第17話 お出かけ②

来羽も面倒なことに巻き込まれてるものだ、あいつは俺を見て今回は引いたけどどうせまた何かしら行動を起こしてくるだろう。学校の中までは俺の手が届かないんだ、せめて届くところまでは俺が守ってやらないとな。


俺だって来羽と付き合うなと言ってるわけじゃないんだ、ちゃんとしていてたら俺が間に入ることは無い。親が近くにいない以上はその判断を俺がしてあげないといけない、来羽が幸せに過ごしていくためにも。


とりあえず一旦あいつは去った事だし、来羽の服について考えるとしよう。全て可愛いと思うが着ているところを見てどれが1番か決めないと。


「じゃあまずはこれ! カーディガンとロングスカート。まぁ今まで通りのやつだね」


そしてまた来羽は試着室に戻っていき、次の服に着替えてまた出てくる。


「それでね、2つ目と3つ目は同じやつなんだけど、お兄的には水色か白色どっちがいい?」


「カジュアルドレスかぁ……正直どっちも来羽に似合うと思うし両方選びたいけど強いて言うなら俺は白の方が好きかな」


「じゃあ白の方にして、最初のやつとどっちが私に似合うと思う?」


お金を出すのは俺なので両方買ってあげたいがそんなことをしたら『お金は大切にして!』と来羽に怒られてしまうので、いつものコーデかカジュアルドレスかを選ばないといけない。別にお金は俺のバイト代や親からの生活費があるし何も問題は無いのだが、2人で生活してる以上は無駄なお金を使いたくないのだろう。


「1番目のやつは持ってると思うし、俺としても新しい来羽が見たいからカジュアルドレスの方かな」


「分かった! それじゃあレジに向かおう、お兄。……別に私のものばかりじゃなくてお兄も自分の欲しいものを買っていいんだからね?」


「いいんだよ、俺は。来羽が幸せに過ごせていたらそれでいい」


とりあえずレジに向かうと、星野が居た。まぁせっかく午前中で終わってるんだしどこかに出かけるという考えが被るのは当たり前か、ちゃんと奏ちゃんもいる。


「やっぱり大体の人は出かけるのか、星野も例外なく」


「奏を見守らないといけないからと言って外に出ないわけじゃありませんよ? 親がいないので食材を買いに行かないといけませんし、今は奏の服です」


「お兄、その人誰?」


「前遊びに行った同じ図書委員の後輩」


俺を嫌っているからそれ以上何も言えないんだよなぁ。どんな関係とか聞かれてもただ、委員会が同じだけとかしか説明できない。


「私は妹の来羽です、ええっとだいぶ後輩だけどお兄と仲良くしてくれてるでしょ?」


「別に、仲良くはしてないです、嫌いです」


「仲良くしてない人を家には入れないと思うよ? もしかしてツンデレとかそういう類の人ですか?」


まぁ確かに星野は俺のことが嫌いと言いながら奏ちゃんのことを報告してくれているし、今もこうして出会った時に話してくれている。本当に嫌いなら話さないだろうし、星野がツンデレというのはあながち間違ってないかもしれない。


「す、澄風先輩は笑わないでくださいっ。どこを見て私がツンデレだと思ったんですか」


「いや、現状でしょ」


レジを済ませた星野は店を出ていったが、俺と星野が会話をしている間、来羽は奏ちゃんと遊んでいた。今度は来羽の方がお呼ばれされるかもなぁ。


来羽の服を買ったひまぁ買う物は他にないのでとりあえず帰るとしよう。


「嫌だったら教えてくれなくてもいいんだけどさ、来羽に詰め寄ってたあいつは誰なの? 同級生?」


「3年の霧立くんって言うんだけど、私が1回保健室に連れて行ってあげてからあんな感じ。まぁ勘違いがすごいよね」


「多分あいつはもう一度なにか行動を起こすぞ。学校までは俺がどうにか出来ないから先生とか友達とかを頼るんだぞ」


なるべく俺が来羽の隣に居る時に行動して欲しい。先生や来羽の友達を信用してない訳では無いが、俺が解決するのが1番不安が残らない。


ああいう系のやつがどこまでの行動に出るかは知らないが、あそこまで執着があるんだ、少し怪我することは考えた方がいいかもしれない。


「また会ったねぇ……」


「……さすがに再登場が早すぎやしないか?」


しかも手には……カッターナイフか。また切られることになると色々困るんだけどなぁ。


「来羽は俺の後ろに隠れてて、俺がどうにかするから。(時間稼いどくからこの番号にかけて)」


「(分かった)」


どうして俺はこうも巻き込まれることが多いんだ? まぁもう慣れたけどさ、さすがに刃物持ちのやつを相手するのはさすがに嫌なんだけど。


「というかさ、勘違いってことに気づかないんだな。で、その右手に持ってるもので何をする気だ?」


「簡単さァ、お前が澄風さんの隣にいるから退けるのさ。お前さえ居なければ僕が澄風さんの隣に立てる」


カッターナイフを振るってくるがこの後のためにわざと切られておこう。


「本気でそう思ってるなら1度考え直せ、現状を見てお前のことを好いてくれるやつなんて居ないから。一旦に行って考え直してみろって」


別荘だと少し意味合いが違うがまぁ警察の御用になる点では刑務所も少年院も変わらないだろ。


「どうも、また巻き込まれたのでお願いします」


「いつも澄風さん巻き込まれてますねぇ……。まぁこっちは事件が解決できるのでいいんですけど」


「は?」


1年前の時にコンビニで会った警察の人を呼んだ訳だが、とりあえず右手に持っていたカッターナイフで切られたと説明しておいた。


「まぁあとの話は警察の仕事だし、俺たちはこのことを忘れて帰ろうか」


「……うん」


まぁ優しい来羽なら少し思うことはあるよな。過剰とはいえ、自分のことを好いてくれていた先輩が目の前で捕まったんだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る