初めての押しかけ妻

米糠

初めての押しかけ妻

 エンビー: 「おじゃましまーす」


私はエンビー、15歳、魔法使いの女の子です。

 

今日は魔法の師匠のテスリー叔母さんの所にお稽古に来ています。


 テスリー: 「いらっしゃい、エンビー、 今日も元気ね」


 エンビー: 「ハイ! 叔母様。今日は何の練習ですか?新しい魔法とか?」


 テスリー: 「まあまあ、そんなに急がないで、 


        お茶を入れるからお掛けなさいな」


 エンビー: 「ハーイ。手伝うわよ、叔母様」


 テスリー: 「ありがとう、エンビー、 じゃあ、


        シホンケーキがあるから出してくれる?」


 エンビー: 「ハイ、いつものところですね?」


 テスリー: 「そうよ。クリームも忘れないでね」


魔法の師匠 テスリー叔母様は、(氷の魔女とか氷の女王とか)という


二つ名で知られるSランク冒険者、今は少しお休み中みたいで、ソルトビル郊外の


自然に囲まれた小さなお家に住んでいるの。


私は、尊敬する叔母様のように立派な魔法使いになるため、修行中なの。


 エンビー: 「叔母様の焼くケーキはいつも美味しいですね、


      今度教えてくれませんか?」


 テスリー: 「良いわよ、今度一緒に焼きましょうね」


テスリー叔母様はわたしにはとても優しい。氷の女王なんて怖そうな二つ名なのは、氷魔法の天才だからなの、決して性格が冷たいわけではないのよ。


お料理もお菓子作りもとっても上手、何から何まで私の目標なの。


 エンビー: 「そういえば叔母様、ここ暫くお留守でしたね。ギルドのお仕事でしたの?」


 テスリー: 「タックドラスがね、アラストル侯爵に、ドラゴン退治を頼まれてね、そのパーティーメンバーに、またなってくれって言うから、 退治してきたの」


今、さらっと凄いこと言ったわね。ドラゴンを退治してきただって。


それも買い物に行く時のように、ちょっと行ってきた?ドラゴン退治に?


流石は、Sランク冒険者、流石はわたしの目標、氷の女王だわ。


 エンビー: 「パーティーメンバーって、ドラス様の4人パーティーですか?」


 テスリー: 「そう、その4人と今回は、ドラスの弟子3人も一緒に」


タックドラス様はSランク冒険者で偉大な魔法使い。


叔母様との熱い関係は知る人ぞ知るなの。


残りの2人もSランク冒険者で、確か(鉄壁の)ゴランと


(女たらしの)オグレイヌだったかしら?


1人変なのが入ってるけど、これが叔母様が若い頃からやってきたパーティー仲間。


でも、ドラス様に弟子がいたなんて初耳だわ?


 エンビー:「流石はドラス様、アラストル侯爵様の指名依頼だなんて」


 テスリー:「アラストル侯爵もひどいやつよね、


      なんでもドラスに押し付けるんだから」


 エンビー:「なんでも?」


 テスリー:「ソルトビルの東の方向に新しくダンジョンが見つかったらしくて

 

      そこの調査依頼をゴーモリンに隠れていたドラスにゴランを使って


      呼び出してやらせたそうよ。


      その後で、それの褒美を渡したいからといつわって、


      ゴーデプス村の魔物の群れ退治と


      発生源のダンジョンの調査もさせたらしいわ。


      そして今度のドラゴンよ、それを連続でよ。


      ドラスがまた何処かに隠れてしまうわよ。まったく」


 エンビー: 「流石はドラス様………でもアラストル侯爵様は横暴ですね」


 テスリー: 「本当にね、いくらドラスが頼りになるからって、


       こき使うにも程があるわ!」


 エンビー: 「本当ですね…………ところでドラス様はいつのまに、


       お弟子さんを育てていたんですかね?弟子とか取らなそうですのに」


 テスリー: 「私も驚いたのだけれど、正確には弟子は1人だけ、3人は従兄弟で


       いつも一緒に行動しているみたい。


       3人の狩の現場に居合わせて、ドラスの魔法を見たアグル君が、


       ドラスに弟子にしてくれと頼み込んだらしいわ。


       もともと3人は、ゴーモリン冒険者ギルドのギルマス、


       リザトルさんの弟子だったらしいわ。


       だからドラスは、リザトルさんと相談して魔法の師匠になったみたい」


 エンビー: 「ドラス様はその子を見て、込みがあると思ったんですかね?」


 テスリー: 「私もドラゴン退治では、一緒したけど凄いわよ。


       アグル君の魔力量、連射時間、私にも引けをとってなかったわ。


       あの子がいたのでドラゴンを倒すのが楽だったと言っても


       さしつかえないほどにね」


 エンビー: 「本当ですか?凄いですね」


 テスリー: 「しかも彼らはまだ、12歳なんだって。驚きよね」


 エンビー: 「エ〜、 私よりも小さいじゃないですか?」


 テスリー: 「背は同じくらいかしら、1日4食べて大きくなるんだって言ってたわ」


 エンビー; 「アハハ、バッカみたい、食べれば大きくなるってもんじゃないのに」


 テスリー: 「でも、それだけ一生懸命強くなろうとしてるって事ね」


 エンビー: 「可愛いですね、お馬鹿さんて感じ」


 テスリー: 「アグル君達、三つの依頼全部に参加していたそうよ。


        特にゴーデプスでは、アグル君ひとりで


        ゴーデプス周辺のゴブリンの群れを殲滅して回ったんだって。


        殲滅した群れは20以上なんですって。


        ドラスがそれを任せられる実力を持ってたってことよね」


 エンビー: 「アグル君凄いですね」


 テスリー: 「今3人はアラストル冒険者ギルドのAランク冒険者に認定されて、


       ゴーモリンに戻ってるわ」


 エンビー: 「Aランク冒険者! 私ってどのくらいの強さなんですか?」


 テスリー: 「そうね、あなただってAランクになってもおかしくないわよ


       でもアグル君はもうSランクの実力があるわね」


 エンビー: 「12歳でSランクの実力………私は15歳でAランク………」


私も魔法では同世代には、負けない自信が有ったのに、


叔母様はわたしよりアグル君の方が強いって認めてるのね。


そんなに凄いの?この目で確かめてみたい。どんな子なのかしら。


 テスリー: 「エンビー、アグル君良い子だよ。背もきっと今より高くるし、


       掘り出し物だよ。今なら彼女もいないしね。


       押しかけ妻になっちゃいなさいよ。エンビーは綺麗だからきっと


       アグル君、エンビーに夢中になるわよ」


 エンビー: 「ななな、何をいうんですか、叔母様、はしたないですよ」


 テスリー: 「そうね、わたしとした事が、恥ずかしいわ、


       でもあんな子どこにもいないからつい、

       

       エンビーにって思ってしまったのよ」


 エンビー: 「そんなに凄いんですか?」


 テスリー: 「あの子はいまに、ドラスを越えるわよ」


 エンビー: 「ドラス様をですか?」


 テスリー: 「すぐにっていうわけではないけれどね、まだ12だもの、いずれはね」


 エンビー: 「私って、どうなんですか?」


 テスリー: 「あなたは、きっと私を越えるわよ、わたしが15の時より


        あなたの方がすごいもの、師匠もいいしね!


        あなた、ゴーモリンに行ってアグル君とパーティー組みなさい。


        そうすれば、あなたも今より成長するはずよ。


        女の子としてもね」


 エンビー: 「わたし、アグル君に負けないように頑張ります。


        ゴーモリンに行ってアグル君に勝ってくるんだから」


 テスリー: 「ゴーモリンに行ってアグル君とパーティーを組みなさい


        そして彼と一緒に闘って、一緒に成長するの。


        そうすればきっといいことがある」


 エンビー: 「わかりました。私、ゴーモリンに行きます」


こうして私は、ゴーモリンに、アグル君に会いに行くことになったの。


決して押しかけ妻になるためじゃないわよ、アグル君とパーティーを組んで


わたしの実力を見せつけてやるんだから。




私は、馬車の乗ってゴーモリンに旅立った。


テスリー叔母様が送り出してくれた。


 テスリー: 「アグル君には、私の弟子をよろしく頼むって言ってあるからね、


       向こうに行ったら、アグル君に色々聞くのよ、


       多分冒険者ギルドに行けば会えると思うから。

 

       私の弟子だっってキチンと伝えるのよ。」


 エンビー: 「ハイ、わかりました。」


私はテスリー叔母様に手を振りながら馬車に乗り込んだ。


私の乗った馬車はじきに動き出した。


馬車の中には何組かの客が乗っていたが、私は怖くて話をすることはなかった。


1人で旅をするってとても心細い。


乗っていればゴーモリンに着くと心の中で自分に言い聞かせた。


アグル君ってどんな子なんだろう。


優しい子ならいいなあ。


1日4食って………きっと太った子よね。


1人でゴブリンの集落を殲滅して回った………


頭から血をかぶった全身真っ赤な太っちょが、


ゴブリンの死体を片手にニヤっと笑う姿が脳裏に浮かぶ。


(オエー)吐き気がするわ。


アー、どうしてゴーモリンに行こなんて思っちゃったんだろう。


イエイエそんなはずはないは、叔母様がそんな奴を私に薦めるわけがないもの。


きっと白馬に乗った王子様のような素敵な人よ。


才能に溢れた美男子よ。


……叔母様……美男子なんて一言も言わなかったわね………


美男子なら必ず美男子っていうわよね…………そこは間違いないわよね………


美男子じゃないんだ………また血まみれふとっちょの姿が脳裏に浮かぶ。


(オエー)……こいつじゃないよ……きっとこいつじゃない。


フツーよ、きっとフツーの子に違いないわ。


見た目はどうでもいいのよ………そうよ。別に付き合うとかじゃないんだし。



私は旅の間、この想像のアグル君に何度も吐き気をもよおすことになった。



本当に来なければよかった……


どんなに凄い魔法使いなのかな?でも負けないわ、私は叔母様の弟子、


氷の女王の弟子なんだから!


たとえ初めは負けてても、逆転すればいいんだ、だからパーティー組んで


切磋琢磨しなさいって言ってるのよね、叔母様は。


負けないわ、そんなキモい奴に負けるもんですか。


きっと、ギャフンて言わせてやるんだから!


アグル君に勝つ、そのために私は旅に出たのよ、やってやる。


私の闘志に火がついていた。




急に馬車が止まった。


御者: 「前から盗賊が来ます。約束の方は戦闘に参加して下さい」


御者からそう声が掛かると、乗客の内の何人かが剣を持ち外に出ていった。


盗賊が出た! そんなことがあるのね?


外から剣撃が聴こえてくる。


「ガタガタ」と音がして、3人の盗賊が馬車に入って来た。


外では剣撃の音が続いている。


盗賊: 「どれどれ? ジジイにババアに、、居るじゃねーか。


なかなかの上玉だな………へへへ  高く売れそうだぜ。


楽しんだ後でな………今、気持ち良い事してやるからな〜」


私をいやらしい目で見ながら、汚らわしい事を!


エンビー: 「フリーズ!」


私は手前の盗賊を氷結させた。


私は氷の女王の弟子、こんな奴らは氷結よ。


もう1人、


エンビー: 「フリーズ」  


もう1人がこおりつくあいだに残りの1人が逃げ出した。


盗賊: 「うわ〜、魔女だ〜」


逃げる男に影響されたのか、ほかの盗賊達も逃げ腰に、


盗賊: 「カシラがやられた〜」


この声で 盗賊達が逃げ始める。私盗賊の頭を氷結しちゃったみたい。


馬車のみんなは無事に盗賊を退けた。


どんなもんよ!氷の魔女を舐めるなよ、エヘン!だ。



5日の旅の後、私はゴーモリンに到着した。


これがゴーモリンの街か?


あまり大きな街じゃないわね、ソルトビルより全然小さいわ。

それがゴーモリンの第一印象だ。


とりあえず宿屋を探さないと。


少し街を歩き宿屋を探す。


美味しそうな匂いに足を止めると良さそうなお店を発見。

(森のシチュー屋さん)か……


ここで食事を取ろうかしら。


(森のシチュー屋さん)の向かいに小さな宿屋を発見、宿屋を探すのも一苦労ね。


街も小さいし宿屋もたくさんはないのかしら。


入ってみると、あまり綺麗な宿屋とはいえなさそうだ。


ここに一泊することにして、部屋をチェック………やはりボロ部屋だ。


値段も安かったし今晩だけはここで我慢、探すのも疲れてるしね。


少し休んだら、向かいの(森のシチュー屋さん)に行ってみよう。


良い匂いがしていたし、きっと美味しいものが食べれるに違いない。


今日は疲れたし、明日ギルドに行ってみれば良いかしら。


なんか、アグル君に会うのが怖いな、変な子だったらどうしよう。



気力と体力が少し回復して来たので、(森のシチュー屋さん)に行ってみる。


店はシチューの良い匂いが充満している。


ここはやっぱりシチューが美味しそう。


シチューを注文して食べてみると、やった!あたりだ。


美味しいものを食べると気力もみなぎってくるものね!



団体客が入ってくるのが目についた。


大人たちに混じって子供が3人……まさかね、そんな偶然あるわけないわ。


彼らの話に聞き耳を立ててしまう、というより聞こえるものは、仕方ないでしょ。




 アポン: 「ここのシチューはおいしいね!」


 アゴン: 「うめ〜なあ、久しぶりだぜ」


 アグル: 「うん」


 ベガジラ: 「君たちもうSランクなのね、おめでとう」


 アポン: 「ありがとうございます、ベガジラさん」


 ランセル: 「この前Dランクだったのに、アッと言う間にSランクか!」


 ザックス: 「君たちを弟弟子に持てて、誇らしいよ」


 ウインレース: 「俺も同じシェアハウスに住んでたことを自慢できるよ」


 リザトル: 「俺の弟子が3人もSランクになるとは、俺の指導の賜物だなぁ!」



弟子3人がSランクだって……その3人って、もしや……



 ザックス: 「めでてたいですね」


 ノブリムス: 「ウメ〜」


 フィスザス「めで、ウメ〜」


 ベガジラ: 「君たちどこまで進んだらリザードマンなんてのがいたの?」


 アゴン: 「ここから5日行って5日で帰ってきたんだぜ」


 ランセル: 「かなり奥まで入ったんだなあ?」


 ウインレース: 「かなり奥地だな」


 ザックス: 「周りの魔獣が強過ぎないかい?」


 アゴン: 「一対一でそこそこいい訓練相手だったぜ」


 アポン: 「そうだよね。」


 ノブリムス: 「1発くらったら大怪我だろう?怖くないかい?」


 アゴン: 「イヤ、防御魔法あるから大した傷になんねーし、


     なってもアグルにエクストラヒールかけてもらえるしな」



アレ、今、アグルって言ったかしら?



 アポン: 「僕のヒールで十分だったよね」


 アグル: 「うん」


 アポン: 「3人がかりだったのはリザードマンだけだよね」


 リザトル: 「うむ、うむ……お前ら本当に強くなったな、俺は嬉しいぞ」


 ベガジラ: 「ネエ、リザードマンってどんな奴だったのよ?」


 ザックス: 「そうだよ、教えてくれないかい」


 アポン: 「あのね、リザードが立ち上がって人型になった感じ」


 アゴン: 「ああ、2m半くらいの身長で太い尻尾があったな」


 アグル: 「うん、指にでかい爪があって、毒爪なの」


 ノブリムス: 「それで?」


 アポン: 「僕の炎の魔剣攻撃の炎てで弾いてボワンといったのになんともなくて」


 アゴン: 「俺の氷雪の魔剣で手が氷結したら、自分で切りとって、


      そこから手が生えてきて」


 ベガジラ: 「手が生えたですって?」


 アグル: 「うん」


 アゴン: 「とにかく耐久力が半端ねーやつで、


     アグルのサンダー、ストーンバレット、ファイヤー、でも耐えて、


     さいごは、念力でホールドして水球に包んで、溺死させた、窒息死?


     それも20分くらいかかったんだぜ。」


 アグル: 「うん」



今確かにアグルって言った。間違いないわ。



 アポン: 「とにかく、強かったよね」


 リザトル: 「確かに、ソリャ〜、兎に角ツエ〜なあ」


 アゴン: 「アグルがいなかったら、勝てなかったよな」


 アポン: 「そうだよね」


 ウインレース: 「そうか、そんなのがいるんだな」


 ベガジラ: 「怖いわね!Sゾーン」


 ザックス: 「僕らはCゾーンで十分だよ」


 ランセル: 「ああ」


 ウインレース: 「他の魔獣は、どんなのがいたんだ?」


 アポン: 「25mくらいのグレーリザードがいたね」


 アゴン: 「いたいた」


 ザックス: 「どうしたんだい?」


 アポン: 「アグルが、やっつけたよ、ネエ」


 アグル: 「うん」


 ザックス: 「1人でかい?どうやったの?」


 アグル: 「ホールドしたんだけど、抑えきれなかったから、


      頭部を燃やしたらあっけなく死んだ」



この子がアグル君だ!背中を向けてるこの子が、太くもなく細くもなく、


普通に引き締まった体つき。


太っちょじゃなかったわ。


声を掛けなきゃ!



 ザックス: 「頭を燃やしたの、魔法で?」


 アグル: 「うん」


 アゴン: 「でけーだけで大したことなかったよな」


 アグル: 「うん」



私は勇気を振り絞って彼の後ろから声を掛けた。


 エンビー: 「あなたがアグル君?すごい魔法使いなんですって?」


アグル君が振り返ってこっちを見る。


美男子ではないけるど、普通の顔ね、悪くはないわ。


 エンビー: 「あなたがアグル君でしょう?テスリーおばさんに聞いたわ、


       凄い魔法使いだって」


私はもう一度言った。


アグルは私のことを不審そうに見つめている。


なんだこいつは?とか思ってるわけ?


 エンビー: 「テスリーおばさんから聞いてないかしら?私のこと?


      弟子のエンビーを頼むって」


 アグル: 「???…………弟子のエンビーだって?」


アグルは考え込んで………ハッと何かに気づいたように言った。


 アグル: 「思い出したよ………俺がアグルだ。


      テスリーさんと最後に会った時弟子をよろしくと言われたね。


      でも名前までは聞いてないよ。


      はじめまして、エンビー。よろしくね」



 エンビー: 「エンビーじゃなくて、エンビーさん!


      あなたは12歳、私は15歳なんだから(さん)くらいつけなさいよ。」


あらやだ、私どうしてこんなこと言っちゃうのかしら。


いきなり怒っちゃうなんて好感度ダダ下がりだわ。


 アグル: 「ごめん………なさい」


 エンビー:「まあいいわ。これからパーティー組むんだし、エンビーでいいわよ」


 アグル: 「あの、パーティー組むってどういうことですか?」


エ〜〜、どうして聞いてないのよ、


私とパーティー組むことになってるんじゃないの〜。


ここは、断られるわけにはいかないわ。


 エンビー: 「あら、よろしくって言われてるんでしょう?


       冒険者なんだからよろしくって言ったら


       一緒にパーティー組んで冒険するでしょう?


       それともこんなところで可憐な少女を1人にする気なの?」


 アグル: 「そう言う……ものですか?」


 エンビー: 「あたりまえでしょう。何にも知らないのね、常識をわきまえなさい」


 エンビー: 「それにこんなところで1人りぼっちなんて寂しすぎるじゃない、


       知ってる人いないんだから………」


 アグル: 「1人でいらしたんですか?どちらから?」


 エンビー: 「そうよ。ソルトビルから馬車でね」


ちょっと押しが強すぎたかしら、恥ずかしいわ。


それにみんなの視線が私に集まって痛いわね。


 アグル: 「ソルトビルから馬車でね……大変、でしたね………


     盗賊とか出ませんでした?」


 エンビー: 「出たわよ………いやらしいこと言うから凍らせちゃったわ」


 アグル: 「凍らせた………魔法でですか?」


本当はそんなにお転婆じゃないのよ。


私は、こくりと頷いた。


 エンビー: 「あなた、どこに住んでいるの?」


 アグル: 「ギルドのシェアハウスに住んでいます」


 エンビー: 「じゃ、私もそこに住むわ」


ヤダ、私ったら何言ってるのかしら?


 アグル: 「住むと言われましても〜入居可能かどうか?男しか住んでませんし?」


 リザトル: 「女性も入居できるぜ、空き部屋もある。」


リザトルがニヤニヤしながら言った。


何ニヤニヤしてるのよ、変なこと考えないでよ、いやらしいわね。


 エンビー: 「明日冒険者ギルドに行くわ。ちゃんと手続きの手伝いをしてよね。


      今日は、前の宿屋に泊まてるんだけどボロいのよね、それじゃ」


私はそう言うと店から出ようとする。もう恥ずかしくていられないわ。


お会計を済ましていると彼らの会話が聴こえてくる。



 ベガジラ: 「あら〜、押しかけ女房〜?」


 アグル: 「ちち、違いますよ。お世話になった人の弟子みたいです」


 リザトル: 「なかなかカワイイ子じゃないか〜」


 アグル: 「かか、関係ないし〜」


 ベガジラ: 「あら〜、カワイイのは認めるのね〜」


 アゴン: 「俺も応援するぜ〜」


テスリー叔母様の(押しかけ妻になちゃえ)という言葉が脳裏に浮かぶ。


顔が真っ赤になっているのがわかる。


恥ずかしすぎる、どうしてこんなことになっちゃたんだろう。


もうヤダーーー。

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