第21話 文化祭②

まぁ帰ってこなかったあの3人組のせいで2人きりで店番することになったのだ。胡桃さんはあんまりクラスで楽しそうに話しているところを見たことがなかったのでどんな人かと思っていたが、可愛かった。


来羽と同じ感じで撫でちゃった時の反応も可愛かったし、このことが知れれば人気になると思う、前髪で目が隠れてるけど切ればもっと可愛くなると思うのになぁ……。


店番すると言っても星野のところのコスプレ喫茶みたいにやることが多いわけじゃないし、ぶっちゃけ説明をするだけなのである。


「その前髪でちゃんと見えてるの?」


「全然見えてないです……。なので前から来る人とか、前にあるもの物にぶつかってしまうことが多くありますね……」


「危ないからせめて見えるぐらいまで切るとか、ヘアピンで寄せるとかした方がいいよ。前が見えなかったらいずれ大怪我するよ?」


前から来るものが見えないのなら突然来るかもしれない車なども見えないんだ、そんなままだと絶対にいずれ怪我をする。まだ出会って数分の人に心配しすぎとか言われるかもしれないが、心配に出会ってからの時間なんてものはのは関係ないだろう?


「目が合うのが恥ずかしくて伸ばしてるんです……。でも、自分の身体の方が大事ですもんね、頑張ってみます……!」


そう言って胡桃さんはポケットからヘアピンを取りだして左側の髪を寄せて留めた。あれ、左目が白くなってるけど虹彩を負傷しているのだろうか?


「虹彩を負傷してるの?」


「とあることがありまして、左目の虹彩を負傷してしまったんですよ。し、視力は今のところ問題ないので安心してくださいね?」


ね、いずれ視力も低下してくるのだろうか? いつ負傷したかによると思うけど、今のままずっと過ごせる訳では無いだろう。恥ずかしいから目を隠していたと言っていたのでこの虹彩のことはあまり気にしていないのだろう。


「隠すならその負傷してるところを隠した方がいいんじゃない?」


「あうぅ……それもそうですね」


少し恥ずかしそうにヘアピンの位置を入れ替えて、青色の右目が見えた。元がこんなに綺麗な青色の目だったと思うと左目も青色だった場合も見てみたいと思ってしまう。でも、虹彩は戻らないだろうしさすがに見たいというのは胡桃さんに失礼だ。


俺だって腕に結構デカめの切り傷があるし、それがない時を見てみたいって言われたらキレる。


「お兄、2回目来たよ!」


入口には来羽と叶多くん、そしてもう1人はハロウィン祭の時に一緒にいた女の子(名前知らない)がいた


「俺は1回目行ってたこと知らないからね? 2回目なら説明する必要ないよねー、じゃあ1人ずつ乗って」


「澄風さんの妹ちゃん……ですか?」


「あれ、お兄って星野さん以外に女の子の友達居たっけ? こんにちわ!」


まぁついさっき友達になったので来羽が知っているわけは無いのだが、さすがに言い方が酷すぎやしませんかね、妹よ。まぁ確かに来羽の中では俺の友達は小鳥遊と星野しかいないことにはなっているか。


「え、あ、こんにちは……」


胡桃さんは年下相手でも変わらずこんな感じかぁ……。まぁ目を合わせるのが苦手なんだから年下とかは関係ないのかな? 昔からこうだったのか虹彩を負傷した時からこうなったのかは不明だけど。


「胡桃さん、一応紹介しておくとこの子は妹の来羽。可愛くて、怒ってるところも可愛い、可愛い俺の妹だよ」


「か、可愛い以外は……。澄風さんってし、シス……や、やっぱりなんでもないです」


「さすがにシスコンって思われても文句言えないよ、今のは。環境的にそうなるのは仕方ないと思うけどさ」


ひとまず今の俺たちの環境を説明して、シスコンになるのが仕方ないということを理解してもらった。前までは否定してたけど、今となっては自分でもシスコンだなぁと思う。


「2人きりっていうのは、憧れます……。私はずっと入退院の繰り返しで学校にも行けず、お見舞いに来てくれる人もいなくて……1人でしたから」


少し静かな時間が流れて胡桃さんが「少し、暗い話をしてしまいましたね……ごめんなさい」と謝ったが別に謝らなくてもいい。胡桃さんにとってこの出来事は辛いだと思うし、気が済むまで吐き出してくれたらいい。


とりあえず来羽達が退出した後に俺は胡桃さんに話しかける。


「友達になりたての俺が言うのもあれだけどさ、今は俺が友達だから辛いことがあったら相談していいんだよ。1人で抱えこむ必要は無いから」


「はい、ありがとうございます……」


そして1時間が経ち、次の5人組と交代した。ちなみに帰ってこなかった3人組は今委員長に怒られている。


残りの時間は胡桃さんと小鳥遊と一緒に回ることにした。話を聞いていた限り、俺が初めての友達らしいんだ、俺が一緒に回ってあげなければ胡桃さんは1人で回らないと行けなくなる。今まで1人で寂しい思いをしていた分、今から楽しんでもらわないと。


「よろしくね、胡桃さん」


「は、はい! よろしくお願いします小鳥遊さん」


「それじゃあ自己紹介も済んだことだし、3人で回るとするか」


「おー!」 「お、おー!」

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