第41話 前夜祭①

俺は言われた通り先に会場に向かってあとから来羽達が来たのだが、まさかサンタ服を着てくるとは思わないじゃん? というかなんで茅森先輩はそういう服を持ってるんだ、叶多くんもサンタ服だし。

 ︎︎まぁ可愛いし別にいいんだけどさ、クラスの女子達が早速群がってるんよ。


「お、お兄助けて……」


───お兄呼び? 可愛いー!


「一旦離れてもらって、来羽に質問があるなら1人ずつゆっくりね。念の為俺も来羽の隣に居るわ」


まぁ女子ばかりだし如月みたいなことを言うやつはいないと思うけど……。ふと周りを見れみれば当たり前かのように如月は茅森先輩に話しかけに行っていた、ここから見てわかるくらいに茅森先輩の顔が死んでいる……。

 ︎︎如月のことを助ける義理はないしあのまま放置しておくとしよう。


「来羽ちゃんから見てお兄さんはどんな人?」


「お兄がですか……。えっとぉ、優しくて頼り甲斐があるけど、あんまり感情を表に出さない人ですかね」


俺があんまり感情を表に出さない、まぁ来羽の前で泣いたり喜んだりした記憶は無い。来羽が頼れるのは俺しかいないんだから俺が泣くわけにはいかないだろ? 喜ばないのは単純に喜べるようなことがないだけだ。


「だってさ?」


「うっせ、俺は兄なりに気にすることが色々あるんだよ」


せっかく料理も並んでることだし適当に来羽の分も皿に取り分けて渡す。


いつも思うけど本当にこの学校は催し物が豪華だ、前夜祭だったり規模が他の学校と全然違う。去年の前夜祭は参加しなかったが小鳥遊から相当盛り上がったと聞いている、催し物が豪華だからこそここに受験する人が多いんだろうけど。


「ありがとお兄。ねぇ叶多くん、2人で食べようよ」


「うん、あっちの席が空いてるし移動しようか。それと隼人さん、月奈お姉ちゃんをよろしくお願いします」


「あー、何とかできる保証は出来ないけどなるべく頑張るわ」


茅森先輩の所に移動すると案の定如月が詰め寄っていて茅森先輩が呆れ気味にそれをあしらっている感じだった。


「ねぇ澄風くん、今までの男より断然面倒くさいんだけどこの子……どうにかしてくれないかな? 歳下だしきついことは言ってないけど……」


「あ、俺はちゃんと忠告したので。それを無視してナンパしているそいつが完全に悪いので何してもいいですよ」


「え?」


まぁ如月のことは放っておいて俺も料理を取り分けたし、あそこで1人寂しく食べてる小鳥遊の所に行くとしますかね。1年と3年は別の場所でやってるからな1人になるのはしょうがない、まぁそれは俺もだが。

 ︎︎胡桃さんはそもそもこういう大勢が集まる催し物が好きじゃなさそうだしなぁ……。


「一人で食べてないで俺も誘えよ」


「さっきまで来羽ちゃんと一緒にいたじゃん、というか別に一人で食べてないし」


隣の席を見てみると縮こまった胡桃さんがもぐもぐとパスタを食べていた。元から小柄なのに縮こまってたから小鳥遊の体で隠れてたのか。


「どうも……。やっぱり人が多いところは、あまり得意では無いです……」


「まぁそのうち慣れると思うよ、でも勿体ないなぁ……。左目のこともあると思うけど、長い前髪を切って整えれば可愛いくなると思うんだけど。あ、今も可愛いよ?」


「あ、ありがとうございます……」


日々から来羽の髪の手入れをしているから色々言っちゃうんだよな。別に今言ったことに嘘偽りは無い、胡桃さんは顔は整ってるし体型も小柄で可愛い、左目が隠れてるけど正直右目が見えてるだけで十分可愛いと思う。

 ︎︎あと、コミュ力が向上すれば男子からも人気が出るんじゃないかな?


「文化祭の時に言われてから、髪を寄せて頑張って目を合わせようとはしてますよ……? でも、まだ小鳥遊さんと澄風さんとしか話せないです……」


「まぁそんなに急ぐ必要はないでしょ、胡桃さん自身でどうしていくかを考えなよ」


胡桃さんが前髪をどうするかは知らないが、俺はあくまで意見を伝えただけだ。どうするから胡桃さん次第である。


「隼人、来羽ちゃんの髪の手入れをしてるからって他の人に軽々と言うなって」


「悪気は無い」


俺は思ったことを素直に言ってるだけだ。胡桃さんはポテンシャルあるので整え方次第ではとんでもなく可愛くなるだろう。


「澄風さんは妹さんの髪の手入れをされてるんですよね……? 迷惑でなければなんですけど、私にもやってもらっていいですか?」


「別にいいけど……胡桃さんの家に俺が行けばいい?」


「はい、またいつかよろしくお願いします」


いつになるかは分からないが、近いうちに胡桃さんの家にお邪魔することに決まった。というか女子の髪を俺が弄っていいのだろうか、俺は妹に頼まれたからやってるだけだ。


料理を食べていると、恐らく司会と思われる人がマイクを持って中央に立った。まぁ前夜祭だしなにかクリスマスっぽいことをするのかな。


「それじゃあ、注目! 今から王様ゲームを開催しまーす!」


前言撤回、クリスマスとか関係ないわ。王様ゲームとか絶対にふざけた命令をするやつが出てくるじゃん……。



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