第15話 試験結果

「ふあ〜、おはよ……お兄」


昨日は来羽にお願いされて一緒に寝たのだが、普通に考えて体的にも精神的にも成長してきた来羽が抱きついてきて平然と寝れるわけないよね。学校があるのにも関わらず俺は珍しく来羽より先に起きていた。


そりゃあ昔の小さい時なら頭を撫でたりしながら一緒に寝てたりしたけども、今の来羽は中学生。そう、中学生なのである。


まぁ来羽に気にしていると勘づかれる方が俺としては困るので、来羽が言ったのなら動揺せずに一緒に寝るしかないのだ。


「ん、おはよう来羽。コーヒー淹れるけど来羽もいる? もちろん牛乳と砂糖多めで」


「コーヒーじゃなくてこの前買ってきたココアにして欲しいかなぁ。というかお兄は私がコーヒー飲めないこと知ってるでしょ?」


「色々中学になって成長してると思ったけど、味覚はあんまり変わってないみたいだねー」


「……やっぱりコーヒー飲む」


ちょっとからかいすぎたかなぁ、まぁちゃんとココアを淹れたしコーヒーが飲めなくても別に困ることは無いから別に今のままでもいいと思う。眠気覚ましのためにコーヒーを飲むかもしれないが、別にコーヒーの代わりはいくらでもある。


「やっぱりコーヒーよりココアの方が美味しいっ」


「俺は来羽と好みが真逆だからねぇ、コーヒーは好きだけどココアは甘くて飲めないかな」


俺も小さい頃は普通にシュークリームとか食べていた記憶があるが、何時からなんだろうな……甘いものが苦手になって今みたいにコーヒーとかを飲むようになった。来羽は昔から変わらず甘いもの好きだ。


「そういえば今日は試験の結果が帰ってくるから午前中で学校終わるのか。今日バイトだけど、時間あるし昼からどこか行く?」


「行くー! 久しぶりだねお兄とお出かけするの。高校に入ってからしばらくなかったんじゃない?」


まぁ高校に入ってからバイトで空いてる時間は土曜日しか無かったからなぁ。土曜日は来羽も朝早く起きることは無いし、自分の友達と遊んでいる。


兄妹で出かけれる日は結果が帰ってくる日しかないのかもしれない。


「あーでも試験の結果次第では遊んでる暇なんてないかも。そうなったらごめん」


今まで悪い点数を取ったことはないが、だからといって今回もいつもと同じような点数を取れるとは限らないし、もし悪かったら勉強しないといけないから来羽と出かけることは出来なくなる。俺としても来羽と出かけるのは久しぶりだし無駄にしたくはないので、今まで通りの点数であって欲しい。


「まぁまぁ、点数が低かったら私と遊ぶより勉強を優先しないと。お兄のことだし平均を切ることはないと思うけど」



§§§



ずっとそんなこと言っていても仕方ないのでとりあえず学校に向かって、緊張を隠すためにも小鳥遊と話す。


「今回のテストは絶対に今までの点数から落とせないから普通に返ってくるのが怖いな」


「なにか予定でもあるの? 隼人が? 珍しい」


「俺にだって予定くらいあるわ、まぁ点数が低かったら今日来羽と出かけれないからなんだけど。小鳥遊の思ってる通り自分から組んだ予定はありませんよっと」


俺の予定は大体他人からの誘いなのだ。あんまり自ら遊びに行くようなことは無いし、そもそも土曜日しか遊べない俺は遊びに誘われることが少ない。あ、いやそもそも誘ってくれるような友達が小鳥遊以外にいないんだった。


まぁその肝心の小鳥遊もバイトをしているので俺が遊ぶことはほとんどない。だから今回来羽と一緒に出かけるのも数ヶ月に1回くらいのことである。


「まぁ来羽ちゃんも隼人が低い点数を取ると思ってないんじゃない? だって今までのテストで隼人は五教科……」


「415、415、410だな。まぁ今回もそのくらいなら嬉しいけど」


「内容は難しくなっていくはずなのに点数がほとんど変わらないのはおかしいと思うよ?」


小鳥遊、お前も難しくなっていくはずの内容なのに点数がそこまで変わってないよな? 俺のこと言えないからね。


試験は受けた順番に返ってくるのだが副教科だけは先にまとめて返ってくる。保健体育が87、技術家庭が83、まぁ別に問題は無いだろう。


あとは五教科なのだがまずは得意な社会。以前のテストから作る人が変わって問題が別物になっていたがどうだろうか。


「えっと今回のクラス1位は澄風さん、これで4連続ですね」


社会は小鳥遊よりも点数が高い、まぁ英語と数学が低すぎて合計で負けてしまうのだが。


そして社会、数学と順番に返ってきて五教科合計は419、つまり過去最高で来羽とも遊べるということだ。とりあえず一安心したところで、午前で帰るため今日は俺の方が帰るのが早い。


「今回は過去最高だし、これでちゃんと来羽とも遊べるな。来羽はまだ授業があるし、復習をしながら待っておこうかな」


解答用紙をテーブルの上に広げておいて、俺が部屋に篭っていたとしても出かけれるということを伝わるようにしておこう。とりあえず過去一の記録に愉悦に浸りながら久しぶりに奥に閉まってあったちょっとお高めのジュースを飲むとしよう。


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