三十分の痛み

 その日の朝から私はベッドの上でのたうち回っていた。大して寝心地も良くなさそうだが、もう十年使っているから仕方ない。ネコのぬいぐるみを抱きしめながら、私は苦しさのあまり何度も寝返りを打った。




 生理というのは曲者で、血が身体から出ていくだけではない。お腹が痛くなるし、食欲もなくなる。酷くなると、痛みが大部分を占めて動くことさえままならなくなるし、好きなことが出来なくなる。だから生理は大嫌いだ。




 いざ起き上がると目眩がして、目の前がぼんやりと映る。トイレに行きたいのに動けないのだ。何とか一歩一歩足を動かし、私は階下にあるトイレへと向かった。




 ナプキンを取り替えた後、私は深い眠りについた。二時間くらいのものだが、それでも頭をスッキリさせるには充分なものだった。お腹が痛いのは変わらない。




 目覚まし時計を見ると九時半になっている。もう少しで講義が始まる時間だ。お腹の痛みに耐えながら、私はスマホに手を伸ばした。

「あの……、もしもし……!」




 電話を切った後、私はまた寝込むことになった。母はもうパートに行っていていない。お腹が空いたということもあり、私は再び一階へ下りた。




 リビングに行くと、棚の上にある頭痛薬が目に入った。生理痛が本当に辛かった時以外飲んではいけない、と母が言ったのを思い出すが、私は構わず飲む。ペットボトルのお茶をプラスチックのコップに注ぎ、一緒に飲んだ。こうすれば三十分後に効くのだそうだ。




 たった三十分。されど三十分。私には耐えられるかというと、痛みを誤魔化すしか出来なかった。電子レンジでスープを温め、お茶を飲みながらゆっくりテレビを見る。温まったスープをちびちびとスプーンで掬いながら漸く食べられるような痛みだった。





 スープは赤く、その中にキャベツやジャガイモが沈んでいた。レトルトだから柔らかいが、食欲がない時は却ってソレが助かった。一時限目の講義には休みの連絡をしたから、お昼まで好きに過ごせるものの、やはりお腹の痛みは消えない。




 こんな日は珍しかった。スマホのゲームに手を伸ばす気にもなれない。自室に戻ってまた布団に包まる。お腹の痛みだけではない、頭がボーっとするのだ。だが、変わらずお腹の痛みが大部分を占めている。早く楽になりたかった。そう思うと自然に涙が出てきた。





 ベッドの中に入って三十分後、また私は深い眠りについた。だが、不思議とお腹は痛くない。身体の怠さが私を眠りの世界へと誘ってくれるようだ。このまま夕方まで寝てしまおうか。


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