第44話 クリスマス祭①

翌日、昨日より一層寒い朝に、俺は来羽と一緒に学校に向かっていた。今までなら俺たち生徒が準備する必要があったのでこうやって一緒に行くことが出来なかったのだが今日だけは別だ。

 ︎︎まぁ、大元として俺が通ってる高校と来羽の通っている中学が近くて、その校長同士が仲良くなかったら、中学の生徒が高校のイベントに参加することすら実現はしなかっただろう。


中学と高校の距離はほとんど変わらないし普段の通学では途中で別れるところを別れないだけなので別に物珍しさも何も無い。


「うぅ……寒い。もっと分厚い上着を着てこればよかった……」


「ほら、俺の上着でも着とけ」


「寒くないの?」


「いや、めっちゃ寒い」


「寒いんだ」


カッコつけて来羽に上着を私のはいいもののむっちゃ寒い、分かりきっていたことだがこの時期にシャツだけで過ごすのは無理だ。ちょっと時間なら耐えられるかもしれないが、一日中は無理だ。

 ︎︎年中半袖短パンの奴とかいたけどそいつらの凄さを認識した、こんな寒いなかで長袖でもなく長ズボンでもなく半袖短パンで過ごせてることを褒め讃えたい。


「予想通り隼人は来羽ちゃんと一緒に来たね。というか上着を来羽ちゃんに貸しても大丈夫なの?」


「いや、寒い。というかなんで言ってもないのに俺が上着を来羽に貸したことがわかる、エスパーか?」


「だって来羽ちゃんが着てる上着、普段隼人が着てるやつじゃん。あと来羽ちゃんが着るにはサイズがデカすぎる」


言われてみれば来羽の着てる上着が俺のだとわかる要素はいっぱいあった。


とりあえず高校生も中学生も全員体育館に集合と言われてるので移動したのだが、さすがに二校の全校生徒が入れるデカさではなかったので間が狭い。

 ︎︎少しでもスペースを確保するために来羽は俺の足の間に座っている、まぁ兄妹だからこそできることだな。


「本日は両校生徒の皆さん、クリスマス祭へのご参加、感謝申し上げます。本日、生徒の皆さんは準備や片付けなど、面倒なことをする必要はありません! 3年生にとっては今年最後のイベントになるでしょう、なので細かいことは気にせず、精一杯楽しんでください! それでは、クリスマス祭開始!」


開会式が終わり、生徒たちは各々自由に移動を始める。まぁ基本的にやってることは文化祭みたいなものだ、ただその店番や役者が生徒ではなく先生というのが違いだ。

 ︎︎ちなみに今から先生がステージ上で歌うらしいので結構な人数体育館に残っている。


俺は興味無いし来羽はどちらかと言うと体育館に向かう途中で見かけたカフェや屋台の方が気になるようだ。先生の中にはもちろん料理をしている人がいるし、中々クオリティの高いものが食べれそうだ。

 ︎︎逆に料理があまり得意じゃないとと噂の藤宮先生は妻の真白先生と一緒に屋台を開いている。俺たちはまだ入学してなかったが同じ学校の先生同士で結婚したということで結構祝福されたらしい。


「藤宮せんせー、真白先生に任せっきりじゃないですよねー」


「真昼に教えて貰って俺もできるようになったから問題は無い、ただ全てにおいて真昼に劣るというだけだ。買うなら真昼が作ったやつをおすすめする」


「もう、薫くんの作ったやつもちゃんと美味しいので自分を卑下しないでください。もっと自信を持ってくれていいんですよ?」


「あのー、目の前に客が居るのに放置していちゃつかないでもらえます?」


いちゃついてないと2人して否定するが、客観的に見たらイチャついてるようにしか見えないんだって。とりあえずホットドックを二つ買って真白先生が作ったホットドックを来羽がに渡すして俺は藤宮先生が作ったホットドックを食べる。


料理下手とは思えないが、それは真白先生が色々教えたからだろう。真白先生が言うには出会ったのは大学生の時らしくその頃の藤宮先生は本当に酷かったらしい。

 ︎︎これ以上は藤宮先生のメンタルがボロボロになるので語るのはやめておこう。


「なぁ星野」


「サラッと話しかけないでください。それでなんの用ですか?」


「そういや最近、委員会以外で星野と話してないと思ってな」


「そうですか、まぁ来年はもうほとんど関わることがないのでいいんですけどね」


楓としては良くなかった、隼人が3年になって会うことが少なくなれば本当のことを伝えることができなくなったら今後もずっとそのままだ。


「そうとは限らないぞ? もしかしたら同じ大学に入るかもしれないからな。まぁ無いと思うけど」


「でしょうね、私と澄風先輩では頭の良さが違いますから」


「それは俺の方が悪い方? 良い方?」


「どうでしょうね」


正直星野に嫌われたまま卒業するのはなぁ……。せめて友達ぐらいの関係になってから卒業したい、助けたのに嫌われるのは既視感があるからな。

 ︎︎俺はその後を知らない、あれから1年経ってるわけだしあの子もどこかの高校に入ってるだろう。


「変な質問をするが、構わないか?」


「澄風先輩はいつも変ですよ、関わる必要のないことに関わって」


「まぁそれはそうかもしれないな、それで本題だが……。星野、お前は1年前、俺に会ったことがあるか?」


そう質問した理由は1年前のあの子と星野が似てると思った、ただそれだけだ。

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