読み進む度に

私が追っている私小説家。彼は今日もポケモンカードで遊んでいる。近況を追う度に、新しいデッキが出来たと報告する。私にはその魅力がわからないが、それでも、彼の頭の中とそれはリンクしていて、それは、二人の子供と、それから、離婚した妻と…。年を経るごとに自分の手からこぼれ落ちていく大切な幻影を、アルバムにするみたいに、彼はカードを束ねていく。その姿を僕はどうしようもなく、羨ましく思ってしまう。その感情がなぜ僕の中で、浮かび上がるのかは、どうも言葉には出来ない。彼の文章には、そういった可視化できない魅力が詰まっているように僕には思える。

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不正発覚