第27話 体育祭①

今日は2日間続く体育祭の1日目、3年だけは受験があるので一学期のうちに文化祭と体育祭は終わらせている。


基本的に自分たちで種目を決めるのだが毎年ほとんど変わることがないのがリレー、まぁそれが選抜リレーや借りものリレーに変わる時はあるがリレー系は存在している。他には綱引きなどが今年の体育祭で行われる種目だ。


「そういやさ、借りものリレーってお題の内容は生徒たちが決めるんだったよな?」


「僕達も書いたしね、まぁ1つや2つくらいはなんかやばいことでも書いてるんじゃない?」


生徒が書く以上はふざけてそういう内容を書くやつが出てきてもおかしくはないか。まぁ委員会のやつがお題を確認してると思うので何がセーフかはその委員会の奴ら次第である。


どこまでがセーフなのかは知らないがみんなが嫌がる下ネタ系は排除されてるだろうけど、好きな人系は残ってる可能性もある。そういう系が来たら本当に困るんだけどな、唯一話せる女子の友達があんな感じだし。


「小鳥遊、とりあえず開会式始まりそうだし外に行こうぜ」


「ん、分かった」


外に向かうと既に大体の生徒はそこに集まっていて、あと二階の窓から3年生が覗いてきている。この調子なら授業の合間に見るつもりなのだろう、まぁ3年の知り合いなんて居ないから見られても関係ないんだけど。


よく考えたら俺の知り合いが少なすぎるんだよな、友達と言えるのは星野と小鳥遊と胡桃さん、そして友達とは言えないが知り合いなのが叶多くんと茅森さん。年上の人と知り合いの数は普通だと思うが友達の数が3人は他の生徒と比べても少なすぎるだろう。


クラス替えの時に大体の人は色んなクラスに友達がいるはずなのでクラスが替わっても誰かしら友達がいるだろう。でも俺は同学年での友達は胡桃さんと小鳥遊しかおらず、クラスは10クラスもあるので同じになる確率がとても低い。


まぁ3年になったら受験だし友達がどうとか考えてる余裕もなくなるか、俺だけかもしれないけど。


そんなことを考えながら無駄に長い校長やその他先生の話を聞いて、ようやく開会の宣言がされる。最初は1年が何かをするらしいので、一旦テントに戻るとしよう。


「おはよう胡桃さん、運動するから今日は髪型変えたんだね。可愛いよ」


「あ、えっと……ありがとうございます」


「隼人は無意識でそういうことを言う癖を無くせないの? さっきので何人の人を陥れたのか……」


陥れたって言い方は違くないか? 女の子が髪型を変えたらそれについて褒めるとどこかで聞いたのでそうしてるだけだ。まぁ元から可愛い女の子はどんな髪型にしても可愛いと俺は思うけど、俺は男なのであんまりそこは偉そうに口を挟むことは出来ない。


俺が正しいと思ってるのがイメチェンしてきた女の子は褒めるべきっていうことだ。


「隼人はさ、女の子に可愛いとかそういうことを言うのにちょっとの躊躇いとかないの?」


「キモがられるかもしれないって考えたことは何回もあるさ、それでも俺は思ったことを言いたい。まぁ前提条件として相手は友達じゃないとそんなこと言わないけど」


友達でもない人に急に可愛いなんて言ったら流石に変人だろ。俺だって胡桃さんと来羽にしか可愛いなんて言ったことがない、星野は……褒めたら逆になんか言われそうだな。


「自分が思ったことを、素直に言えるのはすごいと思います……。私には絶対に出来ないから……」


「人はそれぞれ得意なことと不得意なことがあるんだから胡桃さんが、俺みたいになる必要は無いからね。少なくとも、俺みたいにはならない方がいい」


胡桃さんは俺のことをまだ知らない、妹がいることや星野に嫌われてること、そんなことはどうでもいい。何より、俺が不必要な人助けをして怪我して帰ってくることを知られて引かれないだろうか? 一般人からしたら俺の行動はだいぶおかしい、それに胡桃さんからしたらもっとおかしく思えるだろう。


「隼人」


このことは胡桃さんに言うべきことでは無いな、言ったら胡桃さんから心配されそうだ。俺は自ら巻き込まれに行ってるんだ、心配してもらう権利は無い。


「隼人、お前が居なくなった時に悲しむ奴がいるのを忘れるな。今はもっとそう思う人が増えてるんだ、やめろとは言わないが自分の命は大事にしろ」


はは、久しぶりに小鳥遊の真剣な声を聞いたな、俺だって小鳥遊が言ってることが正しいと思ってるさ、ただ俺は自分の幸福より周りの幸福を選んだだけ。周りのことを考えてもうやめろだって? 誰にも迷惑をかけるわけじゃない、だってそうだろ? 俺はただ周りの人に幸せになって欲しくて動いてる馬鹿な男なんだからさ。


まぁ、これからはなるべく自重するとしよう、少なくとも関係ないことは。小鳥遊や来羽、俺の身内に何かが及ぶなら俺は動く。


まぁいい、俺が関わりに行かなかったら何も無いはずなんだ、だったらそれでいい。とりあえず今は体育祭、次は俺たちの借りものリレーだがまぁ1年の競技はまだ終わってないし観戦するとしますかね。


「胡桃さん、何かが起きた時に俺はどこかに行くと思う。だけど絶対に俺を探さないで」


「それは……どうしてですか? 澄風さんは大事な友達なんです、いなくなったら、私は嫌です」


少し前なら俺はこんな質問に迷わなかったんだろうな、だけど今の俺には難しい質問だ。


その質問に答えられずに時間は過ぎて、俺たちの借りものリレーの時間になってしまった。答えは……体育祭が終わるまでに考えておこう。






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