第18話 我、困惑する

「貴様! 魔王様の御前だぞ! 無礼ではないか!」


「よせフレイ。こいつは……人間じゃない」


「え……? で、ですが……どこからどう見ても……」


「この我が言うのだ。間違いがあるとでも思うのか」


「い、いえ! そのようなことは欠片も思っておりません!」


『リピート。私は問う。貴方は何ですか?』


「我は魔王。原初にして最古、始まりと終わり。混沌の魔王よ。して、お前は何だ?」


『魔王、検索。該当七十一件。件数多数につき混沌の魔王で再度検索、エラー。当メモリーには混沌の魔王というデータは存在しません』


「いや……存在しませんて言われても……我ここにいるし……だいたい魔王で七十一件って何の話だ? 我以外に魔王がいたということか?」


『魔王、魔を統べる存在のこと。発生した起源は不明、ルナリア歴3524年まで数十年に一度確認されていた強大な存在。現在では未確認』


「ふむ、やはり数十年に一度……我以外の魔王がいたということか」


「魔王様、何だかこの子、おかしいですよ……まるでゴーレムみたいな感じがします」


「ふむ。フレイも気付いたか」


「ではやはり」


「あぁ、だが少なくとも我の知るゴーレムとはかけ離れているがな」


『生体データが無いということは、貴方方は遠方からいらしたのでしょうか? 私のマスターは今どちらにいらっしゃるか、ご存知でしょうか?』


「遠方……そうだな、遠い遠い所からやって来たんだ。名はなんという、少女よ」


『私の識別名はTERAー0863CZU、タイプエンデミュオンと言います。混沌の魔王』


「てぃーいー……それ全部名前なのか……? 長ったらしくて舌噛みそうだぞ」


『マスターは私のことを【テラ】と呼んでおりました』


「お、そっちの方がいいではないか。では我もテラと呼ばせてもらおう」


『把握。よろしくお願いします。混沌の魔王』


「魔王でよい」


「様も付けなさいね」


『把握。魔王様』


「立ち話もなんだ。テラよ、我らを座れる所に案内して欲しいのだが?」


『承知いたしました。こちらへどうぞ、お客人』


 今の今まで一切の表情を変えずに語っていたテラは、軽く会釈をして廊下を歩き出した。

 魔王とフレイは一度顔を見合わせた後、少しの距離を開けて付いていったのだった。

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封印を破って復活した魔王、世界が滅びている事を知って世界を創り直す事にした 登龍乃月@雑用テイマー書籍化決定! @notuki

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