第14話 兄妹と姉弟

両親からの連絡が途絶えた、ずっと疑問に思ってたことがあるんだ。お父さんとお母さんは仕事で遠くに言ってることは聞いていた、でもどこに行くのか、何をしに行くのかは頑なに教えてくれなかった。


「ねぇお兄、お父さんとお母さんから連絡が来ないことで何か知ってる事ない? 仕事内容とかさ、教えてくれてないんだよね」


「ん? 普通の会社だよ、海外進出してるけど。両親は今そこに配属されてるんじゃないかな?」


普通の会社ならなんで連絡が来ない? 休憩の時間でも、仕事が終わってからでも連絡は取れるはずなのに……。なにか向こうで問題でも起きたのだろうか?


「じゃあなんで入学式の日から連絡が無いの?」


「この前電話が来たんだけど、スマホが壊れて修理に出してるって、この前までは普通に忙しすぎて連絡出来なかっただけらしい。来羽が心配するようなことは何も起きてないから安心して」


お兄によるとこの前までは忙しくて連絡する暇がなくて、最近階段から2人ともスマホを落としたらしい。連絡する暇もないくらい働いてるのはちゃんと休んでるのか逆に心配だけど、お兄に電話してるし大丈夫……なのかな?


「同時に落としたの?」


「家から出勤する時に誰かが間を無理やり通って、その時に手に持ってたスマホが落ちたって言ってた。まぁこんなところかな、多分もうすぐ2人とも来るんじゃない?」


親のことが気になって忘れていたけどふたりが来るんだった。あ、茅姉が来るなら茅森くん呼びじゃなくて下の名前の方がいいかな?



§§§



しばらくして茅森先輩とその弟が家にやってきた。ひとつ驚いたのが来羽が既にその子と友達になっていたこと、やっぱり来羽は俺と違ってコミュ力というか、友達を作る力があるようだ。


「いらっしゃい! ご飯は私が作るから茅姉と叶多くんは座っててもいいよ。今回は量が多いし一応お兄も手伝ってね」


「久しぶりの料理だし前みたいに上手くできるかなー。叶多くんも別に緊張しなくていいからね、来羽の方が俺より立場上だし」


来羽が料理やその他諸々の家事をしてくれているから両親が仕事でいなくても高校に行きながらバイトもできているわけなので家内の立場は完全に来羽の方が上だと思う。正直バイトをして色々買ってあげていなかったら好感度も低かったのかもしれない。


「とりあえず座ろうか、叶多」


「うん、今日はありがとう……来羽ちゃん?」


「やっぱり同じクラスなんだから敬語じゃない方がいいね」


来羽がそう言いながら手馴れた手つきで料理を始める。基本的に俺がやることは皿とかを運ぶぐらいのことしかないし、俺が作るより来羽が作った方が断然美味しいので文句は無い。


4人分ということでまだ両親が家にいた時に使っていたいつも来羽が使っているフライパンより少し大きいフライパンを出した。


「よいしょっ……おもっ」


「来羽は力がない方なんだから無理するなって、なんで俺がいると思ってるの? 重いなら俺が持つよ」


「むー、私だってもう少ししたらちゃんと持てるようになるもん!」


確かに少し筋トレでもすればすぐに持てるようになるのかもしれないけど、正直重いものが持てなくて俺に頼んでくる来羽を見たいので、俺としては今のままでいい。


「あの二人も仲がいいねぇ、まぁ2人で生活してるんだから仲良くなかったらやっていけないと思うけど。私たちも一応そんな感じだしね」


「僕を連れてきたのは月奈お姉ちゃんの方だからね? まぁ学校も月奈お姉ちゃんの家からの方が近いし別にいいんだけどさ。そろそろ1回帰らないと怒られるんじゃない?」


「いやぁ、大学の方が忙しいから無理ってことには……「ならないよ?」」


茅森先輩はおそらく今の家に住むようになってからほとんど実家に帰ってないんだと思う。そりゃあずっと顔出せって言われてるのに出さなかったら催促されるよね、俺たちは逆に催促する側だけど。


しばらくして晩御飯が完成した。今日はハンバーグでおかわりすることも見込んで少し多めに作ってある。まぁ余っても俺が翌日のバイト後に食べるだけである。


肉汁がじゅわっと出て、ホロッと崩れるやわらかさがあって、いつ食べても美味しい。


「来羽ちゃんっていつからこんなに料理が上手くなったの?」


「えっとね、小4くらいの時に両親が仕事でいなくなってそお兄が作ってて、受験生になってから作るのが私になったかな」


「元は受験が終わるまで来羽が作るだけっていう予定だったんだけど、その時に来羽が料理に目覚めたんだよね」


別に来羽だって最初から今みたいに料理が美味かったわけじゃないし、始めらへんは俺と一緒にやっていた。それで来羽が料理を練習して、俺が受験生になることには全てを任せられるようになっていた。


「まぁそんな感じ。じゃああとはこっちで片付けるけど一応送ってった方がいい? 」


「大丈夫だって、叶多はともかく私は君より年上だよ?」


「僕はともかくってなにー」


とりあえず送っていく必要はないそうだがまぁ、外も暗いし気をつけて帰って欲しいところだ。


「じゃあさっさと片付けて、風呂入って寝ようか」


「お兄、あの……ね。昨日怖い夢見ちゃって……一緒に寝てもいい?」


「仕方ないなぁ、今日だけだよ」

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