第43話 前夜祭③

しばらくして王様ゲームが終わり、各々友達同士で会話しながら料理を食べている。まぁ最初のうちに食べてた人も結構いるし、ほとんどのグループは雑談してるだけだがある野球部とかのグループは置いてある料理を全て食べ尽くす勢いだ。


「前夜祭でここまで豪華ならクリスマス祭当日はもっと豪華になるのかな?」


「先生が用意してるしそりゃあ、自分たちが用意してたハロウィン祭とか文化祭に比べたら豪華だよ。去年はプレゼント抽選会やってたし今年も同じなんじゃないかな?」


「そのプレゼントって私も貰える?」


来羽がキラキラとした眼差しでこちらを見つめてくるが、去年は中学の人に知り合いがいなかったから気にしてなかったし正直中学生も貰えていたかは覚えていない。


「ごめん、去年は中学生に知り合いが居なかったからあんまり気にしてなかったし分からん。まぁでも参加させてるんだし貰えるんじゃない?」


「やった!」と嬉しそうな来羽を見れたのでこの良かった。ちなみに去年俺が貰ったくまのぬいぐるみは来羽に渡した、俺が先に起きた時に抱いて寝ている姿を見かける。

 ︎︎まぁ俺がそのぬいぐるみも渡す前もぬいぐるみは置いてあって、それを抱いて寝てたりしたのだが俺が渡してからはそのくまのぬいぐるみを抱いてるとこしか見なくなった。


「来羽、あんまり食べすぎるなよ。自分でそう決めてるんでしょ?」


「そ、それはそうだけど美味しいから……つい。で、でもっ、今日だけだったら問題ないよね」


ま、来羽が食べたいの言うのなら無理やりは止めないけど自分で食べる量を減らすと言ってたのにな。別に来羽はそこまで体型を気にする必要はないとは思うが本人が気にしてるのなら俺は口出ししない方がいいだろう。


「まあまあ、隼人も来羽ちゃんの好きにさせてあげなよ、親じゃないんだからさ」


「兄ではあるが?」


「そうだとしても気にしすぎだよ、別にそこまで気にする必要も無いだろうに」


茅森先輩は話しかけられるのが面倒くさいという理由で帰ってしまったので女性の意見を聞くことができない。どっちにしろ茅森先輩は来羽のことをちょっと贔屓目なので来羽の言ってることに賛同するだろうし、意見として認めれない。

 ︎︎というか茅森先輩が面倒くさいから帰るって何人もの男子が話しかけに行ったんだよ……。


叶多くんとは一緒に帰ってないので暗に俺が家まで送れと言ってるようなものだ。だからといって来羽を1人で帰らせるわけにもいかないので着いてこさせるが、まぁ帰るのが少し遅くなるのには変わりないか。


「帰る時は叶多くんを送ってから帰るから、ちょっと時間が遅くなるかもな」


「い、いや大丈夫ですよ。1人でも帰れますし、男ですから」


「男だからと言って狙われないわけじゃないぞ? それにまだ中学生なんだからこんな夜中に1人で出歩くのは危ない」


基本的な認識として女子が夜に歩いていたら男に襲われるというのは頭にあると思うが世の中にはその逆もあるということを覚えておいて欲しい。



§§§



前夜祭も終わって俺は、宣言通り叶多くんを家まで送っている。


そういえば家の場所は知ってたけど何気に向かうのは初めてだな。まぁ歳も違うのでわざわざ茅森先輩と遊ぶということは無いし普通と言えば普通なのかもしれない、あくまで関係は少し仲のいい先輩と後輩ということだ。


「そういや叶多くんは俺らと同じく2人暮らしなんだけど、実家に帰ってこいとか言われないの?」


「ずっと言われてますよ、でも月奈お姉ちゃんが帰らないと言ってるので。月奈お姉ちゃんがいないと僕も帰ることができませんし、自然に僕も帰ってない状態です」


「こっちは逆に親に帰ってこいって言う立場なんだけどねぇ。帰らなかったら向こうがしびれを切らしてこっちに来るかもよ?」


親が帰省して来ない子どもの家に行くことはあるだろう、ただし子どもが親がいる家に行くことは難しいし俺らの場合は海外という越えられない壁があるので向こうが帰ってくるまで待つしかないのだ。


しばらく歩いて叶多くんの家に着いたが、なんだろ……言っちゃ悪いのかもしれないけど2人で過ごす家にしてはでかすぎないかと思った。俺の家みたいに元が4人暮らしだったのなら納得はいくが、帰省しろ言われてるので茅森先輩の方が離れたことは明白だ。

 ︎︎じゃあなんでこんなにでかいのかという話だが、叶多くんの他に同居人でもいるのか?


「おー、ちゃんと伝えた通り送ってくれたんだね」


「別に直接言った訳では無いですけどね……。というか叶多くんを1人で帰らせてたら次のバイトの時に俺がより酷い目に遭うじゃないですか」


「そりゃあもちろん、だから暗に伝えたんだけど」


今もう一度、あそこで叶多くんを送る決断をしてよかった思った。元々酷い目に遭ってるのにそれより酷い目に遭うってことになったら耐えられない。


とりあえず役目は果たしたし、俺達もさっさと帰ろうと、俺はうとうとしている来羽の肩を支えて歩き出した。全く、まだまだ来羽目が離せないな、これからもしっかりと俺が見守っていくとしよう。



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