ある日人類は唐突に斃れ伏し、滅んだ。なぜか生き残ってしまった夏めぐみが死体だらけの通学路を抜けて高校へ向かうと、教室には今ひとりの生き残りである石黒姫子が自習に励んでいた。これまで一度も話をしたこともなかった彼女たちは町へと繰り出す。不自由の消失によってもたらされた、ふたりだけの自由を楽しみ尽くすために。
滅亡した世界を渡って登校するめぐみさんの思考、薄情に見えるほどドライなものです。それは世の中に押しつけられる抑圧に抗う、か細いながらもしかと尖ったしたたかさ——思春期のただ中にあればこその少女性です。この輝きに目を奪われましたねぇ。
そして、そんなめぐみさんが唯一無二の共犯者となる姫子さんに出会うことで進むべき先を見出すのですが。ここで綴られる「ふたりきり」の世界観にもまた色濃い少女性が匂い立っていて、得も言われぬ情感をもたらしてくれるのです。
ほろ苦い読後感に香るほの甘さ、ぜひとも噛み締めていただけましたら。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)