第2話 お礼は友達になること
「お兄遅い!」
案の定寄り道をして帰った俺は妹である
「俺だって何も無かったら普通に帰ってるって、帰り道の公園に女の子が一人でいたから家まで届けてたんだ」
「お兄はいつもそうだよね、自分にどんな不利益があっても困っている人を放っておかない。去年だって怪我して帰ってきて……まぁそれが理由なら今回は許すけど次は無いからね、お兄」
とりあえず今回は許して貰えたところで来羽が作ってくれた晩御飯を食べ始める。今日のご飯は半熟オムライス、形も綺麗だし味はいつも通り申し分ない、どこでこの技術を得たのかが気になるくらいである。
ご飯を食べ終わって自分の部屋に戻る。よく考えたら俺たちと星野は似たような境遇なのかもな。
親が仕事でいないから子どもたちで過ごしているところは似ている、まぁ妹の年齢が違いすぎるけど。というか星野妹はどうやって外に出たんだ? 鍵穴は届く高さには無いし元から開いてないと出れなかったはずだ。
星野が朝学校に行く時はまだ母親がいたはずだから、開けたままにした可能性があるのは母親だろう。星野は帰ってきた時に妹がいないことに気づいたから外に探しに行っていたのだろう、まぁ戻ってくるタイミングが最悪だった訳だが。
一応妹を届けたわけだし、この出来事のおかげで話してくれる程度になってくれたら万々歳だ。
§§§
翌日、学校に向かうと小鳥遊からアドレスの書かれた1枚の紙を渡された。
「楓に渡して欲しいって言われたからさ。昨日は澄風先輩のおかげで妹が助かったからそのお礼らしいよ?」
お礼をする気があるなら俺に直接渡せよと思うがそれよりなんでアドレスの書いた紙? おそらくこれは星野のアドレスなんだろうけど、この後にどんなお礼をするか連絡するつもりなのだろうか。
「そうか、届けてくれてサンキューな小鳥遊。その他に星野は何か言ってたりしたか?」
「お礼がそれだって言ってたよ。隼人は楓と友達になりたかったんだったらちょうどいいじゃないか、隼人にとっていちばんのお礼だと思うけど」
まぁ確かに友達にはなりたいと小鳥遊に相談したけど、星野の方がお礼に友達になるなんてやるのか? 星野と小鳥遊はスマホでやり取りができるはずだし何か小鳥遊が吹き込んだりしていないだろうか。
とりあえずそのアドレスを登録して『妹の方はどうだ』と聞いておいたが当たり前かのように授業が始まる時間になっても既読はつかないままだった。
そのまま授業が終わって、また始まっても既読がつかない。着いたのは四限目、昼休憩が始まる時間になってからの事だった。
誰だっていつもスマホを眺めてるわけじゃないし、忙しい時もあると思うのでめんどくさい彼氏みたいに既読遅いだけで怒ったりはしない。
『妹はずっと澄風先輩に会いたいと言っていますよ。私としては澄風先輩に妹は合わせたくないんですけどね、ロリコンなので』
『勝手に俺の事をロリコンにするな、困ってる所を助けただけなんだが?』
『男子は大体面倒くさがって公園で一人小さい女の子が泣いていても無視して帰るんじゃないんですか? それで関わった人がロリコンということですよね』
男子に対する偏見が凄くないか? 別に男子にだってそういうのを気にかける人はいるし男子全員が自分中心で動いてるわけじゃないんだ。自分のことを褒める訳では無いが俺はそういうのを無視できない側の人間だ。
『星野は一旦その考えを捨てろ、ネットにはそういう人も多いかもしれないが現実はまともな男性が多いから』
『善処します。私は会わせたくないですけどそれで妹のためにも私の家に来てください、場所は知ってますよね。私は会わせたくないんですけど妹のためですから』
今のやり取りだけで『私は会わせたくない』と3回も言われてしまった。姉として小さい自分の妹に知らない男性を会わせたくないのかもしれないが、別に知らない男性では無いし俺から会いたいって言ってる訳じゃないじゃん? まぁそれは星野が俺の事を嫌ってるからこそなんだろうけど。
「隼人はいつも通り来羽ちゃんが作ってくれた弁当か。やっぱり隼人より立派だね」
「否定はしない、来羽は中学に行く前に俺のと自分のを作ってるからな。本当に助かってるよ」
でも、来羽にいつまでもご飯を作ってもらう訳にも行かないので大学に入れば一人暮らしを始めようと思ってる。お金の問題もあるけど、それは週4でバイトをして頑張っている。
店長に入れる日に全部入ると言ったら、毎日はダメだからと言われたがその後俺が数分交渉して火水木日にシフトを入れることとなった。
バイトがある日に関しては帰ってくる頃、既に22時を回っているので来羽はもう寝ている。その場合は来羽が作って置いてくれたものを温めて食べたり、自分で作ったりしている。
「来羽ちゃんは1年生だろ? 受験が始まったら役割交代だね。いやその頃には親も帰ってきて隼人は大学一年生か」
「ぶっちゃけどこの大学に行くかは決めてないからなぁ。まぁ小鳥遊をストーカーするつもりだけど」
「高校受験の時からそうだよねぇ……隼人は、見知った友達がいるのは嬉しいんだけどね。そもそもとして僕と隼人は学力が同じぐらいだし希望が同じになっても不思議じゃないと思うけど」
そんなことを話していると、隣に星野がやってきていた。そして『一緒に昼を食べましょう、先輩』と、珍しいこともあるんだなと思った。
今までなら小鳥遊とご飯を食べることはあっても俺とは絶対になかったし、俺と小鳥遊が食べているところに混ざると言ったこともなかった。
やっぱり昨日の1件で少しは話してくれるようになったのだろうか?
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