第24話 妹と姉①
星野が体調を崩したと小鳥遊経由で連絡が来たので俺は今星野の家に向かっている。星野自身も出来れば小鳥遊に看病してもらいたかったんだろうけど、あいつは土曜日バイトだ。
そして暇なのが俺だけらしいのでメールの方で『不本意ですがお願いします』と言われた。ぶっちゃけ2人を同時に相手するのは厳しいので奏ちゃんか星野のどちらかは念の為連れてきた来羽にまかせるとしよう。
まぁ連れてきた本当の理由は俺というか男には見られたくないものが部屋にはあると思うからというのが1つ、そしてあとは来羽の方が料理が上手いからである。
「せっかくの土曜日に来羽も巻き込んでごめんな、来羽には全く関係ないことなのに」
「大丈夫だよお兄、今日は私も暇だったから。それにお兄は友達を看病しに行くんでしょ? その手伝いなら断れないよ」
来羽と星野の関係と言えばショッピングモールで少し話したりとかその程度なはずなのに。まぁそれも俺に感化されてるからかもしれないけど、俺が関係ない人も助ける人間だからね。
「それに、お兄のことを嫌いって言ってるのが納得いかないから」
「まぁまぁ、俺は別に気にしてないし好みは人それぞれだからさ。それに星野は俺のことが嫌いでもこうやって今頼ってくれてるんだからさ、そんなこと気にしたらダメだって」
自分の体を優先して嫌いな俺に頼ってくれてるんだからそれだけで十分だ。星野と来羽を合わせたら言い合いになりそうだけど、とりあえず今日のところは星野が病人なのでそんなことにはならないと信じたい。
星野の家の前までとりあえず来て、家の鍵はポストの中に入れてるとの事らしいので中を確認してあった鍵を使ってドアを開けた。
「奏の世話をしないといけないのに風邪をひいて、その上澄風先輩に看病してもらうことになるなんて……」
「来てやってるだけマシだと思ってくれないかな? 星野1人だったらどうもできないだろ? まぁ星野なら無理して動きそうだけど」
「そりゃあ自分の体調なんて気にしてられませんよ、今奏を守れるのは私しかいないんですから」
「別に今みたいに誰かに頼ればいいじゃないか、俺じゃなくとも星野には小鳥遊だったり頼める友達はいるだろ?」
小鳥遊以外に気兼ねなくそういうことを頼める友達はいないからなぁ……その小鳥遊もバイトだし。胡桃さんならお願いすれば来てくれそうだけどさすがに距離があるし来てもらう訳には行かない、と言っても俺が友達を誰か呼ぶ時なんて来羽と俺が同時に体調を崩した時だけだと思うけど。
「まぁいいや、ご飯とかは来羽に言ってくれ。迎えとか買い出しとかは俺が行くからさ」
メモを手渡されたので早速買い物に行けということだろう。まぁお金は後で返してもらうとして、とりあえず行ってこよう。
「じゃあ俺が買い物に行ってる間、星野は来羽に任せたぞー」
「わかったー」
§§§
お兄が居なくなったし、これでゆっくり星野さんと話ができるね。
「今日はお兄が来てくれて良かったね?」
「不本意ですけどね? 私は別の人に頼んで無理だったのでいつも通り頑張ろうと思ってたのに、澄風先輩が来てしまったんですから」
星野さんはお兄のことが嫌いらしいけど、なんかお兄に嫌われる要素なんてあったかなぁ? 人助けをするのはいいけど、しすぎて怪我して帰ってくるのはさすがに……と思ってはいるけど。それは妹視点としてだし、星野さんはなんの接点もなかったお兄の後輩なんだから嫌う理由が全然分からない。
「いやぁ風邪をひいてるんだから無理しない方がいいよ? 今日無理したら明日も風邪かもしれないからね。それだったら今日休んで明日から万全になってた方がいいでしょ?」
「それはそうですが、奏をお世話しないといけないんです」
「その手助けに私たちが来たんだから、今日は私たちに全て任せてくれればいいのー」
全て1人でやろうとするのはお兄と似てるなぁ、お兄と違って覚悟は無いと思うけどね。お兄はもう自分の身を誰かのために使うことしか考えてないし。
「それで、ひとつ聞きたいんだけどなんでお兄のことが嫌いなの?」
「澄風先輩に内緒にしてくれるのなら私は話しますよ。まず前提として、私は自分の身を大切にしない人は嫌いです」
「それ貴方自身も含まれるのでは?」
「私は澄風先輩みたいに自分に関係ないことで自分の身犠牲にしてるわけじゃないので」
星野さん自身も大切にしてないと思うけど、それは置いておいて……自分の身を大切にしない人が嫌いだったらお兄なんて真っ先に嫌いになる対象じゃん。でも、お兄の話によれば星野さんは今年初めて出会った時からお兄のことが嫌いだったらしい。
だから以前に会っていたと考えるのが普通だろうけど……お兄が助けた人の中に星野さんが居たのだろうか?
「私と澄風先輩が出会ったのは去年、コンビニで私が襲われてた時でした。その時に助けてくれたのが澄風先輩、それで怪我をしてしまったんですけど、その時からですね嫌いだと思ったのは」
「ふーん、でもお兄は怪我をしてまで助けてくれたのに、嫌いなんて言うのは失礼じゃない?」
「あの時に嫌いと言ってしまってから私はずっと自分に嘘をついて嫌いと言うしかなくなってたんです。本当は澄風先輩は嫌いじゃないですし、感謝したいです。でも今更遅いと思って……」
お兄はそんなことなんて気にしないと思うけど、まぁ決断するのは星野さん自身だよね。
「お兄はいつでも気にしないと思うからさ、星野さんが今更だと思っても言いたいなら言えばいいと思うよ。それか、徐々に近づいていくとかさ」
「私も今、徐々に近づいていく方向で動いてます。奏を助けてくれたのをきっかけに話すようになったり、この前だったら渡し方はあれでしたが文化祭の余り物をあげたりもしました」
「まぁ、そんな感じでいいんじゃないかな。でもお兄は2年生、その意味は分かるよね、だから早く気持ちに素直になった方がいいよ」
この事はちゃんとお兄には秘密にするし、私が介入することでもないし、本当に星野さん次第かな。
「連絡先を交換しておこうか、いつでも相談乗るからさ」
「よろしくお願い……いや、よろしくね来羽ちゃん」
「うん、よろしくね星野さん」
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