第4話

この地図は確かに日本語になりました。でも...

「これ、どこの地図だ...?」

どこかの半島が地図にありますが、そこがどこなのかは全く見当もつきません。地名も聞いたことないものばかりです。


「なんだ、この赤い丸」

他の丸よりも強調され、地名の字体も一層目立つものになっているこれは、恐らく主都でしょうか。そして、そこからほど近いところに青い丸があります。そしてそこには、〈子爵別荘地〉と書かれてありました。なにこれ。小説の設定?


...今日はもう遅いです。眠いので明日にでも考えましょう。おやすみなさい。





おはようございます。山に遭難中の中学生、石谷匡智です。今、騎士の恰好をした人たちに囲まれてます──


どうしてこうなった。


昨日、ぼくは拝借した家で寝たはずです。そして、起きたら騎士の恰好をした人たちに囲まれてました。もしかして、人体実験は本当だった...?

怖いですけど、勇気を振り絞って聞いてみました。


□□おぉ□□□□□□□目を覚ましたか。」

〔すみません...何を言ってるのかわからないです...〕

□□□□□なにを言っているんだ□□小僧。」


だめだ、何言ってるのか全然わかんない。

そうだ、昨日謎の能力で翻訳できるようになったんだ!早速...


「あの...」

「おい、ここで何していたんだ!ここは子爵閣下の別荘地であらせられるぞ。」

「え、ええと、本当にごめんなさい!実は道に迷っていて、家があったので一泊過ごしたんです...」

「そうか。なら良いが、もしも本館にいたならば侵入者とみなし切り捨てていた。しかしお前は、どこからきたんだ?」


危なかった......あそこで反対側に進んでいたら...しかし、この人たち一体何者なんだ?剣を持ってるとか銃刀法違反ですよねそれ。


「日本っていう島国です」

「にほん?聞いたこともないな」

「え、ここ、日本じゃないの......?」

「ここはフェイボニア王国だが...?」


フェイボニア王国...?聞いたこともない。しかも、日本を知らないなんて...寝ている間に外国にでも来たのでしょうか?


「それじゃあ、アメリカは?イギリスは?ロシアは?」

「すまんが、どれも聞いたことがない」


まさか...いや...そんな......


「おい小僧、どうした」

「すみません...もう...故郷に帰れないみたいです...」


まさかぼくが寝ている間に、別の世界に行ってたなんて...


騎士視点────────


私は、フォグラフ子爵領騎士団団長、バーティ・ペンドリー。

子爵閣下が別荘で休養なさるとのことで、警備と出迎えの為、閣下よりも先に別荘にて準備している。

休養なさるので、暗殺を避けるためにいつもは使わないところまで警備の目を回しているのだ。


部下から報告が来たぞ。何々...〈別館で寝ている少年を確保した〉か。近頃は子供を使った盗みが増えているそうだ。そういうたぐいだろうか。



「あの...」


この小僧、ここで何をしていたのだ。問い詰めてみよう。


「おい、ここで何していたんだ!ここは子爵閣下の別荘地であらせられるぞ。」

「え、ええと、本当にごめんなさい!実は道に迷っていて、家があったので一泊過ごしたんです...」


なるほど、道に迷っていたのか。確かに別館は柵がないし、使われていないし碌なものもないので、盗みに入る意味もない。納得だ。しかし、一応出自を聞いておこう。


「そうか。なら良いが、もしも本館にいたならば侵入者とみなし切り捨てていた。しかしお前は、どこからきたんだ?」


「日本っていう島国です」


にほんとは、聞いたこともない国だな。


「にほん?聞いたこともないな」

「え、ここ、日本じゃないの......?」

「ここはフェイボニア王国だが...?」

「それじゃあ、アメリカは?イギリスは?ロシアは?」


私が父から教えられた国の中には、そのような国はなかったぞ。


「すまんが、どれも聞いたことがない。...おい小僧、どうした」

「すみません...もう...故郷に帰れないみたいです...」


もしかして、親に捨てられたのだろうか?そうだとすれば、見殺しにするのはかなり良心が痛む。子爵閣下に、一連の報告の上で小僧の保護を進言してみよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

文字が紡ぐ異世界 きつつく @Kitsutsu9

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ