第23話 例え嫌われていたとしても

文化祭が終わり、俺たちは出し物の片付けや喫茶をしていたクラスは残った食べ物を配ったりしている。みんなで頑張って作ったジェットコースターを撤去するのは名残惜しいが文化祭のそういう決まりだ。


ジェットコースターを解体してできた木は持ってきた奴が家に帰ったから机だとか椅子などに加工するらしい。


「文化祭が終わったし、すぐに体育祭かぁ。それも終わったらあとはクリスマス祭だけだし今年も終わりが近づいてきてるな」


「今年が終わったらもう受験だけど……2人で受かれるといいね?」


塾に行ってる小鳥遊ならまだしも塾に行けない俺は落ちる可能性の方が高いのでそういうことを言うのはやめて欲しい。まぁもちろん俺も2人で一緒に受かれるように努力はするけどさ、それでも不安は残る。


「まぁまぁ、本当にヤバいって思ったのなら僕と一緒に勉強しようよ。胡桃さんも呼べたらいいんだけど、さすがに違う学校だろうしなぁ」


テスト順位の表を見ている時、常に10位以内に白河胡桃という名前はあった。前までは気にしていなかったが今となっては友達なので次のテストも10位以内だったら褒めてあげようかな?


要はいつも10位以内にいる人ならもっと上の大学に進学するだろうということだ。


「あ、あの! 私も2人と同じ大学に行ってもいいですか……?」


「え? まぁそれは胡桃さんの自由だからいいんだけど、胡桃さんならもっと頭のいい大学に行けるんじゃないの?」


「確かに行けるかもしれませんけど……2人の居ない大学に行って1人になるのは嫌なので、友達である2人がいるところがいいんです」


俺たちの同じ大学に来るつもりなのなら胡桃さんからしたら結構余裕を持てるだろなぁ、もしかしたら俺たちが胡桃さんに勉強を教わるかもしれない。そうやって3人で勉強して3人で合格出来たのなら映画みたいだ。


まぁその映画みたいなことを現実にするために努力し続けよう。


「胡桃さんの願いを叶えるためにも僕たちが頑張らないとね。まぁ胡桃さんは普通にいけると思うし、僕達が胡桃さんから勉強を教わることになるね、これは」


「が、頑張りますっ!」


いずれ3人で勉強する時が来ると思うのでその時はとてもお世話になると思う。だって俺たちと80位も差があるんだ、教わることはとても多いだろう。


まぁまだクリスマス祭があるし、考えるのはそれからでいいか。



§§§



片付け終わって1人で廊下を歩いていると、珍しく星野が2年生のフロアに来ていて周りを見渡していた。何をしてるのかと見つめていたら、目が合ってこちらに向かって走ってきた。


「探しましたよ、澄風先輩。はい、文化祭の喫茶で余ったのであげます」


「わざわざ俺のために渡しに来てくれたの? サンキューな、星野」


「別に澄風先輩のために渡しに来たわけじゃないです! ただ余って誰も欲しがらないので都合よく押し付けられる澄風先輩に押し付けただけですから!」


いやぁ押し付けるのに都合がいいって言ってるけど別に押し付けられて困るものじゃないんだよなぁ……お菓子だし。俺が甘いものが苦手と知って渡してきてる可能性もあるが、そうしたら俺は来羽に渡すだけ……そういえば最近来羽はスイーツを禁止してるんだった。


理由は聞いていないがだいたい予想できるしそもそもこの事は聞いてはダメなものだろう。まぁ我慢して俺が食べるとしますかね。


今のうちに甘いものに慣れておかないと友達の家とか行った時に甘いものが出てきた時に困るしね。別に辛いものが好きなわけじゃないんだけどなぁ、なんで俺は甘いものが嫌いなんだろう。


「そうは言ってもさぁ、わざわざ俺に直接渡してる時点で押し付ける気で来たわけじゃないでしょ? 本当に俺のことが嫌いで押し付けるつもりだったのなら小鳥遊に預ければ良かったわけだし」


「深く考えないでください! 私は、澄風先輩に、押しつけに来た、ただそれだけですっ!」


「あーはいはい、分かったからそんな大声出すなって。一応ここ学校だからな」


今回は片付け時間ってこともあって周りに人が居なかったからいいものの、居たら前と内容は違うだろうけどまた噂されるところだったって。


「悪いのは澄風先輩ですから」


「理不尽だなぁ……。別に今に始まったことじゃないからいいんだけどさ、まぁ俺が責任を負って星野が助かるのならそれでもいいけどね。俺の中では一応友達なんだし、星野が負う必要のない責任は先輩である俺が負うさ」


「馬鹿なんですね」


まぁ俺は馬鹿なんだろうな、今も昔も変わらず。手の届く範囲にいる人を助けるとか綺麗事を言って色んなことに関わって、怪我してきた。


それで助かった人もいるし、俺としても間違ったことをしたとは思っていない。


「俺はこれからも馬鹿で居続けるからさ、まぁ見守っておいてくれ。怪我することも多々あるけど、星野は気にしないでくれ」


「き、気にしませんよ……嫌いな澄風先輩のことなんて」


「そうか、ちゃんと星野のことも助けるから安心していいぞ」


去年からちょっとという感覚が少しおかしくなってきている。前なら、見知らぬ人なんて助けなかったし怪我を負うとわかっていて関わることなんてしなかったのにな。


良くも悪くも、あの子は俺を変えてくれたな。


「澄風先輩に守られなくたって……」


「例え星野に嫌われていたとしても助けるよ」


「澄風先輩は別に私の彼氏でもなんでもないじゃないですか、過保護すぎます」


「友達だから、じゃだめか?」


「……もう勝手にしてください」


俺はその後多目的室に戻って袖を捲って腕の傷を確認する。


やっぱり、あの時の子と星野はどこか似ているところがある。


「帰るよ隼人、あと楓がよろしくお願いしますだってさ。どういうこと?」


「小鳥遊には関係ない事さ、とりあえず帰るぞ」


やっぱりどん底の好感度からは段々と上がってきているようだ。前みたいに全く関わらない状態じゃなくなったし言ったからには有言実行しないとな。

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