給食

 僕が通っていた小学校の給食は美味しいことで有名だった。その上、地域でとれた野菜や果物を使っていると評判だった。特に美味しかったのは、味噌汁の豆腐やカレーのにんじんやじゃがいもだ。元からカレーや味噌汁は好きだったけれど、コレがあるから更に好きになった。デザートのゼリーや揚げパンも僕は好きだった。コレはみんな好きだろうとも思うが。少なくとも、その日休みの人が出た時、ゼリーや揚げパンが余ったとくれば争奪戦になったから。シャーベットの日や、ケーキの日もあったが、プリンの日はなかったような気がする。





 牛乳ビンを運ぶのは大変だった。空のビンだけでも重いのに、中身がまだ入っているビンは更に重くて持つというのが嫌だった。バラエティ番組の罰ゲームでもこんなことはしないのではないだろうか、というくらいには嫌だった。

「重い〜!」

と言った時は、

「笹木、男だろ?しっかり運べ」

と先生に叱られたことさえあった。女子にはそんなことをしないので、この時ばかりは心底女子が羨ましいと思った。運んだ後の牛乳はあまり美味しかった記憶がない。そもそも牛乳が嫌いな子もいて、そういう子にさえ先生は、

「牛乳を飲まないと大きくなれないぞ」

と言って半ば無理矢理飲ませていた。




 嫌いな食べ物の代表であるピーマンは、僕から見たらそこまででもなかった。こんなものが食べられないなんて子供だな、とさえ思えるくらいには。クラスで一人はピーマンを必ず残す子がいて、その子の分だけわざとピーマンを減らしてあげたことも一度や二度ではない。にんじんが嫌いな子もいたが、僕はそれも大丈夫だった。寧ろ僕が嫌いなものはキャベツとかなり変わっていたのではないだろうか。レタスやきゅうりは寧ろ好きな部類だから、余計に不思議がられた。ちなみに肉や魚が嫌いな子もいたが、その子は別に助けを借りずともギリギリで食べられていたらしい。




 インターネットで調べたところ、特別な日に特別な給食が出るという学校があるらしい。名誉市民の命日というなんだか凄い日に、その人ゆかりの食事が出てくるという噂さえある。また、今は昔と違って意外とお残しは許されるし、給食自体にバリエーションが増えているらしい。ちなみに僕が食べていたソフト麺はもうなくなってしまったとのことらしくて、少し寂しさを感じた。




 東京のどこかには昔ながらの給食が食べられる居酒屋があるらしい。僕は酒こそ飲めないが、そうしたお店にいつか行ってみたいと思っている。


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