第42話 前夜祭②

王様ゲームとかいう結構ヤバめのゲームが始まってしまった。


「じゃあ20人はさすがに多いから10人で別れて、はいこれに9番まで番号の書かれた箸と赤く塗りつぶされた箸が1個あるから。あ、わかってると思うけど、常識の範囲内でね? 頭を撫でるとか、壁ドンまでが許容範囲、キスはアウト」


まぁさすがにそうだよな、誰も好きでない人とキスなんてしたくないだろうし、男同士でキスなんか空気が地獄になる。あと、ある一定の女子達が悲鳴をあげる。


それでとりあえず10人ずつで別れたのだが茅森先輩と小鳥遊、叶多くんは向こうのグループで俺と同じグループの知り合いは胡桃さんと来羽、それと問題児の如月だ。如月は大体ギリギリのお題を出して来ると思うので、気をつけないとな。


「じゃあ王様だーれだ!」


「お、私が王様だ。えと、じゃあ1番と10番の人はこれ食べてね」


10番は俺、開始早々運が悪いな。それでさ、なんかむっちゃ赤いパスタが見えるんだけど。


「10番は俺、それでさこのパスタが辛いってはわかるんだけど、何書けたの? タバスコ?」


「いやいや、そんな生ぬるいものじゃないよ。デスソースの辛さをちょっと抑えた自家製のソース」


「とんでもないものをかけるなよ……。別に俺は食えるけど、1番の人は大丈夫か?」


俺はパスタを巻取りながらそう尋ねるが、俺の向こう側にいた1番のやつがフォークを持って震えている。恐らくそこまで辛いものが得意じゃないんだろうなぁ。


「ん、美味かった。それで……お前は大丈夫か?」


「辛いのは別に普通だけどデスソースは聞いてない……」


まだ再起不能にはならなかったのでメンバーは変わらず続行だ。


「お兄、あのパスタを食べて辛くないの? 見た目からして私は無理なんだけど……」


「多少は辛かったけど、普通に食べれる範囲ではあったかな。来羽には無理だと思うけど」


「うん、私もそう思う」


そして2回目。


「王様は俺だな、司会の人がセーフって言ってたし、3番が7番の頭を撫でる」


さすがに2回連続俺が当たることは無かったが来羽が7番だった。3番の人は俺が全く関わったことの無い女子、まぁ女子同士なら何も起きないだろう。

 ︎︎来羽も相手が女子だから既に撫でられる体制で待ってるしな。


「お姉さん、普段から撫で慣れてるから気軽にやってくれていいんですよ?」


まぁ手が止まってる理由は身長差から自然に来羽が上目遣いになってるからだろう。俺はもう何回もその上目遣いを見てきて慣れてるけど、始めてみる人からしたら可愛くて手が止まるよね。


「それじゃあ……失礼して」


頭を撫でられた来羽はいつも通り猫のように甘える顔になる、俺のときだったらそのまま身体にもたれかかってくるのだがさすがに自重しているようだ。


「ねぇ、このまま持ち帰っていい?」


「普通に考えてダメに決まってるだろ、来羽は今唯一、一緒にいる家族なんだから。あと、来羽が居なくなったら晩御飯が作れない」


「別にお兄も作れるでしょー、ただ私よりは劣るだけでさ」


まぁそれはそうなんだけどずっと来羽のご飯を食べて来てるから今更自分の作る料理じゃ満足できないんだよな。


「まぁ冗談はここまでにしておいて、本当に澄風くんの妹ちゃん可愛いね。お兄さんとは全然似てないや」


「性格も何もかも違うだろうな、来羽と俺では。まぁ来羽は俺なんかに似なくていいんだよ」


ま、今更俺に似てくることは無いだろう。それに、俺と同じことをしようとしていたなら俺は止めるつもりだ、怪我を負う可能性があることをするのは兄である俺の役割だからな。


3回目の命令はさすがにやばかったので無視、その命令を下した奴が今女子達に裏で怒られている。そして4回目だが1、5、8、9番がロシアンルーレットをすることになった。


その内容は4つのコップの中にそれぞれミルクティー、メロンソーダ、そしてハズレ枠としてノニジュースとカルピスの原液らしい。参加してるのは俺と胡桃さん、その他男子2人。

 ︎︎2分の1でハズレだがハズレだとしてもまだカルピスの原液の方がいい、ノニジュースは健康にいいらしいけど不味いと噂なのだ。


目を閉じたままコップを手に取って一気に口の中に入れる。俺のはメロンソーダだったし、胡桃さんも美味しいと口から漏れてるのでハズレを引いたのは他2人の男子でその1人が顔をとんでもなく顰めているのでそいつがノニジュースだろう。


「まずい……これが健康にいいって本当なのかな。まぁ健康にいいからこんな味でも商品として売ってるんだろうけど」


「原液は喉がちょっとやられるくらいだな。というか2人ともなんで会場にこんなものを持ち込んでるんだよ」


「いやぁ、せっかく集まるんだしなにか面白いことにしようかと」


「同意見」


最初のデスソースもどきなんか面白いことにしようかなという理由で持ってきていいものじゃない気がする。というか王様ゲームってこういう罰ゲーム系のやつよりも恥ずかしがる系の方が多いと思ってたんだけど、それも参加者次第ってことか。


小鳥遊の方のグループでは壁ドンされてる姿をさっき見たし、現在進行形で茅森先輩が女子の頭を撫でてるので、向こうにはそういう人が多かったということで。


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