海と星へ
虹のゆきに咲く
第1話 貝殻の想い
海が二人を呼んでいた。波が寄せるように二人を寄せ合っていたのだ。
あかねは、海の美しさに魅せられて歌を歌っていた。
ザーザー
海は広いな~大きいな~
わあ、気分がいい
小さい時にお父さんが連れて行ってくれたなあ
海は広いけど私の心はどうなんだろう
波打ち際での波が心地よい
貝殻がきれい
ピンク色、青色
拾って行こう。
涼真は想いにふけっていた。
仕事で体がだるいけど精神的に疲れているな
ここは癒される
よく、母さんが連れて行ってくれたな
母さんの前ではしゃいでさ
海へ入ろうと波まで行くと
母さん慌ててさ
ハハハハ
海にヨットかな
珍しいな、こんなところで
でも、帆の色が綺麗だな。
二人は偶然にもぶつかってしまった。
バン
「あ、ごめん。大丈夫かな?」
「はい。大丈夫ですか?あ、痛い」
「どこか怪我をした?」
「はい、貝殻で足の裏を切ったみたいで……」
「見せてごらん」
「はい」
「あ、傷が深いな出血もひどい」
「ちょっと待って」
「僕のシャツだけど、これで足の傷の個所を巻くから」
「いいのですか?」
「ああ、どうせ、古くなって捨てようと思っていたから。よし、とりあえず、これでよし」
「ありがとうございます」
「ここに座ってても濡れるだけだから、あっちに移動しよう」
「はい」
「痛い」
「そうか、立てないね。じゃあ、僕の背中に乗って」
「そんな、恥ずかしいです」
「大丈夫だよ」
「だって、シャツを脱いだから上半身が裸じゃないですか……」
「大丈夫だよ。気にすることはないよ。片足じゃ歩けないだろう。いいから乗って」
「はい」
涼真はあかねを介抱してあげた。
「君の胸の鼓動が聞こえてくるよ。温かさと一緒にね。このまま、走ってみようか?」
「駄目です、怖いです」
「いいから。ほら」
「いやあ、怖い」
ハハハハ
「あ、大事なことを忘れていた。タクシー呼ばないと。病院に行かないといけないからね」
「はい」
「今、電話をしたけど、しばらくかかるみたいだよ」
「わかりました」
「ここで何か話そうか?」
「はい。嬉しかったです」
「どうして?」
「父がよく、おんぶしてくれて、それを思い出しました」
「じゃあ、もう一回おんぶしようか?」
「いえ、恥ずかしいです」
「どうして?」
「さっき言ったじゃないですか。上半身が裸だって……」
「大丈夫だよ」
「さっきはとても恥ずかしかったです」
「そうか」
「はい」
「男性の人と密着したことがないので」
「わかった、ここで話しよう」
「はい」
「君の黒髪は素敵だね」
「いえ、そんなことはないです……」
「恋人はいるの?」
「恋人がいたら、男性の人と密着しません」
「そうか、それもそうだな、住んでいるのは、この近隣かな?」
「いえ、ここから1時間くらい離れた所です」
「僕も1時間くらいの距離かな。あれ、あっちから老人の夫婦が歩いて来てる」
「そうですね」
向こうから老人の夫婦らしき二人が歩いてきて二人に声をかけた。
「やあ、君たち若いもんはいいな。これが青春というものかね」
「健三さん、冷やかしているみたいだから、止めなさい」
「そうだな」
若い二人は戸惑いながら、返事をした。
「いえ、お気になさらずに、僕達はここでたまたま会ったばかりですから」
「実はな、わしとトメもここで出会ったんだぞ」
「健三さん、恥ずかしいことを言わないでください」
ハハハハ
「トメがな」
「やめて、健三さん」
「お前にも、まだ乙女心が残っていたか」
「お二人さんのお邪魔ですよ」
「そうだな」
「いえいえ」
「それでは、ご縁があったらな」
「こちらこそ」
そうしている間に涼真が呼んだタクシーが到着した。
「タクシーがきました」
「じゃあ、背中に乗って」
「やっぱり恥ずかしいです」
「最初は出来たじゃないか」
「はい、でも今は……」
「そんなこと、言ったら、タクシーまでいけないぞ」
「はい」
「ほら」
白い砂浜と青い海に二人はいた。そこには運命という文字があったのだった。
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