古本屋Ⅱ

 図鑑がぎっしり収められている本棚の中から、『世界の食べ物』の図鑑を取り出してみた。背表紙の出版社は児童向け教材や様々な雑誌で有名な会社だ。表紙には大きくインドカレーの絵が描かれ、その周りには比較的ケーキ屋などで目にするようなイチゴのタルトやシーザーサラダといったものが描かれている。赤い、ポップともゴシックとも付かぬCGくさいフォントで、『世界の食べ物』とタイトルが書かれていた。




 扉を飛ばし、まずは目次のページから見ていくことにした。なるほど、カテゴリ別に分かれている。レストランのメニュー冊子のように、サラダやスープが最初の方に来ている。メインディッシュや、パンやご飯といった主食は真ん中の辺りに、デザートや調味料といったものは最後の方にある。そして、僕はページ数を見て驚いた。何と、この図鑑だけでも五百ページ以上あるのだ。巻末の付録ページを含めても、恐らく六百ページいきそうなこのボリュームは、世界に食べ物の種類がそれ程多いことを表している。その上、調味料のページまである。子供が見るにはいいだろう。が、明らかにページ数が多過ぎる。




 まずは前菜としてサラダのページを覗いてみる。シーザーサラダやタマゴサラダなどがあり、雰囲気としては良く言えば家庭的。温野菜サラダなどもある。悪く言えば普通だ。ミニコラムには、サラダ別に合うドレッシングが書いてあるなど、大人が見ても楽しめるものがある。次に、スープのページを見てみると、これもまだ普通だ、と言い切れる。ヴィシソワーズや澄んだコンソメスープに混じって、何故か味噌汁が書いてあるが。インドの野菜スープや、豆乳を使った白身魚のスープ、ポトフやクラムチャウダーといったスープの写真が、簡単な説明付きで載せられている。目立ったミニコラムは『ヴィシソワーズの成り立ちについて』。こんなコラムがある辺り、この図鑑はかなり本格的な気がする。




 ここまではまだ普通の図鑑だが、サイドメニューとしてフライドポテトのページがあるので覗いてみた。『世界のフライドポテト事情』というのまである。ベルギーではマヨネーズをかけて食べるのが一般的らしい。





 所謂飯テロというやつだろうか。読んでいるうちに何故かお腹が空いてきてしまった。サラダやスープだけでも魅力的な写真が沢山載っている。子供の知的好奇心を刺激するにはもってこいな一冊だ、と次のページをめくるまでは思っていた。




「ん?何だこりゃ……」

子供向けの図鑑にこんなもの入れるなよ!と僕は思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る