第2話 架け橋
涼真はあかねを病院までタクシーにて連れていった。
「病院についたよ、ここで待っているね」
「はい」
「どうだった?」
「ちゃんと処置をすれば大丈夫みたいです」
「そう、よかった」
「帰りは大丈夫?」
「はい、松葉杖を借りることができました」
「じゃあ、よかったね。タクシーじゃお金が高くつくな。バスかな」
「そうですね」
「じゃあ、バス停まで送るよ」
「はい、ありがとうございます」
「来たよ、そうだ、、僕の名前は涼……」
涼真とあかねは、自らの名前を互いに伝えようとしたが、バスの音にかき消されてしまった。
ガー
「私の名前は……かねです」
ブーン
涼真は想った。
綺麗な子だったな
あ、名前をが聞けなかった
連絡先もだもう一度、会えるだろうか……
あかねも想った。
素敵な人、優しく介抱してくれて、初めて男性の背中にのせてもらえて、恥ずかしかったけど、嬉しかったな。
また会いたい。
名前が聞こえなかったけど、どこに住んでいるのかな?
バスで見送る涼真の前に突然、海で出会った老夫婦が現れ、老夫婦の健三は涼真に話しかけた。
「おや、この間の若いお兄さん、何か悩んでいるみたいだね」
「どうしてここに」
「たまたまじゃよ」
「いえ、大丈夫です」
「何か想っていることがあるのだろう、言ってごらん」
「実は、この前の彼女の名前がわからなくて」
「そうだったのか、彼女はな、「あかね」という子だ」
「どうして知っているのですか?」
「ああ、なんとなく」
「健三さん、ほら、駄目よ」
「ああ」
「いつの間に、少しだけしか話していないのに?」
「あかねさんが、こっそり教えてくれたんだ」
「どこに住んでいるかはご存じないですか?」
「いや、それは知らないな」
「ところで、健三さんはどこに住んでいるのですか」
「ああ、この間の海辺の近くだ」
「僕はたまに行きますけど、お会いしたことはありませんね」
「そうだね、毎日散歩しているんだがな。不思議なもんだ」
「そうですね」
あかねは、タクシーにて自宅まで帰りついた。
「よし、着いた。松葉づえは慣れないから大変だな……」
「もう少しで家だ」
あかねの自宅に突然、老夫婦が現れた。
「あかねさん」
「健三さん、なぜここを?」
「たまたまだよ。元気がないような気がするが、気のせいかな?」
「いえ、そんなことはありません」
「正直に言ってごらん」
「はい、この前の男性の名前を聞くのを忘れて」
「そうか、彼の名前は「涼真」だよ」
「どうして知っているのですか」
「あそこで、こっそり聞いたんだよ」
「でも、そんなに時間が短かったじゃないですか?」
「あかねさんが気づかなかったんだよ」
「でも、そもそも、どうして私の名前を知っているのですか?」
「おや、忘れたのかい?」
「いえ、言った覚えはありませんが……」
「健三さん、いいじゃないですか」
「そうだな、すまなかったな」
「いえ、私の記憶がおかしくなっているだけです。涼真さんは、どこに住んでいるかはご存じないですか?」
「いや、それは知らんなあ」
「そうですか……」
「あかねさんは涼真君のことが気になっておるね」
「いえ、そんなことはありません」
「正直に話しなさい」
「いえ……」
「健三さん、可愛そうじゃないですか」
「そうだな」
「邪魔して悪かったな」
「いえ」
あかねと涼真は互いに想う。
あの人はどこにいるの?涼真さん
君はどこにいるんだ?あかねさん
海と星へ 虹のゆきに咲く @kakukamisamaniinori
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