の思い出が……」
「まぁ、私たちの洗濯物が濡れて洗い直しになるよりは良かったんじゃない?」
日が落ちたらすぐにファイアできるよう、縁側に出しっぱなしにしていた花火は恵みの雨にさらされていた。いや、火薬にとって湿気は大敵なので恵みの雨なんて表現は適切ではない。そもそもこういう大雨は地面に染み込まないので雨なのに渇水なんていうデブなんだけど餓死みたいな事態になるので名実ともに恵みの雨ではない。…らしい。
「とにかく、これで夏の思い出は最後ってことになるね」
「待て、気温的に夏はまだ終わってない。今からでも海に行けば」
「そう言ってこの前無理やり行った海に入水して58秒でアンドンクラゲに両足を刺されたのは誠司だったじゃん?」
「その後、足がパンパンになってアクセルもブレーキも踏めなくなった俺の代わりに卒業検定以降、一切運転してない車で高速まで乗った久留美が突然覚醒したよな。『もう誰も私を止められない!次は国営武蔵丘陵森林公園まで飛ばしてやるぅ!』って」
「で、当日は『気温が人間の体温並みにあるのはよく考えると異常気象だからやっぱ家にいるー』と言って結局出かけなかったのはよく覚えてる」
「つまり…俺たちは結局夏のレジャーをいっさいやらないまんまここまできてしまったんだ!!綺麗な花火はたった今しけちまったしな!」
「誠司の基準では夏日である限り夏だし、9月も自分を8月だと錯覚しているし、まだまだチャンスはあるんじゃない?」
「今週の後半から9月がようやく本来の自分に目覚めたりしなければな…」
要は週の後半から気温が下がるのだ。気温がたかいのめずっと夏ということで海でクラゲに刺されて公園で虫に刺されコンクリートのジャングルで熱中症になれるという魔の季節もとうとう終わりである。
だが、恥の多い夏を振り返ってばかりでは前に進めない。
「俺は秋のレジャーを今からでも探す。そして今度こそ秋らしい秋の時間を過ごしてやる!!」
「そんなこと言って、秋のレジャーって夏ほど急には思いつかなくない?紅葉狩りとか味覚狩りとかさ」
「すぐ思いついてんじゃん」
バラバラになってもギリギリにはならない。一緒にいたいと思う限り、こうやって二人の関係はこれからも続いていく。
「いやいや、逆になってない?それじゃ突然モンロー主義に目覚めたゴーバスター○じゃん私たち」
恥の多い夏、終わる〜誠司(♂)と久留美(♀)〜 花森遊梨(はなもりゆうり) @STRENGH081224
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