第3話 また噂

勉強会を終えて学校に来た俺だが、また噂されていて萎えている。今回も普通に胡桃さんの家に入って勉強しただけじゃんかよ……。

 ︎︎というか今回に関しては小鳥遊も一緒にいたじゃねぇか……なんで俺だけが噂されてるんだよ。


「何お前ら、過激に噂するの好きなの? 前の時だってそうだけどさ、俺はただ単に家に入っただけだからな」


「ばっかお前、女の子は好意のある相手しか自分の家に入れないものだぞ」


「無いな」


楓の家に入った時はまだ俺は嫌われていた……かどうかは今となっては曖昧だが周りから見てもあの時は好感的じゃないことくらい一目瞭然だっただろう。別に胡桃さんだって勉強会をするために友達として家に入れてくれたわけだし、好意がないと入れないっていうのは違くないか? まぁその好意の捉え方にもよるが。


「というか胡桃さんの件に関しては勉強しに行ったし小鳥遊もいたからな? 俺だけが噂されている現状はおかしいんだからな?」


「おい隼人、せっかくスルーされてたんだから巻き込まないでよ。しっかし、想像力豊かな物だねぇ家に入っただけでどんな事をしたかなんて分からないのに」


ただ勉強をしに行っただけなのに噂では前のは嘘でこっちは本当に付き合ってるだとか、憶測が飛び交いまくっていた。


「私と……澄風さんはそういう関係では無い、ですよ。ただ一緒に勉強しただけですから……」


自分の席で静かに座っていた胡桃さんが急に口を開く。いや、本当に勇気を出してクラスの人に弁明してくれて助かった。


ちなみに胡桃さんの髪型はいつものままだった。机の上には俺がセットした時に使ったヘアピンとかが置いてあって、俺の事を見つめてくる……学校で見られてる中でやれと? 俺はいいけど、噂に燃料を放り込むだけだと思うんだけど。


「髪……やった方がいい?」


「状況的にダメだとはわかってるんですけど、やっぱりあの髪型は澄風さんがやってくれたので……ずっとその髪型で居たいんです」


「あーうん。周りの奴らは噂なんて流さないようになー」


前やった時の同じことをするだけなので時間はそこまで掛からなかった。まぁやっている間は男子たちがずっと見つめてきていたのが気になるが別に何も問題はなくないか? ただ髪をセットしてあげてるだけだし。


「なんでここまでして付き合ってないんだよ……。え、なに隼人は欲望がないの?」


「失礼だなおい、俺は付き合う余裕なんてないから誰とも付き合えないし、付き合う気もない。俺はただ友人として胡桃さんの髪をセットしてるだけであって恋人になりたいだとかの感情を抱いたことは無い」


「あー、隼人って妹と2人暮らしだったけ? 確かに付き合う余裕はないだろうけどよぉ……女の子の髪をセットする男なんて友達だとしても珍しくないか?」


まぁ男子が女子の髪をセットしてる所を見ることはあんまり無いな。普通の女子からしたら男子に自分の髪は触らせないだろうし自分でセットしてくるだろう。

 ︎︎胡桃さんは自分でセット出来ないからだが、俺に任せるということはそれほど信頼してくれてるということだろう、別に頼むなら他の女子でもいいと思うが胡桃さん的には知ってる俺に頼むしか無かったのだろう。


「ありがとうございます」


「ん、これくらい別にいいよ。自分でできるようになるまで俺がやろうか?」


「それじゃあ、お願いします」


今日一回やったし明日やったとしても何も言われないよね。


ちなみに髪型を変えた胡桃さんは左目は隠れてるとはいえ右の綺麗な青い目が見えているので女子たちに囲まれていた。まぁ今までは前髪で隠れて見えていなかっただけで元々胡桃さんの顔立ちは整っているし可愛いと言われる要素はあった。

 ︎︎コミュ力は変わらないままだから話に来る女子たちに慌ててるけど。


というか、またこれで噂が加速するんだろうな。別に2回目だしどうでもいいんだけどさ、胡桃さんの方に迷惑が掛かる気がする。

 ︎︎詳しいことは知らないが親のことで悩んでいる胡桃さんをさらに学校の噂のことで悩ませたくは無い。


「一部始終を見ていたやつに一つだけ言っておくとしたら噂なんてするなよ。真実じゃないことを言って何が楽しいんだ」


「別に前の時に学んだからそんなことはしないさ。それに胡桃のことを考えたら悩みを増やさない方がいい、認識はされてなかったと思うが俺は一応同じ中学で事情は先生から聞いていたからな」


「お前みたいなやつが増えてくれると助かるな」


当の本人は女子たちと話していて、笑っている……楽しそうだ、やっぱり笑っているのが1番だ。


「隼人って楓と胡桃さんにしか向けない顔があるよね、あと来羽ちゃんとかにもか。仲のいい人とそうじゃない人の差がでかいんだよね」


「全員に愛想良くして告白だとかされるより特定の信頼してる友達にだけに愛想良くしてた方が俺は楽だと思ってるからな。ま、告白なんて俺には無縁だされる事もする事も無い」


「それに関しては僕もそうだからね、バイトしながらだし、受験もあるからそんなことしてる場合じゃないってのはある」


「え、小鳥遊ってバイトしながらなの?」


「うん」


すげぇな、俺は店長に受験が終わるまで休むと言ったが小鳥遊はバイトをしながらだとは……。より俺が落ちにくくなったなぁ、とりあえずは直近の実力テストの点数次第かな。

 ︎︎三者懇談は相変わらず二者懇談になるけど。

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