第16話 お出かけ①
学校が終わればお兄とお出かけできるから、今日はいつもより気力が湧いてくる。6時間目までちゃんとあるけど、その後に楽しみが待っているので頑張ろうと思う。
「いつもより嬉しそうだけど、何かあったの? 来羽は学校の中ではおしとやかだけど、この前お兄ちゃんっ子ってことを知ったからね」
「別にお兄ちゃんっ子ってバレるのが恥ずかしかったわけじゃないよ……?」
「それで、今日はその大好きなお兄ちゃんとなにか予定でも?」
大好きなって……確かに大好きだけどそんなことお兄の前で言えな───もう、からかわれるからバレたくなかったんだよぉ……!
おしとやかに振舞おうとしてる訳じゃなくて、お兄のことを話題に出さないで過ごしていたらそんなふうになっただけなんだけど……。
「周りのイメージが崩れるから絶対にこのことは言わないでね。あと、考えてる通りお兄とお出かけするけど」
「あ、やっぱりそうなんだ、来羽ってお兄ちゃんの話題があるときが1番嬉しそうだし、ちゃんと楽しんで来なよー。あの問題は忘れてさ」
もうお兄のことが好きってバレてもいいや、何もおかしなことは無いし。逆にお兄が好きと認めた方があの問題も減るかもしれないしね。
さすがに月に2回あの問題を対応しないといけないのはさすがに疲れるし、早くお出かけするために、早く帰らないといけない。だから今日だけは絶対に会わないように帰らないと。
§§§
今日は少し違う所を通って帰ったから問題なく帰れたけど、同じところを何回も通ってたらいずれそこも使えなくなるから、今までの道と今回の道を混ぜて使わないといけない。
結構困ってるけど、これは私個人だけの問題でお兄に相談する案件じゃないしそもそもお兄に言っても何も解決しない。お兄も困らせるわけにはいかないし、ずっと報告してる先生に任せればいい。
「ただいまー!」
「おかえり、来羽。俺の方は既に準備できてるから準備が出来たら声をかけて」
「はーい」
私は自分の部屋に戻ってクローゼットを開ける。どの服を着ていこうかなぁ……?
少し悩んでロングスカートとカーディガン、その中に普通のシャツにしておいた。この格好変じゃないかな…? 大丈夫かな…?
悩んでいては時間が過ぎてしまうのでこれで大丈夫! と思ってその他諸々の準備をしてリビングに戻った。
「おまたせ、お兄。それで今日はどこに行くの?」
「んー、来羽の好きなところでいいよ? あと、似合ってる」
「あ、ありがと……。じゃあ買いたいものがあるからショッピングモールかなぁ、お兄にも選んでもらうことがあるかもね」
そして私たちはショッピングモールに向かった。久しぶりのお兄とのお出かけ♪ 楽しみだなぁ。
「平日だし、人は少なめだな。それでどの店に来羽は行きたいの?」
「服屋かな、今着てる秋服以外が少し小さくなってきちゃったんだよね。だからお兄に選んで欲しい、かな?」
とりあえずお店の中に入って、秋服が置いてあるところまで移動して置いてある服を見ていく。お兄はトイレに行って今はいないからその間に自分の中で候補を何個か作っておこう。
これかなぁ? いやこれもいいかな。
「やっ、来羽」
私は最悪な人物に出会った、私が避けていた人物。
「……霧立くん」
断ってるのにも関わらずずっと告白してくる人。早くお兄、帰ってきてくれないかなぁ。
「何回も断ってるじゃん、いい加減諦めたらどうなの?」
「僕と澄風さんは繋がってるんだ! だから僕は諦めない」
「だから!」
「さっさと諦めろ」
いつの間にか戻ってきていたお兄が霧立くんの背後に立っていた。
「俺はお前のことを知らないし、知りたくもない。来羽とどういう関係なのかは知らないけどさ、俺の来羽に手を出すのはやめてもらいたいね。来羽に害を振りまくなら俺は何をするか分からないよ?」
「お前は澄風さんの何なんだよ! 同級生でもなんでもないんだろ? 繋がりがないんだろ?」
「俺が来羽何かって? そうだなぁ、1つ言葉を選ぶとしたら来羽の好きな人……かな。もちろん俺も来羽のことが好きだよ」
声が出そうになったけど、別にお兄は嘘は言ってないしこれで相手が勝手にお兄のことを彼氏だと思い込んでくれればさすがに引いてくれるだろう。
「彼氏が居るなんて……お、俺は聞いてないぞ」
そう言って霧立くんは走り去って言った。本当にお兄が来てくれてよかった。
「来羽もなんか面倒なことに巻き込まれたな。相手が少しも考えてなくて助かったよ、俺は彼氏なんて一言も言ってないからさ」
「まぁうん、そうだけど……お兄のことが好きなんて私は口にした覚えないんだけどなぁー」
「じゃあ来羽は俺のことが嫌いなの? かなしいなー」
「すごい棒読みじゃん。安心してってちゃんと好きだよ」
ちょっとした妨害が入ってきてしまったけどとりあえずお兄が解決してくれたところだし買い物を楽しもう。
「それでさ、お兄。この3つの服だったらどれが1番私に似合うと思う?」
「全部似合う……じゃだめなんでしょ? 一旦着てきてよ、実際に着てるところを見て決めるからさ」
「ん、分かった」
私は自分で選んだ3つの服を持って試着室の中に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます