序盤平坦すぎる問題

「テンプレ展開を使うべきなのか?」において、「龍人族の公主様」の改善点を洗い出し、改善する流れを書いてきました。


 そして三つあげた問題点の中に、「説明過多」というものがありました。

 今回は、この説明過多を改善しようとした時に発生した、別の問題について語りたいと思います。


 説明過多とは要するに、設定の説明や状況の説明で地の文がパンパンに詰まっている状態のことを指します。読者が興味あるのはストーリーの方なので、特に序盤でこれをやってしまうと読者が逃げ出してしまいます。もちろん、文章力があってぐいぐい引き込める人は別ですよ。

(※ファンタジージャンルの話です)


 私はまず、直近の物語に関わらない不要な説明を削除しました。文量は大きく減りましたが、残った説明は消すことのできない必須な内容でした。しかし、まだまだ説明過多な感があります。そこで私は、話数を追加し、説明を分散させることでその濃度を薄めることにしました。


 地の文でガツンと説明するのではなく、物語に沿って説明するように努めました。追加するシーンは、書きたいシーンではなく、状況説明に都合の良いシーンです。


 できる限り以下のことを意識しました。

 ・主人公のアクションに対して、説明を入れるようにする。

 ・会話文で説明を入れる(がっつり説明するのではなく、ふわっと匂わす程度)

 ・シーン切り替えの冒頭で、情景描写と一緒に説明する。

 ・説明は2話以降。物語に引き込みたい1話では、説明はほぼなし。


 しかし、ここで一つ、大きな問題にぶち当たりました。

 それは物語が平坦になってしまうという問題です。


 どういうことかと言いますと、説明に都合の良いシーンから逆算して割り振っているので、それをそのまま書いてしまうと、起伏のない無味乾燥むみかんそうな話となってしまうのです。これは致命傷となりえます。


 WEB小説は、最初の一話で読者の興味を引き、その上で、三話までに主人公の見せ場を用意する必要があるといわれています。そうしなければ、読者はブラウザバックして帰ってしまうからです。どんなに遅くとも五話まで。ここがデッドラインのようです。


 別の言い方をすれば、「読者を退屈させるな」ということなのでしょう。面白いかどうかもわからない素人が書いた小説に長々と付き合っていられない。だから後で面白くなるは通用しない。と、こんな感じでしょうか。

(だから公募で賞を取るような、伏線を張り巡らせてあとで回収するタイプの小説は、WEBでは相性が悪いのだと思います)


 事実、テンプレの多くが序盤の3話~5話までほぼ同じ展開なのは、この壁を突破するためだと思われます。


 古典的な、なろう転生のテンプレでいえば。

 第1話:チートを授かり転生

 第2話:能力の確認(ここで読者に期待を抱かせます)

 第3話:魔物やチンピラなどを相手にチートの試し打ち

 第4話:冒険者ギルドの門を叩く


 こんな感じになりますかね。赤ちゃんスタートとか、勇者召喚とか、テンプレパターンは多肢に渡りますが、スタンダードなものを選びました。


 どうでしょうか。スピーディに話が進んでいるのが伝わるでしょうか。第2話でチートの説明をし、読者に期待を抱かせ、その期待を第3話で満たしてあげる。この流れによって、満足した読者は次を読もうという気になるのではないでしょうか。


 私は第1話こそテンプレを参考にしましたが、第2話以降を参考にする気はありませんでした。なぜなら、すでに中盤以降のストーリーは組み上がっており、下手に主人公を活躍させてしまうと、物語の根幹が揺らぎ、展開が破綻してしまうからです。しかも説明のためのシーンですから、テンプレがうまくハマるとも思えません。


 ならばどうするか?

 自力でどうにかするしかありません。


 できるだけ王道要素を取り入れるように意識しながら、テコ入れしていきます。


 私の中での王道要素を意識したせいか、WEB小説というよりかは、昔のラノベの学園ものの展開に近くなった気がします。


 そして完成した各話の内容を簡単に記すと、以下のようになります。


 第1話:無能の烙印を押され、メインヒロインに励まされて、立ち直るきっかけを得ます。そして別れ。(テンプレを検討するで作ったキメラテンプレ部分です)

 なお、主人公とメインヒロインは同じ学園に通っていますが、クラスが違うため、普段会うことはありません。再会は三ヵ月後の一学期終了時になります。


 第2話:気弱だった主人公が精神的に強くなったことを簡潔に描写。そして一学期終了時点へワープ。主人公の成績表を見せることで剣術の成績がトップクラスであることを読者へアピールする。もう一人のヒロインを登場させ、その会話の中に読者が期待してくれそうな設定をちょこちょこ入れる。話の引きでメインヒロインとの再会を匂わせます。


 第3話:メインヒロインと再会。名前も知らなかった彼女が公主様であることを知ります。公主様は主人公のことをちゃんと覚えていて、親しげに会話します。周囲からは「落ちこぼれがどうして公主様と?」と妬まれることに。最後に噛ませ犬てきな成績上位者をぶつけて主人公を持ち上げます。


 第4話:学園長視点で教師たちとの会話。会話の中で主人公が学生の身分でありながら、剣術の境地にあることが明示されます。この時点で専門用語がいくつか会話の中に出てきますが説明はせず。場面変わって主人公の視点になってから、主人公の疑問に答える形でヒロインが説明してくれます。


 以上となります。



 ●第2話を書く上で問題となった点。


 物語の構成上、少なくとも一ヵ月は時間を飛ばす必要がありました。入学から順番に進めるルートも検討したのですが、後の展開を考えるとどうしても無理だという結論に至りました。おそらく、順番にイベントを進めていった方が、読者は感情移入しやすいと思います。



 では、工夫した点を説明したいと思います。


 ●第2話の工夫した点。


 工夫した点①

 時間を飛ばす必要があったので、飛ばす先は一学期終了時点としました。


 読者の期待は「主人公がどのように成り上がっていくか」にあるでしょうから、その実力の片鱗を見せるという意味で、成績表を開示し「剣術の成績」が抜きんでていることを描写しました。実はこれって一石二鳥で、学園の説明も一緒にすることができるのです。主人公がどのようにすごいのか、説明する必要がありますからね。


 工夫した点②

 メインヒロイン不在の場つなぎも兼ねつつ、友人ポジションのヒロインを登場させ、物語のキーとなる設定を会話の中にぶちこみました。(これはハーレムを彷彿とさせる設定なので、タイトルに惹かれてやってきた男性読者になら、興味を持って貰えるものと信じています)


 工夫した点③

 物語の引きでメインヒロインとの再会を匂わせ、次話へ興味を持ってもらえるよう誘導しました。(読者の興味はメインヒロインにもあると思うので)


「公主様がね。下院の敷地に来てるんだって!」


 ……

 …………

 ………………


 という感じです。

 追加したのは第1~4話ですが、他の話については、長くなってしまったので詳細はやめておきます。ただ第2話同様に、私なりに工夫はしたつもりです。


 基本方針としては、読者の感情移入先である主人公をちょこちょこ持ち上げることで、読者の期待感を高めるよう意識しました。


 また、ハーレム展開を期待する男性読者には、ヒロインをコレクション的に楽しむ願望があるため、その代表格であるメインヒロインの価値を高めるよう描写し、この子と結ばれるのかなという期待感を煽る方向に持っていけるよう意識しました。


 意図したとおりに機能しているのかどうかは、わかりませんが。

 結果は実際に投稿してみれば、数日中にPVという形で現れるでしょう。わかった時には手遅れですが。


 ……

 …………

 ………………


 という記事を書いてから、再び推敲してみたところ無駄な説明を発見することができました。曖昧だった思考をまとめ、文章に起こすことで問題点がより鮮明となり、新たな視点で見られるようになったのかもしれません。


 それでは今回はこの辺で。

 ではでは。

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