のあちゃんのわすれもの
久遠 実咲
第1話
のあちゃんは、魔法使い見習いのわすれんぼの
女の子です。お母さんによく叱られています。あるふゆの日、ノアちゃんは大きな忘れ物をしてお母さんと大喧嘩をしてしまいました。
「もう知らない!!お母さんなんか大嫌い!」
そう言ってしまったのです。
寒くて、悲しくって泣きながらトボトボと歩きました。ところが、よそ見をしながら歩いていたせいでしょうか男の人にぶつかってしまいます。
「わっ、ごめんなさい。」
「だいじょうぶかい?ケガはない?」
ノアちゃんが謝ると、男の人は心配そうに尋ねました。その声にノアちゃんはなぜかすこぐ懐かしくなりました。
「だいじょうぶ。」
ノアちゃんの震えた声を聞いて、男の人はこう言います。
「寒いだろう。よかったら僕の店へおいで」
ノアちゃんは思わず頷いてしまいました。
お店の中に入ると、とても懐かしい匂いがしました。ノアちゃんのだいすきなショートケーキとココアがお盆に置いてあります。他にもお店の中にはぬいぐるみ、小さい時に読んでもらった絵本、かわいいヘアピンなどがありました。どうしてかわかりません。なぜかノアちゃんは涙が出そうになりながら、男の人に聞きました。
「あなたは、だあれ?なんで私のことをこんなにも知ってるの?」
それはね、と男の人は言ってロケットペンダントを取り出して開きました。ノアちゃんの思い出が蘇ります。中の写真に写っていたのは,ノアちゃんが誰よりもだいすきだった死んでしまった、お兄ちゃんだったのです。ノアちゃんの目から涙が溢れます。男の人はお面をとり、ゆれる声でこう言いました。
「大きくなったな、"ノア"」
ノアちゃんは堪らず抱きつき、わんわんと泣きました。
「おにいちゃ、おにいちゃーん!」
ノアちゃんは泣いて泣いて落ち着いた後、少し赤くなった顔で言いました。
「忘れててごめんなさい!もう絶対忘れないから!」
お兄ちゃんは泣きそうな顔でくしゃっと笑ってこう言います。
「ありがとな、ノア。またな」
お兄ちゃんは、ノアちゃんの首にロケットペンダントをかけて、静かに消えていきました。
ノアちゃんはだんだんと眠くなっていき、パタリとその場に倒れ込んでしまいます。
「ノア!ノア!」そう言ってノアちゃんを呼ぶお母さんの声がします。
「おかあ、さん?」
ノアちゃんは目をあけ、お母さんが泣いていることに気が付きます。
「泣かないで。あのね、おかあさん!わたしね、思い出したの!お兄ちゃんのこと。」
そういうノアちゃんを見て堪らず、お母さんはノアちゃんを抱きしめてこう言いました。
「ノア、あなたが生きててくれて本当によかった!」
これからはおにいちゃんのはなし、たくさんしようね!そう言って二人は指切りをして。雪の降る静かな街に帰って行ったのでした。
のあちゃんのわすれもの 久遠 実咲 @kuonmisaki17
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