第5話

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 ちょっ、えっ!? えっ? え、えええええええええええぇっ。

 なんでえええええええええええぇっ。


 私はパンを食べながら頭の中を高速回転させた。脳内の感情が飽和しすぎて、せっかくの千円単位の価値があるパンの味がしなかった。

 ニコニコと上機嫌にモーニングプレートを注文する桜木に、私はにこやかな笑顔を向けつつも、内心は複雑怪奇極まる奇声をヒステリックにわめきちらしている。

 こんな形で忌まわしい不快感が払しょくされて、これまでの私の人生どりょくはなんだったのだろうか。

 とりあえず、やるべきことは奨学金しゃっきんの返済だろう。婚活するか、しないかは、その時決めればいい。


 今は意図せずに始まった、自分の名前に対して嫌悪感のわかない、普通の人の生活を楽しむとしよう、そうしよう。

 ちょっと泣きたくなった。

 

――というよりも、泣いた。


【了】


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私の名前を呼んでみろ! たってぃ/増森海晶 @taxtutexi

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