第29話 体育祭③

次の競技はクラス対抗のドッチボール、これは今日行う最後の競技である。ドッチボールは10クラスのトーナメント式でやるらしいので今日は2試合だけで準決勝以降は明日に持ち越しだ。


ドッチボールは体育館で行い、その間外では1年が競技を行っている。効率的でいいと思うが1年に友達がいた場合見れないのが難点か。


「初戦のクラス、ドッチボール部のやつが3人いるらしいけど」


「初戦から優勝候補のクラスかぁ……でもそういうチーム相手の時こそより潰してみたいと思うだろ?」


「まぁ僕も、優勝候補に勝つ金星をあげる展開は好きだよ。だからドッチボール部の奴とか気にせず全力でやろう」


やっぱり小鳥遊はそういうところは見た目と声に反して男なんだよな。というか小鳥遊に関しては昔すぎるけど最初、声を聞いた時に高くね? って思ったし、見た目は女子寄りの男子って感じだ。まぁ男の娘だね、小鳥遊は。


とりあえずコートに入る前にジャンパーと外野を決めないとな。ドッチボールの詳しいルールは知らないけど、分かりずらいからジャンパー以外のルールは遊びのドッチボールと同じルールらしい。


「ジャンパーは背が高い人の方がいいと思うけど、俺らのクラスに飛び抜けて高いやつなんていたか?」


「いないね、みんな平均的で低いやつも高いやつもいないかな、僕を除いて」


確かに小鳥遊だけは女子を含めても小さい方かな。まぁ背が飛び抜けて高い人がいないのならジャンプ力が高い人をジャンパーにした方がいいかな。


そして選ばれたのがバレーボール部の身長は170ぐらいの清水さん、まぁ身長は相手のジャンパーより低いけどバレーボール部だし、なんやかんや上手く行きそうではある。そして2人が定位置についてボールが投げられ、先にボールを触れたのは相手の方だった。


やっぱりドッチボール部の人には勝てないか。とりあえずドッチボール部の奴にボールが渡った以上キャッチすることは考えない方がいいな。


そして最初に放たれたのは外野へのパス、こっちからしたらドッチボール部からドッチボール部に渡ってるから何も変わらないんだよな。俺たちが勝つためにはそのドッチボール部を先に倒さないといけないが、まずボールを取れるか怪しい。


「勝つためには誰かが取りに行かないと、なっ!」


「あれを取りに行けるって化け物だねぇ……。僕には無理だよ、怖すぎて近づきたくない」


さてと、外野からのボールは何とか取れるが、内野に残っている2人はどうだろうか。


まぁとりあえずボールを手にした事だし、早速ドッチボール部のどちらかを狙うとしようかな。できることならこの一撃で1人ドッチボール部の奴を減らしておきたいが、恐らく無理だろう。


「っ! あ、やっぱり無理か」


「いやいや、呑気に話してる暇なんてないって。下がらないととんでもない威力のボールが直撃するよ!?」


恐らく、さっきキャッチしたから今度もキャッチされることを危惧して相手は別の誰かに投げる可能性と方が高いだろう。


「危なっ!」


予想通りボールは他の誰かに飛んで行った、というか避け方が上手いな。さてと外野の玉は1度取ったし、そこまで恐れる必要は無いな。


「よっと! 誰狙おうかなぁ?」


ドッチボール部の奴に投げても取られるだろうし、その後ろにいる男子を狙おうかな。端に固まってる女子を狙えば簡単に当てられる、でもそんなことできる男子なんていないだろう?


ずっと前から思ってるけど男子が女子を狙うと色々言われるのにのに女子は誰を狙っても何も言われないのってちょっとおかしいよね。まぁ力の差を考えたら当たり前なのだが。


まぁそんなことは置いておいて俺が狙うのは手前にいる奴の後ろにいる奴、狙いづらいが逆に狙いづらいからこそ向こうも狙われるはずないと思ってるだろう。まぁ狙うには前に居るやつが邪魔だけど……本気で投げれば横に避けてくれたりしないかな? 無理か。


「うーん、ここからじゃ当てるの厳しいから……無難にパスかな」


今相手は後ろに下がっている、そして俺は今は人と人の隙間に結構強めのボールを投げた。これを外野がキャッチしてくれたら1人はまず当てれると思うが、意思疎通はしてないし望み薄ではある。


予想通りボールはそのまま後ろに飛んで行った、やっぱり賭けはダメだな。


「さーてと、長引きそうだし考え無しに本気で投げるのはやめにしよう。小鳥遊、狙う時は相手の肩を狙ってくれ、1番そこが取りずらいはずだ」


「まぁそうかもしれないけど、スピードは出ないよ? 小柄だし」


「まぁそれは仕方ないことだし、とりあえずスピードが無いんだったら場所を狙うぞ」


未だにお互い当てた数はゼロ、それに制限時間もあるし先に当てた方がだいぶ有利だな。外野からパスされたボールを胡桃さんにボールを渡して当ててもらおう。


「男子は女子を当てられないからさ。とりあえず誰でもいいから女子を当てて欲しい、そこからは何とか持ち堪えよう」


「ドッチボールをするのは初めてですけど、頑張ります……!」


さてと、リレーは速かったし運動音痴ってことはないだろう。まぁ走るのと投げるのじゃ全然違うけどね。


「えっと、こうやって……えいっ!」


可愛い声と共に投げられたボールは前には飛ばず後ろに飛んだ、手を離すのが早すぎたのだろうか? ただ、それでいい。


近くにいた小鳥遊がそのボールをキャッチして、女子だからと取れると前に来ていたやつを狙って投げる。それが見事相手の足にヒット、これでこちらが1歩リードだ。








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