第38話 雪遊び③

さてと、さっきとは状況が一変して来羽ちゃんも普通に僕の元まで飛ばしてくるようになった。横目で見てた茅森さん並のスピードは無いにしてもさっきみたいに余裕ということにはならないだろう。


「これで届くようになったし、小鳥遊さんに当てちゃうよー!」


「僕もそんな簡単に当たるつもりは無いよ、隼人も茅森さんとタイマンしてるしそれを邪魔させるわけにはいかないからね」


今僕がここで来羽ちゃんに当てられたらら来羽ちゃんは茅森さんと隼人のりの両方を当てるだろうし、せめてむ向こうのたたか戦いが終わるまでは僕が持ちこたえないといけない。


「そんな簡単に当てれると思わないでね、隼人に比べたら劣るけど僕だって反応速度はいい方だからね?」


「お兄が異常すぎるだけだからあんまり比べない方がいいと思うよ……。お兄はなんで反応できてるのか分からない時が多々あるから」


「まぁドッチボールの時も僕が取れないって思った球も普通に取ってたし、僕もそう思うよ」


そんな会話をしてる間も来羽ちゃんは雪玉を投げてきている。それを僕は避けながら反撃してるつもりだけど、来羽ちゃんが素早いから僕が投げた頃には別の場所に移動してるんだよなぁ。

 ︎︎まぁ時間稼ぎっていう点では今のままでいいかもしれないけど来羽ちゃんの体力より僕の体力が先に尽きるだろう。


ちなみに楓と奏ちゃんは時間も時間だし、既に当てられているということでもう家に帰っている。僕はまだ大丈夫だし茅森さんたちも大丈夫なのだろう、つまり当てるか当てられるまで雪合戦は終わらない。


「全然当たんないなぁー、お互いに避けながら投げてるから全然狙いが定まらないや」


「そろそろ体力も限界なんだよね、普段から体をあんまり動かしてるわけじゃないし……。このままじゃ僕がジリ貧だし、ちょっと近づかせてもらうよ」


最悪自分も当てられていいが、必ず来羽ちゃんに僕が当てないといけない。来羽ちゃんの仲間が全員当てられてるからこそできることだ、それであとは隼人と茅森さんの1体1で隼人が勝ってくれればいい。

 ︎︎僕は2mぐらいまで近づいて雪玉を投げた。


「うーん、そこまで近づかれたら避けれないかなぁ? でも私も当てたよ」


「元から相打ちが狙いだったしねー。というか、来羽ちゃんの体力多くない? あれ以上長引いてたら動けなくなってたよ」


これに関しては運動を普段からしてるとか以前に基礎体力の違いだろうなぁ。隼人も僕と同じように運動してないはずなのに茅森さんと今バチバチにやり合ってるからね。

 ︎︎いや隼人のバイト先での仕事が結構運動になってるのかもしれないね。



§§§



「そろそろ当たってくれませんかね?」


「そっちこそ。私は可愛い女の子だよ? 少しくらいハンデをくれてもいいんじゃないかな?」


「冗談じゃない」


あんな速度の玉を投げる人にハンデなんかあげてられない。というか自分で可愛い女の子というのはどうなのだろうか……? いや別に茅森先輩が可愛くないと言ってるわけじゃないし、世間的に見てもかなり可愛い部類には入ると思う、けどそれを自分で言うなという話だ。


「頑張れお兄ー!」


「絶対に勝てよ隼人ー!」


「頑張ってください隼人さん!」


「え……私の味方は? とりあえず叶多は帰ったらお話だね」


まぁ普段からからかいまくっていたら応援されなくもなるだろう、というか叶多くんが可哀想だな。とりあえず全員から応援されてるわけだし、負けるわけにはいかないな。


「誰にも応援されてないとはお姉さん悲しいなぁ」


「叶多くんに応援されてないのは茅森先輩の行いが問題ですよね? 前から言ってるじゃないですか、からかうことさえ辞めればいいお姉さんになれると」


「いやぁ生き甲斐を奪われたら私はやる気が無くなるからね、これからもずっとからかっていくよ」


もう直らないかぁ。茅森先輩がいつからからかい始めたのかは知らないけどそこで癖になっちゃったんだろうなぁ、恐らく最初の被害者は叶多くんか茅森先輩の友達だろう。


「もう暗いので投げれるのは残り1球、それで全て決めましょうよ」


「1球勝負か、いいねぇ」


お互いに1球だけを持って動きを見る、投げて避けられてしまえばそこで負け、いつどこに投げるかの駆け引きが重要である。かといって相手が投げるのを待っていたら埒が明かないのでお互いに投げるタイミングを考えないといけない。


「「っ!」」


投げるタイミングは同じだった。同時に投げられたボールはお互いに当たることはなく、雪玉同士で衝突し砕けた。


「あ、こんな珍しいことって起きるんですね。じゃあ勝負は引き分け……ですかね?」


「そういうことになるだろうねぇ。雪合戦も終わった事だし、私たちは帰ることにするよ、じゃあ明日のバイトの日にまた会おうね澄風くん」


「また明日」


雪合戦はなんと引き分けで幕を閉じだ。結構長い間外にいたし、体も冷えてると思うので長めに風呂に入って体を温めるとしよう。


「来羽、家の中に入るよ。体も冷えてるだろうし先に風呂入ってきなよ」


「ん、わかった。体が冷えてるのはお兄も変わらないと思うけどね?」


久しぶりに遊んだけど、楽しかったなぁ。来年はこんなことできないだろうし、今年楽しめてよかった。

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