Page.2 ひょっとしたら魔女はちょろイン
二〇二号室で僕は突然現れた魔女のようなお姉さんと向かい合う――一応ここは家族が要らない僕に与えたワンルーム部屋である。
「自殺志願者、というわけか」
白髪のお姉さんは冷たい声で言った。
「どうすれば自殺をやめてくれる?」
そのとき僕は、なぜ美しい人は声も美しいのかと自問して、少し返事に時間がかかった。
「おっぱいが触れたら生き返る。……色んな意味で」
「飛んだ変態に当たってしまったようだな、私は。仕様がない、私ので良ければ触れ」
服の上からとはいえ、僕の部屋にどこからともなく現れた見知らぬ女性は、ある日、触れて人生を破滅させた禁忌の果実を差し出した。
罠。
疑った。
けれどもう終わっている人生。何をしてももうこれ以上は酷くならないというバックボーンを使ってリングへ立った僕はそこに手を伸ばした。
「んっ……もう少し優しく触れないのか」
むにっ、と柔らかい感触が掌に広がった瞬間――僕の脳は宇宙を旅し、銀河全体を巡り、そして現在の世界に戻ってきた。
「ここはどこ?」
「おいちょっと待て、それはこっちの質問だ。 だから胸部を触らせてあげてるんだ」
僕の脳が5つ星ホテルの清掃サービスを受けたような気分だ。汚れが取れて、本当の材質が見えるようになった。僕のオリジンが。
「異空間に行き渡るほどの憎悪を抱え、精神的に危険度を越えていたともあろうのに、胸部一つで本当に復活するとはな。男という生き物は単純だな」
喜びが噴火した。
「うおおおおおおおおおおおおおお!! すげええええええええええ!!」
僕の喜びの叫びは一瞬、こほんと咳ばらいをしてすぐに落ち着いて紳士のように質問した。
「で、どなた様ですか? まず、僕の女神であることに間違いないのですが」
「女神か。皮肉にも魔女だ」
「魔女?」
「ふむ、どう説明したらいいか……。 2つの世界間の時空間空間移動について説明する方法を考えていなかった……」
「いえ、十分です。異世界からやってきたのでしょう」
「異世界……? ああ、そういう意味か。そうだな……私からしたらここが異世界なのだが、まあそれでいい。変態の代わりに物分かりが良くて助かった」
魔女のお姉さんは強い目で問う。
「この世には魔法の類が存在しないのか?」
「文化的にだけ、フィクション扱いになっています」
僕はこの世界が嫌いだ。しかし、滅んでしまえばいいと何度もか願っこの世界を、意外と顕在する僕のモラルが無意識に庇おうとする。
「何をするつもりですか……?」
「今はまだ何もしない。この家に居候させろ」
「喜んで!」
「それと……そろそろ私のを揉むのをやめろ……」
「あともうちょとだけ」
「そんなに良いものか?」
「このために生きてきたと感じています。幸福が溜まっています」
「キモイな」
と言いながら嫌な顔せず、もうちょっとだけ触らせてくれた。
となり世界に住んでいた魔女が僕にもたらした幸せ @BlueButterFly
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