視点切り替えについて

 前書き


 猫海士ゲル様 レビューありがとうございます。

 はい、カクヨムはマジで凄ぇですよ! 他サイトへの移籍を考えているのなら、一度立ち止まり、並列投稿するのが良いかと思います。捨ててしまうのはあまりにも惜しい! 勝って錦を飾るとは良い言葉ですね。是非、一緒に飾りましょう!


 あ、そういえば私の故郷は小説家になろうでした。



 緑畑晶様からもレビューを頂きました。ありがとうございます。


 すべての物書きの苦労を代弁しつつ、うまい例え話で評して頂けました。しかも、このテーマだけでエッセイが一作品書けてしまいそうなほど、濃密な内容となっています。レビュー欄に一作品分の価値が付加された、と考えると、このエッセイの価値もその分だけ高まったのではないでしょうか。

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 今回は、視点切り替えについてです。


 視点切り替えとは?

 一人称視点の場合は、視点主=語り部が変わるをことを指し、三人称(一元視点)の場合は、視点先(憑依対象)が変わることを指します。


 視点の切り替えは場面シーンが切り替わるところで行われます。シーンの切り替えを挟まずに、視点を切り替えることは絶対にやってはいけません。何が書いてあるのかわからなくなり、読者が混乱します。(三人称・神視点(多元視点)がこれに近いですが、これらはあくまで一人称視点及び、三人称(一元視点)の話です)


 シーンの切り替えは、空行で表現されます。文庫本の場合は、二行ほど空白のスペースがあったら、シーンの切り替えかな? と読者は思います。

 WEBの場合は改行が多用されるため、シーンの切り替えがわかりにくくなります。ですので、多くの方がシーン切り替え時に記号を用いています。


 私の場合は、空白三行をあけた上で「◇◇◇◇◇」という記号で区切っています。




 ◇◇◇◇◇


 丁度、こんな風に。この行からが新しいシーンの開始となります。

 そして視点切り替えを挟むなら、このタイミングです。

 その他にも、1話、2話という話の区切りもシーン切り替えに相当します。


 さて、一人称視点の小説では、視点切り替えを多用できないことをご存知でしょうか。なぜなら、地の文では「私」や「俺」と表記されるため、視点が切り替わった直後は、誰の視点かわからず、読者にストレスを与えてしまうからです。


 ですので、物語の都合上、視点切り替えを多用する場合は、三人称視点を用いるのが一般的です。そして小説の作法からすると、一人称と三人称を混在して書くことはご法度とされているため、一度、三人称視点と決めた場合は、一人称視点を使うことはできません。


 ただし、何事にも例外はあります。


 私は学生の頃、角川ホラー文庫を読み漁っていましたが、文芸レベルのプロでさえ、三人称視点の地の文の中で、突然、一人称が挟まることがありました。(空白一行挟んで一人称に切り替わる感じです)


「あれ? これ一人称の小説だったっけ?」


 と、ページを戻し確認したほどでした。


 また、ライトノベルでも、かの有名なソー〇アート・オンラインは、主人公視点の時は一人称、他の登場人物は三人称と使い分けているそうです。ラノベのトップがこの方式を採用している以上、文句をつけられる人はなかなかいないと思います。


 ただ気を付けてほしいのは、この方式を取っているのは、あくまで実力のあるプロだということです。私たち素人が下手に真似をすれば火傷では済まないかもしれません。なんの脈絡もなく一人称から三人称に変われば、それは読者に違和感を与える結果となり、強烈なブラバポイントへ早変わりしてしまうでしょう。


 ですので、ブラウザバックを防ぐという観点から見ても、一度決めた人称は変更しないほうが良さそうです。


 さて。


 視点切り替えに弱点のある一人称視点ですが、語り部である主人公に感情移入しやすいという明確なメリットが存在します。主人公の心の動きを読者がそのままトレースするので、シンクロしやすいのです。


 また物語を追う時に、人は二つのタイプに分かれるそうです。


 ①自分と主人公を重ねて同一視するタイプの人。

 ②少し距離を置いて主人公を応援するタイプの人。


 特に①の人の場合、一人称視点への感情移入はより大きなものとなるでしょう。


 ただし、主人公が自分とかけ離れている、もしくは、性格に難がある場合、嫌悪感が先に浮かんでしまい逆効果となる場合があります。多くのラノベで、主人公が標準的な容姿、能力、無難な性格に設定されているのは、同一視を妨げないようにするための配慮なのかもしれません。


 そして。


 初心者が一番書きやすいのは一人称視点だと言われています。自分を主人公に置き換えて、自分の思考をそのまま地の文に記述していけば完成するからです。しかも感情移入してもらいやすいという強烈なバフ付きです。初心者の内は視点切り替えを多用することもないでしょうから、一番のデメリットはないようなもの。


 私は「龍人族の公主様」を三人称(一元視点)で書いてきましたが、短編が失敗したことを受け、一人称視点に変更するべきか悩みました。かなり本気で悩みました。読者を感情移入させ、離脱率を減らしたいと思ったからです。


 そこで、一人称変更後の文章を頭の中でイメージしながら作品を最初から追うという作業を行いました。すると、どうしても都合の悪いシーンがいくつか出てきてしまったのです。それは主に視点切り替え時に発生します。


 さきほども申しましたが、一人称視点での視点切り替えは多用しない方が良いです。それは誰の視点かわからなくなる、というのも一因なのですが。加えて、読者の感情移入を妨げてしまうからです。


 一人称視点のメリットは、読者が主人公に感情移入しやすくなるという点にこそあります。しかし、視点切り替えを挟んでしまうと、その瞬間、主人公と読者のシンクロが解けてしまい、感情移入が阻害されてしまうのです。


 私はストーリー構成的に、主人公視点、ヒロイン視点、学園長視点の三つを用意しました。しかし、一人称視点でこの三つを回すのはどうしても辛い。

 しかも一人称視点にした場合、ヒロインの心の中までがフルオープンされてしまうので、それがまた嫌でした。


 そこで主人公以外は三人称とする案も検討しましたが、読者に違和感を与えてしまいそうなのでやめておきました。


 最終的に一人称視点は諦め、三人称(一元視点)のまま、限りなく一人称視点に近い形で書くことにしました。視点が主人公に近いほうが感情移入して貰いやすいと思ったからです。


 しかし、なかなかうまくいきません。これも駄目でした。


 というのも。


 私はナチュラルに三人称(一元視点)を書くと、背後霊が一歩後ろに付き従うぐらいの距離感となります。心の中は見えるけど、全部は見えない。主人公が知りえないことも地の文に記述する。そんな距離感です。


 そしてこれは、私の中でのイメージの話ですが、背後霊が近づくと一人称視点に近くなり、背後霊が遠ざかると三人称・神視点(客観型)に近くなります。背後霊が遠ざかると心の声が聞こえなくなり、場全体が見えるイメージですね。


 というわけで、背後霊を主人公に近づけるイメージで書こうとしたのですが、これがどうもうまくいかない。油断すると、すぐに離れてしまいます。


 いやぁ困りました。背後霊(カメラ)の距離が近づいたり離れたり。要するに視点がブレてしまう。(小説を読みなれた人なら違和感を覚えるでしょう)


 何度も書き直せば、それなりに近くはなるんですけど、しかし全ての話で実行するのは難しい。


 そこで私は、処女作が一人称視点だったことを思い出し、どんな風に書いていたのか見返してみることにしました。すると、これは私もすっかり忘れていたことなのですが、第一章は一人称視点で書かれており、第二章は三人称(一元視点)で書かれていました。


 そして私の処女作は、第一章完結(一人称視点)時点で、


 ブクマ7!


 第二章完結(三人称・一元視点)時点で、


 ブクマ108!


 オーケー! 結論が出ました。

 どうやら私は、一人称視点がめちゃくちゃ苦手なようです。

 だから背後霊をくっつけようとすると嫌がって離れてしまう。

 第二章でリカバリーできたのは、もしかすると三人称(一元視点)の方が向いていたからなのかもしれません。


 誰だぁ? 一人称視点が初心者向きなんて言ったやつはぁ?

 はい、すみません。私でした。


 さきほど私は「物語を追う時に、人は二つのタイプに分かれる」と言いました。そして私は後者の「②少し距離を置いて主人公を応援するタイプ」に該当します。これって三人称(一元視点)の見方と同じなんですよね。


 もしかすると、①主人公と自分を同一視するタイプの人は、一人称視点を書くことが得意だったりしませんかね。私も小さい頃は、テレビアニメのヒーローと自分を同一視して楽しんでいたはずなのですが。いつの間にか、距離を置いて楽しむようになってしまったようです。













 最後に一つ告白します。

 実は、現在書いている新作の一部にシーンの切り替えを挟まずに、一人称をぶちこんだ箇所があります。さすがに序盤にぶちこむ愚は犯していませんが、ブラバポイントとなりそうで今から心配です。


 なにはともあれ。


 読者を主人公に感情移入させるような心理描写が書けるようになりたいものです。

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