第17話 我、不思議な少女と出会う
「魔王様」
「あぁ。いるな」
人の気配は感じられないが、ここまであからさまに違っては二人も警戒せざるを得ない。
夜守りの眼鏡を外したフレイと、愉快そうに口角を上げた魔王は明るく照らされた廊下を進んで行ったのだった。
明るく白く照らされた廊下をゆっくりと歩く魔王と、緊張と警戒により堅苦しい表情を浮かべるフレイ。
廊下は長い直線で、左右に扉などはない。
コツリ、コツリ、と魔王のブーツの底と見知らぬ建材の床が硬い音を奏でる。
「フレイよ」
「は」
「我から離れるなよ」
「はい。温情、感謝致します」
「魔力はどうだ」
「はい。魔王様からは充分な量の魔力が供給されております。問題は無いかと」
「よろしい。敵意どころか気配すら感じられないが……気を抜くなよ。ま、我とお前に勝てる存在がいるとは思えんがな」
「は! 心得ました!」
その時だった。
ウィイーン、と聞きなれない音が廊下に響き、魔王とフレイのすぐ側の壁に突如として長方形の穴が開いた。
「なっ!」
「誰だ!」
二人の反応は早く、壁に穴が空いた瞬間に飛び退いて二メートルほどの距離を取っていた。
「何が起きたというのだ……我には壁が壁の中に吸い込まれていったように見えたが……」
「私も同じです。実に滑らかな動きでした」
「だ、誰かいるのか……?」
顔を硬くするフレイを横目に捉えながら魔王は静かに穴へと語りかける。
穴の中からは廊下と同じような白い光が漏れ出ているが生命体の気配は感じられず、返答もない。
じれったくなった魔王が一歩踏み出そうとするか否かのところでコツリ、コツリという小さな足音が鳴った。
そして唐突に声がした。
『おかえりなさいませ』
「……は?」
「子供……?」
涼やかな声と同時に姿を表したのは、髪の毛から一切の色彩が抜けた白髪の少女。
身長は百五十センチほど、年の頃は十四といったところだろう。
肌は太陽の光を一切浴びたことがないかのような色白で、凹凸のない体は青と白を基調としたワンピースに包まれている。
穴から出てきた少女は光のない黒い瞳を魔王とフレイに向けて立ち尽くしていた。
「お、お前は『……疑問。メモリーに保存されている生体データに該当無し。スキャニングリトライ。エラー。私は問う。貴方は何ですか?』
魔王が口を開いたとほぼ同時に少女が言葉を発した。
涼やかだがどこか冷たい、無機質な声だった。
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