愛
アイスの入った袋を片手に、軽い足取りでこはくの家に向かう。
私の幼馴染であり、この世界で一番大切な人。
少し前に姿が変わってしまったけれど、私の気持ちは変わらない。
ううん。こはくが好きなのは変わらないけど、その気持ちは少し変化した。
こはくが男だった時は、対等な立場で結ばれて愛し合って、こはくに求められたかった。
だけど今は違う。今のこはくは、非力で背が低くて、精神も少し不安定で、人に頼らないと生きていけない。
大人になった私と、か弱い少女になってしまったこはく。その小さな体を私の愛で満たしてあげたい。
力がないから、私の思い通りにできる。
心が弱った時は、私が寄り添ってあげる。
こはくは、私が養ってあげる。
だからこはくは、私だけを見て、私だけに甘えて、私に依存すればいい。
こはくを一番愛してるのは、私なんだから。
私がイタズラをするのもそう。
こはくにイタズラをすれば、他の人には見せない表情をしてくれる。
私だけのこはく。それがとても嬉しくて、つい何度もイタズラを仕掛けてしまう。
でも、好きな子にはイジワルしちゃうって言うし。これも仕方ないよね。
・・・たまにやりすぎちゃうのは、反省しないと。
いっその事、こはくを閉じ込めちゃおうかな。
首輪を着けて、こはくの好きな物で満たした部屋で飼うの。
ご飯も着替えもお風呂も、全部全部全部全部、私がお世話してあげる。
そうすれば、こはくの全部を独占できる。
夜になったらベッドに縛り付けて、メスネコだって事を骨の髄までわからせる。
グチャグチャになるまで責め立てて、こはくが自分のことをメスネコだって認めたら、優しく溶かしてあげる。
後先考えない生意気なこはくも見たいし、甘ったるく媚びるこはくも見たい。
私はどんなこはくだって、余すところなく愛してあげる。
まだ私にこはくを養える財力はないけど、一緒に暮らせるように頑張るから。
その夢のために、時間をかけて外堀だって埋めてきた。
私のお父さんもお母さんは、こはくとの仲を応援してくれてるし、こはくの両親だって明らかに私の好意に気づいて、色々と気を利かせてくれる。
私の愛に気づいていない朴念仁は、ただ一人。
それ以外の人は、全員私の愛を応援してくれている。
こはくは恋愛に興味がないみたいだけど、私が教えてあげる。そして、こはくのハジメテは全部私が貰うの。
そのためだったら、私は何でもする。何だってしてあげる。
それなのに私がいくら誘惑しても、こはくが手を出してくれたことはない。
奥手・・・と言うよりも、ただ単に度胸がない。
向けられた好意に気づかず、据え膳だって手を付けない。
自分のことながら、随分難儀な人を好きになったな、なんて苦笑する。
道すがらこはくの事を想っていたら、早くこはくに逢いたくなってきた。
「・・・今行くからね、こはく」
早くこはくの声が聞きたい。早くこはくの姿が見たい。早くこはくに触れたい。早くこはくを私の物にしたい。
駆け出しそうになる足を窘めて、至って平静を装い、大切な幼馴染の元へと向かう。
30日後にデビューするTS猫耳Vtuber 黒寝 こはく @AmberK
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