第14話 不審と駆け引きの調査
或島、戦闘跡___
「…宮野二尉!やはり灯台は完全に壊されています!」
「第3ヘリは現在島の反対側で調査中!」
「よし、日没まであと3時間もない!急ぐぞ!」
昼前に行われた超巨大異生物とRー1の戦闘後、戦闘参加できなかったヘリコプター部隊の一部は現在戦闘の痕跡の調査をしていた。本来この部隊には不向きな仕事だが、中央本部から初期調査だけでもするべきとのお達しが出せれていた。これはできる限り
「しかし、なぜこんな僻地に…」
ヘリコプター部隊観測員兼臨時調査隊第一般班長の宮野二尉は周りを見渡した。本土から遠く離れ存在すら知られてないこの島で、なぜ超大型が出てきたのかが謎だった。
(…今までは市街地か、その付近に出ることが多かったが…いや待てよ、シーレーンは…)
この島の近くは暗礁が多く、船の航路を変更させる目的で灯台ができた。近年は衛星通信が発達したとはいえ、やはり灯台の役目は大きかった。
(そう考えると、ここを破壊するのはある程度理にかなっている…いや、異生物は理解しているということか?まさか…)
「宮野班長!」
考えていると、宮野のもとに戦闘跡を写真で記録していた隊員が近づいてきた。
「どうした?」
「すこしこちらへ…」
そう隊員に先導されて着いていくと、そこは異生物の頭が切り落とされた位置だった。
「…これを」
そう指で隊員が示した先に、異様なものがあった。
サイズは10センチメートルほど。青銅器のような見た目。ところどころひび割れができていたが、それは…
「…首だと…」
第五号超巨大異生物の頭部にそっくりだった。
「…撮影は?」
「出来ています」
「これは参考物として本部に持ち帰る…念のため副長以外に話すな…」
宮野はそれを偶然とは思わず、すぐに回収することにした…
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防衛隊第二資材課倉庫
「向井、報告を」
「結論から言うと、某国の潜水艦が極秘で太平洋上に展開していた」
室内で紙の資料をもった向井は大山田にそう告げた(*1)。
「…何を持って?」
「まだ裏付けは取れていないが、君の想像通りだ」
大山田は顔を青くした。
「…馬鹿げている!!奴らは我が国を何だと思っているんだ!!」
「どうせチョッカイかけても弱腰批判してくると思ったのだろう」
大山田はすぐに冷静さを取り戻すと、向井に聞いてきた。
「どこからの情報だ?」
潜水艦は現代でも各国の切り札といってもいい。その任務や居場所などは当然極秘のハズだが…
向井は苦虫を苦虫をかみつぶしながら言った。
「…匿名希望のハッカーだとよ」
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都内某所某ビル秘密通信室___
『これで牽制にはなるでしょう』
「わざわざありがとうございます」
チャールズは通信の向こう側の相手に感謝していた。
某国が戦略原潜を太平洋に展開している__その情報を流したのは、この雇い主だからだ。
「しかし、どこまで効くでしょうか?」
『まぁ、数日でしょう』
そう男は答える。
『どうせお互い外交筋で認識していたことでしょう。防衛隊には知らせずに』
「今の政権が防衛隊を頼りきれないと?」
『誰だって保険はあるだけ確保したいんですよ、それが正しくないとしても、ね』
そう笑いながらいう相手にチャールズは呆れる。本当に性格が悪いと。
このタレコミが起こすのは一時的な混乱では済まない。知らされていなかった双方の政府関係者も疑信を持つだろう。とくにいま政権支持率が低下中の日本内閣には大きな痛手となる。恐らく交渉も増えるだろうことを予想してあえてタレコミした雇い主の神経に、チャールズは恐怖していた。
(…下手したら日本での商売もできなくなるだろうに…)
気を取り直してチャールズは連絡を続ける。
「…このタイミングで私の調査を済ませろと」
『現状ほかの機関は別方向にシフトしていってます、私たち同様第一号異生物付近にいまだ注目しているのは大手ではいません』
「…或島のほうも期待できません。いや、それ以上に危険でしょう」
今回の調査も空振りに終わり、空しい結果になる。だが愚かな同業者がそれでも群がるとチャールズは予想していた。国際情勢はそれほどまでに、危険な変化をしているのだから。
「……現在候補者達に張り付く準備中です」
『期待していますよ』
そういうと、通信が切れる音がする。チャールズは一息ついて思考する。
(…ボブ達に回収させた映像の中で、不審だったのは6名。オンブラが言っていたミズキ・コイワイは…)
オンブラが接触していた二人組の片割れ。会場の中で一番緊張を押し殺して周囲を警戒していた少女。
(…経歴に妙な点はない。どこぞの組織に関わっているような形跡もない。だが…何かが引っかかる…)
チャールズはそう思案しながら、ボブに拷問用の道具を用意させる連絡を入れておくことにした。
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…気づいたら、蓮の膝の上で寝ていた。
蓮は左手で私の頭をなでながら、右手で何かスケッチをしていた。
…そのシャープペンとメモ帳わたしのなんだけどなぁ。
「…おはよう、みずき」
「…お、おはよう」
わたしは起き上がって、蓮の手元を見る。そこに書かれていたのは、機械的なパーツで組み合わされた腕…今のわたしの左腕だった。
「…蓮、その」
「正座」
「…はい?」
「正座」
蓮は昨日とは違い、笑顔で圧を出していた。なんだろう、こういう時の蓮には逆らえそうにない。
わたしはおとなしく正座して、蓮と向き合った。
「…さて、みずき。つらいだろうけど質問に答えて」
「…わかった」
「一応聞くけど、元からそんな腕じゃなったよね?」
「…さっき戦闘から戻ったらこうなってた」
そういいながら左腕を見る。不気味なぐらい綺麗な腕が、やっぱり現実なんだと脳に訴えてくる。
「わたしもスーパーのテレビで見てたよ。左腕溶けていたよね?」
「…めちゃくちゃ痛かった」
「うーん、その痛み今は?」
「ない」
そういえば、戻ってから感覚から痛みがなくなっていたことを思い出した。本当にどうなっているのだろう?
「その腕、動くよね?」
そう聞かれて私は普段の感覚で左腕を動かしてみる。手を握っては広げ、手首を回転させ、肩を回す。すると少しづつだが異音が減っていく。
「…
「そうみたい」
やがてきしむ音は完全にしなくなった。
「…じゃあ次は、触覚見てみまーす」
そう言うと、蓮は二の腕のところをやさしく触り始めた。
「みずきここが弱点だったよねー」
…そう、この辺りを触られると、くすぐったくなって笑ってしまう変な癖があった。だがそれも今は…
(…ん?)
触覚などなさそうな機械の腕。最初のうちは蓮の指の感覚はなかったが、やがてそれが刺激として脳に繋がる。少しづつ元の腕のように感じ始める___
(…でも蓮の手、こんなに熱かったっけ?いや、わたしのが冷たいのか)
徐々に腕の触覚がわかってきた…が、同時にくすぐったくなってきた。そうしているうちに蓮は手首の関節パーツを指でたたいた。
「…感覚ある?」
「…ある」
本当にどういう原理になっているのだろう?いや、そもそも負傷して機械の腕になるということ自体が妙なのだが…
その後もしばらく蓮による触診は続くのだった。
…ところで、なんで口元笑ってるの?
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(*1)潜水艦はその任務を極秘扱いにしているのが常なので、ここの担当
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後書き
今更ですが、この小説は100%作者の趣味で書かれています。
灼熱戦闘ミニステ―ル ~ロボに変身するなんて聞いてない!~ 冬月 蝋梅 @tougetu
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