タイトルとあらすじは作品の看板である

 読者の期待を裏切らないためにも、タイトルとあらすじは重要だという話を前回はしました。


 そしてタイトルとあらすじは小説の看板となる最も重要な部分。ここで勝負が決まるといっても過言ではない、最重要項目です。

 特に、無料で読めるWEB小説では、氾濫するように大量の小説が並んでいますから、読者の興味はすぐに移り変わってしまい、目に留めてもらうことさえ困難です。ゆえに「タイトルとあらすじで勝負が決まる」とまでいわれるのです。


 ですが、私は愚かにも、本文の方へ注力するあまり、今までタイトルとあらすじに時間を割いたことがありませんでした。

 いえ、それは正確な表現ではありませんね。正確には「自分的には十分な時間を割いて考えたつもりでいたが、足りていなかった」です。本文に割いた時間と比べたら、それは微々たるものだったのです。


 これはいけません。大問題です。


 ならば当然、きちんと時間をかけてタイトルを考えましょう、となりますよね。けれど、その前に、私には改善しなければならない問題がありました。


 それは、感性が一般的な読者(大衆)とズレているという問題。


 どういうことかといいますと、タイトルやあらすじに、煩悩を隠そうともしないフレーズを入れることに、私は強い忌避感きひかんをもってしまうのです。


 例えば、私はハーレムものの小説は好きですが、タイトルにハーレムと銘打っている小説は嫌いです。どうも煩悩を前面に出してこられると生理的な嫌悪が先にきてしまうようです。


 例えば、いじめられっこがクラス全員を見返すという王道的なストーリーは好きです。しかし、タイトルに「本当は有能な俺。そうとは知らずに今までいじめてきたクラスの連中が土下座して謝ってきた件について ~後悔したってもう遅い! 学園から全員追放してやりました~」などの軽薄な感じがするタイトルは嫌いです。ついでに長文タイトルも嫌いなので、合わせて数え役満となります。


 しかし、この感性は致命的だといえます。


 WEB小説において、タイトルは一番最初に目に留まる看板であり、そこへ読者の求める有効なフレーズを入れるのは、戦略上必要であり、これを忌避するというのは、ハンデを背負って戦うことと同義であるからです。


 また長文タイトルを毛嫌いするのも同様です。長文の中に有効なワードを複数入れることで、読者にアピールすることができますからね。しかも、多くの読者はそれを望んでおり、好んで長文タイトルを読みに行きます。

(これはファンタジージャンルの話です。硬派なジャンルで長文タイトルを使うと逆に浮いてしまう場合があります)


 そして、タイトルとあらすじから読者の期待を煽り、評価を入れてもらえるよう仕向けるには、これらの技術をうまく活用する必要がでてくると思うのです。


 つまり、長々と何を言いたいのかというと、プライドを捨てる時がきた……ということなのです。


 私は長らく長文タイトルをつけないという方針で活動してきました。煩悩を隠そうともしないあからさまな単語を使うことも避けてきました。ですが、私の実力では、簡素なタイトルでは通用しないとわかったのです。


 という訳で、この一ヵ月間。ずっとタイトルとあらすじを考えていました。何度もバージョンアップを重ねてきました。


 第二章まで書き終えていますから、そこまでのストーリーを踏襲する形で、男性読者に受けそうな要素をタイトルに盛り込むようにしました。


 数えてみたら、タイトルだけで16バージョンあります。


 当初のタイトルは「龍人族の公主様」でした。

 これがどう変わったのか? 最新バージョンはこちらです。


 Before

「龍人族の公主様」


 After

「全自動で成り上がり! 無能と呼ばれた少年は公主様の献身によって成り上がる ~覇権を取る? いいえ、平凡な暮らしを希望します。ところで、公主様? 勝手にハーレム作ろうとするのやめてもらっていいですか?~」


 あああああああああああああああ!


 ここにタイトルを貼り付けただけで、ぞわっと背筋が粟立ちました。


 長らく忌避してきたものを自作品にするというのは、なんと苦痛を伴うことか。

 しかし、こういう場でワンクッション挟まないと踏ん切りがつかないというのもあり、恥を承知でこの場で先行公開することにしたのです。


 正直、説明するのも億劫です。このままデリートしてしまいたい。というかこの記事の公開処理をしたくない。


 …………が、血反吐を吐きながら説明することとしましょう。


 ……

 …………

 ………………


 どうでしょうか? 長文タイトルの見苦しさは置いておくとして、伝わってくる情報量に圧倒的な差があると思いませんか?


「龍人族の公主様」


 としただけでは、何の話かわかりません。公主は皇帝の娘を意味しますから、何か高貴な感じがする、程度の情報しかありません。

(実際、同タイトルの短編は相手にされませんでした)


 対して、長文にしたことによって、おぼろげながらにも内容を想像できませんか?


 え? 全然想像できないって?

 まぁ、まだバージョンアップの余地はあるということで。


 でも、どうです?

 新着の小説でこの二つが並んでいたら、どちらを選びますか?

 え? 「龍人族の公主様」を選ぶって? 気が合いますね。


 人気のワードとしては「成り上がり」と「ハーレム」でしょうか。

 読者に語りかけるような長文タイトル特有のスタイルを取っています。

 当然、対象読者はカクヨムのメイン層である男性です。


 また、「なんで公主様が勝手にハーレムを作ろうとしてるんだ?」という疑問から、興味を引こうとしています。

 そして文章構成から、主人公はハーレムを望んでいないこと。そして無能とつけることで、底辺からの成り上がりであることを示唆しています。


 本当は実力者であることも入れたかったのですが、文字数の関係でうまく入れることができませんでした。


 ちなみに当初の予定では、ハーレムの予定はなく、有能な公主様に補佐してもらえるストーリーでした。実際、書き終えた第二章まででハーレムにはなっていないわけですが、決してタイトル詐欺ではありません。公主様がハーレムを作ろうとするのは事実であり、実際そのようなムーブを行った上で失敗しているからです。


 ただし、ハーレムとタイトルに入れる以上、読者の期待を裏切らないように、今後はハーレム展開を入れる必要がでてくるでしょう。


 なぜ公主様がハーレムを作ろうとするのかについては内緒です。

 本編を公開したときに読んでいただければと思います。


 あらすじについてはまだまだ納得のいくものが出来ていないので、現時点での公開はやめておくことにします。


 それとカクヨムではキャッチコピーの方が、タイトルより大事なようですね。こちらもどうにかしないといけません。すでに候補はありますが、まだまだ熟考する必要がありそうです。


 ……と、ここからは2023/9/25 現在の記述。


 後日ランキングを見て気づいたんですけど、もしかしてカクヨムって長文タイトルあまりない感じですか?


 オチがついたところで、また次回。

 ではでは。



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