第4話 覆面作家の原稿がどうしてここに!?
私がこの家に来て、早くも一週間が経過した。
実家にいた頃は城での洗濯係の仕事や畑仕事で体を動かしていたけど、今はお母様が「淑女たる者~」とお小言混じりの社交界のマナーや外国語の勉強をしている。
なので、体がちょっとなまって仕方が無い。
淑女たるもの通訳なしで他国の重鎮達と会話しなければならないらしく、毎日勉強して頭が混乱。
ちなみにお義理母様は他国言語を操る。さすがハイスペな旦那様のお母様。
ルヴァン様曰く、若い頃に紫の知識姫と呼ばれていただけあり、性格意外は教養・マナーすべて完璧だそうだ。
肝心のその性格が大問題と零していたけど……
(しかし、すごいよね。絶対零度の雪豹という異名の他に、紫の叡智姫って異名もあるなんて!)
「外国語って何カ国分覚えなきゃならないのかしら? 通訳さんつけてくれるなら、つけて貰った方が確実なんだけどなぁ」
私は窓辺に置かれた机の上に外国語のテキストを広げ、ぽつりと呟く。
ここは公爵邸の南側にある部屋で、私が勝手に学習室と呼んでいる場所だ。
部屋には本棚があってたくさん本が並べられ、壁には世界地図が飾られている。
ここ数日、お義理母様が隣に立ち先生のように教えてくれているんだけど、今は執事に呼び出されて席を外している。
「なんかずっと座っていたから、腰が痛いわ。お義理様も戻ってこないし、今のうちに……」
私は立ち上がるとぐっと手を天井まで伸ばしたり、体を軽く捻ったりストレッチをした。
軽く体を動かしたことで、少し楽になった気がする。
基本的に頭を働かせるより、体を働かせることが好きなため、勉強はちょっと窮屈だ。
「……しかし、お義理母様遅いなぁ。今のうちに息抜きしようかな」
私は息抜きがてらに本棚に置いてある本でも読むかと本棚へと向かう。
本棚には薬草図鑑や心理学など色々なジャンルの本が置かれていた。
さらっと本のタイトルを目で追えば、ひときわ分厚い本が目に入ってくる。
それは世界地図と書かれた本。
「ちょうど良いわ。世界地図見てこの国と国交がある国を見て確認しようっと」
私は深く考えずに慎重に本を取り出す。
大きくて分厚かったから、ずしっと手に重みが来ると思ったけど予想外に軽かった。
それに違和感を持つが、特に気にすることはせず。
机に持って行き、本を開こうとして気づく。
「……あれ? これ本じゃない。本を模した紙製の収納ケース? 本棚に置かれていると本に見えるけど。なんだこれ?」
私はケースを開けば、中には原稿用紙が入っていた。
手に取り文字を読んで行くにつれ、私の目が大きく見開く。
「これって、亡国姫の冒険シリーズの原稿じゃない! どうして覆面作家のバイオレット先生の原稿がここに!?」
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