第2話 勉強会
勉強会は午後からなので私は午後のために何か用意することを一旦置いておいて、起きて直ぐに病院へ向かった。
「あら、こんなとこ朝早くに来なくても良かったのよ? その様子だと朝ごはんも食べてないだろうし。夜にお父さんが家に帰ってくるからその時一緒にこれば良かったのに」
「早く、会いたかったので……。だって何年間、話してないと思ってるんですか……」
「胡桃が中1になった入学式の帰りに事故ったから……4年くらいかな。寂しい思いをさせてごめんね、もうちょっと先の話だけど1人じゃなくなるから」
それだけ話して私は家に帰った、本当に良かったいつものお母さんが見れて、もうずっと見れないと思ってた。学校にいる時も一人でいる時も頭の中にはお母さんのことがあって、気が気でならなかったけど……これでもう悩む必要は無いんだ。
「昼から澄風さんたちが来ますし、そろそろお片付けしましょうかね。写真……お願いしても大丈夫でしょうか」
片付けると言っても胡桃一人で過ごしてきた家だしそこまで散らかってはいない、胡桃が使っている部屋以外は何も変化はなく、ただ物が置いてあるだけだった。なので胡桃は直ぐに片付けを終えて、隼人達が来るのはソワソワ待つだけだった。
§§§
俺は小鳥遊と合流して胡桃さんの家に向かっていた。
同学年の女友達の家に行くのは初めてだ、ただ勉強会をするだけなら俺もこの間で緊張はしてないだろう……。ただ今日に関しては勉強に+して俺は胡桃さんの髪をセットしないといけない。
︎︎昨日からどんな髪型か胡桃さんに似合うか(いつものシュークリームで釣った来羽で)試してはいたが実際本人にやるとなると緊張するな。
「向こうから頼まれてるとはいえ、男子が女子の髪を弄っていいものなのか?」
「胡桃さんからお願いしてるんだし問題ないでしょ。というかそんなことより勉強のことを気にしたらどう? 3人の中で1番点数が低いのは隼人だよ?」
「別に小鳥遊とはそんなに差はないからな? もしかしたら俺が胡桃さんに教えて貰ったら小鳥遊を超すかもよ?」
「僕も教えてもらうんだから変わらないでしょ」
それもそうか、どっちの方が頭がいいとかはどうでも良くて結局は3人で合格出来ればそれでいい。
3年生は6月に修学旅行がある、それは楽しめるように今から勉強して少し余裕を作っておくつもりだ。まぁ残念なことに胡桃さんも小鳥遊も別のクラスで今クラスに友達はいない状態なんだけどな。
︎︎まだ4月だが6月までに1人か2人ぐらい話せる友達は作って起きたいところだ。高校生活最後の修学旅行において友達ゼロで話せず楽しめない班行動だけは避けたい、絶対に避けたい。
その後に自由行動はあるらしいが、それまでで地獄を味わいたくない。
しばらく歩いて胡桃さんが送ってくれた家まで着いて、まず思ったことはでかい。誰が見ても大きいと思う家に、今は胡桃さん一人で住んでいるのか……寂しいだろうな。
「どうぞ2人ともお入りください。勉強が終わったら……お願いします」
「ん、1回やれば自分でできるようになる?」
「今まで髪型を変えたことがないので、厳しいと思います」
俺が今日髪型を変えたとして学校の時にもその髪型じゃないと意味が無いんだよなぁ。元は学校でのイメージを変えるために髪型を変えるって話だし、今日変えた髪型でずっと過ごすのなら自分で弄れないといけないだろう。
︎︎家が遠いし毎朝胡桃さんの家に行って髪型を変えてそのまま一緒に学校へ行くってことも出来ないからなぁ。
また噂されるかもしれないけど、正直噂なんてどうでもいい。学校に来てからやるのは……どうだろうな、ダメかな。
俺たちは部屋に案内されてそこに置いてあったテーブルの上に教材を広げる。今日のために結構勉強してから来たし、余程の難問が来ない限り胡桃さんを頼ることは無さそうだ。
︎︎普段の何倍も勉強してるし、いつもより高い点数を取りたいな。
勉強してる最中は会話がなく、分からないところがあった聞くだけでひたすら黙々と集中して課題を解いていた。なんかいいよな、こうして友達で集まって一緒に勉強会するのって、今までそういうことは俺には無縁だったし。
︎︎奏ちゃんを助けてから変わったよなぁ、楓と話すようになって……今では友達だし胡桃さんとも仲良くなって、今こうして勉強会を出来てる、今が1番楽しい。
勉強を開始してから2時間くらいたった頃、一旦休憩ということで小鳥遊はコンビニに飲み物を買いに行った。
「じゃあ今のうちに髪、やっておこうか」
「お願いします。それとこの前、お母さんのことを言いましたよね」
「そうだね」
「あの日、帰ったあとにお母さんの方から電話がかかってきました。だからもう心配しなくても大丈夫ですよ」
俺はただ一言だけ「よかったな」とだけ言って微笑んだ。
「澄風さんには関係ない話ですね、とりあえず髪をお願いします」
「既にやってるけどね」
(胡桃さんも出会った日と比べてだいぶ俺らと話せるようになってきたなぁ)
手を動かしながらそんなことを考える。出会った当初なんて顔を逸らしながらで言葉も途切れ途切れだったことを考えると成長してるよな。
「目って隠れてた方がいい?」
「そうですね……私はどうも思わないですけど、周りの人達が不思議に思うかもしれないですし隠して貰えますか?」
隠すのなら左サイドの三つ編みは出来ないか……。まぁ来羽で試した通りにやるか。
しばらく試行錯誤して左サイドでは出来ないので右サイドで三つ編みにしてあとはちょっと整えて終わりだ。元から胡桃さんの髪はそこまで長くなかったし出来ることは少ない。
「お、胡桃さんその髪型似合ってるじゃん。学校でそのまま行けば声かけられるだろうなぁ」
小鳥遊がレジ袋を持ちながらそう言う。というか飲み物以外も買ってきたなこいつ。
「ありがとうございます……と言いたいんですが、私一人ではセット出来ないと思うんですよ。澄風さんに毎日来てもらってセットしてもらうわけにもいきませんし……」
「後でやり方を詳しく教えるよ。とりあえず小鳥遊も帰ってきたし勉強再開だな」
俺はセット道具を置いて再度シャーペンをもってノートを開いた。
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