第22話 文化祭③
3人でも楽しめる場所と考えた時に、一番最初に出てきたのがゆっくり話が出来る喫茶だったので星野のクラス以外の喫茶の中に入った。行く道中で星野とすれ違って「澄風先輩って小鳥遊先輩以外に友達いたんですね」と言われた、来羽といい……さすがに辛辣すぎやしませんかね?
「えっとぉ……さっきの子はちゃんとした友達だから、勘違いしないでね?」
「まぁまぁ、さっきまで隼人の友達は僕と楓しかいなかったのは事実じゃん? 楓が知らないのも無理ないって」
楓が友達かどうかは普通に怪しいところではある。連絡先は交換してるし、雑談もするけどさっきのすれ違いざまの言葉では自分のことは俺の友達に含めていなかったしね。
3人でとりあえず席に座って、俺たちは1回食べているので飲み物だけを頼んだ。胡桃さんは絶対に自分で払うって言うと思うし、隠れて小鳥遊とジャンケンして負けてしまった今回の料金は俺持ちだ。
「えっと、その星野さん……は、2人の友達なんですよね?」
「俺は最近友達なったんだけどねー。というか今も友達言っていいか怪しいラインにはいる」
「僕には普通なんだけどねぇ」
そう、小鳥遊には普通の対応をしてるから原因は星野自身にあるんじゃなくて俺だと思うんだけどなぁ……。星野には今年初めて会ったし、初めましての時からあんな感じだったしな……。
それ以前に何かあったとしても、俺は昔から去年までは小鳥遊としか関わってこなかったし、星野のような女の子は去年以前に見たことは無い。唯一コンビニで女の子とは関わったけど、あの子の顔はあんまり見えなかったし男性自体が苦手そうだったからなぁ。
俺より1つ年下の子だったと思うけど、どこの高校に通っているのだろうか?
「星野のことは後々何とかするつもりだからさ。どっちにしろ今は話す機会がないわけだし」
「あ、あの! 星野さんと、仲良くなりたいとか思わないんですか?」
「まぁ仲良くなりたいとは思ってる、でもどうしても、とまでは言わないな。別に星野と仲良くなくても困ることは無いし向こうから関わってこないのなら俺は何もしない」
前も言ったが、別に星野と関わらなくたって困ることは無い。俺は星野に対してなにか特別な思いは無いし、星野自身も関わらなくていいのなら俺と関わらないはずだ。
まぁ星野が助けを求めてるのならもちろん助けに行く。俺が助けるのは俺の手が届く全ての人だ、たとえそれで自分が不幸になるとしても俺はそのスタンスだけは崩さない。
ゆっくりし終えた俺たちはお化け屋敷をしているクラスへと移動する。ちなみに胡桃さんの要望なのだが……見るからに体が震えてるような気がする。
「胡桃さんってもしかして怖いの苦手なの?」
「べ、別にそんなことはないです、よ?」
どれだけ聞いても胡桃さんはそういうのでとりあえず中に入った。まぁテーマパークとかのとは違ってこれは文化祭のやつなんだしそこまで怖くないでしょ。
と思ってたけど、胡桃さんからしたら充分怖かったらしい。現状、俺の手を抱きしめてその横から顔を出している状態。
「怖いのなら最初から来なかったら良かったのでは?」
「あ、あのですね? さっき入退院を繰り返したって言ったじゃないですか。それで……こういうのは初めてなので気になったので入ったんですけど……ひゃい!」
まぁ初めてなら入ってみたくもなるかぁ……。さっきから驚いてる胡桃さんなんだけど、驚き方としては100点だろう。
出てくる頃には少し涙目になっていた、「かわ……」あぶない、また来羽の時みたいに言ってしまうところだった。流石に出会ってから時間も経ってないのに言うのはまずい、もう少し時間が経ってからじゃないと変人扱いされるかもしれない。
お化け屋敷を出てから周りの視線が凄いんだよなぁ、廊下を抱きつかれながら歩いてるんだから視線が集まるのは当たり前だけど。横を歩いてる小鳥遊は気楽そうだな、マジでどうにかしてくれないかな。
「うぅ……見られるのは恥ずかしいです。昔と違ってちゃんと相手の視線が見えるので」
「見られてる理由は胡桃さんにあると思うけど? 別に俺はいくら見られようが、勘違いされようがいいんだけどさ、胡桃さんはいいの?」
胡桃さんは自分の手と俺の顔を2度見した後、飛び跳ねるように抱きついていた手を離した。うーん、今まで気づいてなかったのかぁ……。
「あぅ……男性の方に抱きついたところを、見られるなんて……澄風さんは嫌じゃなかったです、か?」
「俺は大丈夫だよ、別に胡桃さんなら色々勘違いされてもいいし。それで胡桃さんが困るなら俺が何とかするからさ」
「っ!?」
胡桃さんが顔を真っ赤にして顔を伏せる、そして隣を歩いてる小鳥遊が俺に対してジト目……俺なんかしたか?
「これだから無自覚女性キラーは……。隼人は中学の時に何人の女性を無自覚のうちに落としてきた覚えているのかい?」
「いや知らんがな、誰も落としてないが? というか俺はただ単に困っていたところを助けてあげてただけだからな?」
そこで再度小鳥遊からため息、俺が悪いのか? これ。
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